考えてプレーする?考えないでプレーする?

前回、「論理と感覚。」の話をしましたが、どちらもスポーツには大切な能力です。
考えてプレーするのと考えずに直感でプレーするのをどう使い分けるかの話をしていこうと思います。

 

論理的に考えてプレーするということは、今までの経験や知識の中から行動を考えていく。
つまり、記憶したものを並べ替えたり組み合わせたりしているということなので、その能力は記憶に大きく左右されます。
それなので、今までに経験したことがないことやイレギュラーなことが起こると混乱してしまったり、答えを出せなくなってしまいます。
考えてプレーすることばかりだと創造力に欠けてしまい、瞬時に判断することが難しく、プレーのスピードも上がりません。
まだ野球のピッチャーのような自分から動けるような競技では、なんとかなるかもしれませんが、野球の打撃や守備もそうですが、サッカーやラグビーのような常に目の前で起こったことに反応していくような競技では、対応できません。
相手選手の能力も様々で、目まぐるしく変わる状況の中で最適なプレーを選択し決めていくのは、直感に頼らなければなりません。
だからといって、何も考えずに本能だけでプレーしていても、同じ問題を繰り返したり、悪い癖、悪いパターンなどを改善することができないので、両方を上手く使い分けなければなりません。

 

具体的には、
どうしたら上手くなれるのか、成長できるのかを論理的に考えて、フォームを調整したり、練習やトレーニングを行っていきます。
反復することで、段々と考えずにできるようになっていきます。
考えずに無意識でその動きができるようになると、素早く行動に移せるようになるので、パフォーマンスが上がるということになります。
それだけでなく、考えることを止めることで、創造力が働き、感覚は研ぎ澄まされ、直感的な判断で行動することができるので、コツを掴んだり新しいひらめきがあったりします。
この直感で得た創造やひらめきを再び論理的に考えていきます。
直感で得た創造やひらめきだけでは、それが良いのか、悪いのかが分からず、それを評価することができません。
起こったことを評価するのは、論理的に考えることをしなければならないので、論理的に考えて、評価することが必要です。
スタートは、考えることからでも直感で行動することからでも構いませんが、そこから、論理的と直感的を上手く組み合わせながら、何も考えずになんとなくプレーしているレベルを上げていくことがパフォーマンスを上げていくことにつながります。
ハイパフォーマンスは余計なことを考えていない夢中になっているときに発揮されます。
直感と論理の相乗効果を生むことが、パフォーマンスを高めるために重要なことです。

 

指導者は、選手を指導することやアドバイスをすることで、選手が直感を磨くための材料にしてもらい、感覚やコツを掴めるように導いていくことが大切です。
それには、選手が自分の理想と考えている動きと実際の動きの違いをどの程度理解しているのか。
指導者の理想としている動きと選手の理想としている動きとがどの程度同じか。
指導者が言っていることをどの程度感覚に落とし込むことができているのか。
などをコミュニケーションを取り、お互いに共通の認識を持ち、論理的に説明するだけでなく、感覚を伝えるなど選手によって、接し方を変えていかなくてはなりません。
その選手が動きを覚えるだけでなく、感覚やコツを掴むところまで落とし込むことができればパフォーマンスは上がっていきます。
この感覚やコツが掴めなければ、いくら頭で分かっていても、論理的に説明ができたとしても試合でのパフォーマンスは上がりません。
フォーム分析や身体について詳しい専門家やトレーナーが高いパフォーマンスを発揮できるわけではないことからも分かると思います。
多くの指導者は考えさせたり、フォームや動きを教えようと試行錯誤しますが、なかなか選手の創造力や感覚、コツを掴む能力を高めようとはしません。
実際に重要な能力は、効率的に感覚やコツを掴む能力です。

 

選手にとっては論理的に考えるということは、感覚やコツを掴むための手段にすぎないとも言えるのかもしれません。
考える、考えないというのを上手く使い分け、レベルアップにつなげていってほしいと思います。

論理と感覚。

スポーツ選手には、試合や練習、トレーニングなどを行う時に、頭で考えて行動に移す選手と、考えずに感覚や本能に任せて行動する選手がいます。
僕は、この考えて行動するのも、本能や感覚に頼って行動するというのも、どちらも重要なスキルだと思っています。
そんな頭の使い方を考えてみました。

 

頭で考えて行動するというのは、問題を整理することで、仮説を立て、記憶したもの(経験や知識)を並べ替えたり組み合わせたりして行動を決め、それを行動に移していきます。
言葉を話したり、理解して論理的に説明したりする時にも、頭で考えています。
筋道を立てて考えるので、様々なことが複雑に絡み合っていることでも、ひとつずつ整理していくことによって、問題への理解を深め、仮説を立てることで行動を決めていけます。
これは、問題解決や情報の整理など、様々な場面で役立つスキルです。

考えずに感覚や直感、本能に任せて行動するというのは、前置きや仮設などを立てることなく、無意識に行動を決めていきます。
なんとなく決めるということです。
実は、普段の生活のほとんどは特に考えずに行動を決めています。
これは、幼少期から当たり前に身につけているやり方で、素早く行動に移したり、アイデアを出すときに役立つスキルです。
子供は、今の興味だけで行動します。
なぜそれをするのかなど一切考えません。
考えないので、言葉にするのではなくイメージを創ったりもします。

 

この2つのスキルはどちらも大切なのですが、
選手によって考えるのが優位な選手。
直感や本能優位な野性的な選手。
論理と感覚をバランスよく使う選手。
などそれぞれです。
これが選手の個性であり能力、人格、プレースタイルなどにも現れます。

当然、教え方も変わってきます。
考えるのが優位な選手に「ギュッとためてパッと投げればいい」と言ったところでなかなか伝わりません。
逆に、本能でプレーするような選手にロジックを細かく説明してもなかなか理解できません。

 

スポーツ種目や同じ野球でも投手と野手では、その重要度も変わってくると思っています。
野手は投手に比べて、考えずに感覚や直感、本能に頼ってプレーすることが求められます。
投手は情報を整理したり、自分のタイミングでプレーできるのに対して、野手は投手の投げてくるボールを打ち返したり、飛んできた打球に素早く反応してアウトを取ったりと、目の前で起こる出来事に素早く反応して行動に移さなければならないからです。

だからといい、野手は考えて行動するというスキルが必要がないのかというとそうではありません。
逆に、投手は、考えずに感覚や直感、本能に頼るスキルが必要ないのかというとこれも違います。
どちらも重要なスキルですが、比重が違うということです。

 

多くの指導者は、本能でプレーするよりも考えてプレーすることの方が重要であると考えているように感じます。
自由な発想で、ひらめきを大切にするよりも、学校のテストのように答えはひとつで、教えたことを忠実にできるように型にはめるような教え方をする指導者が多いことからも、考える選手は、頭脳明晰で成功確率も高いと考えているのではないでしょうか。

しかし、僕の経験では、プロ野球選手やそれぞれの競技のトップ選手を見ると、それが、必ずしも正しいとは言えないと思います。
なぜなら、何を考えているのかわからないような、感覚でプレーしてるような選手が多くいるからです。
トップ選手は、直感的に決める決断が的確で、高い判断レベルを持っています。
さらに、プレー中は感覚を研ぎ澄まし、その一瞬に持っている力を総動員するような選手ばかりです。

 

この2つの頭の使い方を同時に発揮することはできません。
選手は、場面場面で、考えて動くか、直感や本能で動くかを選択します。
多くの選手は無意識に選択してしまっています。

この選択が的確でなければプレーに支障が出てしまう可能性があります。
例えば、内野手が打球を捕り、1塁にボールを投げる時には、考えずに直感や本能で投げることが理想です。
そこに、投げる途中に、「腕をこう動かして」や「暴投しないように丁寧に」などと考えてしまっては、暴投の確率は上がってしまいます。

 

問題点を解決するには、考えるというのは、とても重要です。
しかし、考えるというのは、今までの経験や知識の中から行動を考えていくので、今までにしてきた動きしか選択できません。
新しいものを生み出したり、新しい発見をすることには向いていません。
論理的に考えたり、データを集めて正確な分析をすることなどが、前例のない問題を解決する過程にあると思いがちですが、前例のない問題を解決するのは、直感的な判断によって生まれるひらめきです。
思考に思考を重ねて脳が一杯一杯になった後、リラックスした状態の時や環境が変わった時などに、潜在意識に埋もれている何かがつながり、直感としてひらめきます。
何かをひらめくというのは、ひらめきやすい状態というものがあり、そういう状態を意識して作り出すことが本能や直感という感覚を高めるスキルと言えます。
このスキルを磨くためには、常識や先入観を頭の中から排除し、考えることを止めなければなりません。

 

論理的に考えることも重要ですが、直感や感覚でプレーすることも重要です。
指導者は選手の個性や考え方、プレー中の頭の使い方などを認識した上で、どう接するのが良いのかを考えていく必要があるのではないかと思います。

投球に使う筋肉。

筋肉を鍛えるには、闇雲にウエイトトレーニングをして筋肉を鍛えるだけでは、パフォーマンスを上げることは難しいと思います。
動作の中で、どの筋肉がどのように使われているのかを理解する必要があります。
それが分かって、初めてどこの筋肉を鍛えなければならないのかが分かると思います。
野球のピッチャーが、投球する際に使う筋肉を簡単にですが、順番に説明していきたいと思います。

 

右投げのピッチャーを例に説明していきます。
投球動作は、大まかにいうと、右足に体重を乗せ、左足を前に踏み出し、左肩を前に出していきます。
そこから投球方向に重心を移動しながら、体幹が捻られ、身体を回転させることで、そのパワーが上体、肩、肘、そして手へと伝わってボールを投げます。

投球では、下肢の筋肉はほぼ全て使われますが、特に使われる筋肉をみていきます。
投球で初めに力を生み出すのは、軸足となる右足です。
右大殿筋や中殿筋、内転筋群、右ハムストリングス(大腿二頭筋、半膜様筋、半腱様筋)、ふくらはぎ(右下腿三頭筋)、などを使い、投球方向に力を生み出します。
軸足で生み出した力によって、重心を移動し、その力を前足となる左足で受け止め、身体を回転していきます。
その時に働く筋肉は、膝を安定させる筋群で、大腿四頭筋およびハムストリングス(大腿二頭筋、半膜様筋、半腱様筋)と、膝が体幹の回旋する力によって外側に倒れたり流れたりしないように支える左の大殿筋や中殿筋、内転筋群です。

その後、外腹斜筋などの体幹の筋。
大胸筋や、大円筋、前鋸筋、広背筋などの肩回りの筋肉。
上腕三頭筋などの上肢の筋。
屈曲回内筋群(特に尺側手根屈筋尺骨頭、円回内筋)の前腕の筋へと順に伝えられていき、ボールをリリースします。

 

これらの筋肉の動きを以前説明した、伸張反射や反動動作を使う(ウエイトトレーニングとパフォーマンス。)ことで、より大きな筋肉や腱のパワーを引き出します。

それだけではなく、投球では「捻り」を上手く使うことも重要なテクニックです。
特に、下半身と上半身の捻じれを上手く作り、より大きなパワーを発揮します。
軸足で力を生み出し、並進運動をし、それを回転運動に変換する際に、先に下半身を回転し、上半身との捻じれを作り、一瞬遅れて上半身が回転するようにします。
この一瞬の時間差があることで捻じれが生じ、より大きなパワーを生み出すことができます。

いくら筋肉を鍛えていても、このような伸張反射などの反動、身体の捻りなどを上手く使えなければ、速い球を投げることも、狙ったところにコントロールよく投げることも、再現性高く何度も繰り返し投げることもできません。

伸張反射や反動、身体の捻りなどを上手く使うためには、筋肉を上手く使うことが必要です。
どこの筋肉にどのタイミングで力を入れればいいのか。
どこの筋肉にどのタイミングで力を抜けばいいのか。
これを理解して、コツを掴むということが必要です。
「もっと力を抜いたほうがいい」と言われる選手の多くは、力を入れるべきではない筋肉に力を入れているから言われているのだと思います。
実際は力を入れて力まなければ、パワーはでませんが、固めるべきではない筋肉を固めては、投球に必要なパワーは発揮できません。
また、しなやかな動きもできません。

 

投球のコツとしては、伸張反射や反動、身体の捻りなどを上手く使い、大きな力を生み出し、関節を上手く固めることで、その力をロスなく末端(ボール)まで伝えていくことだと思います。
このテクニックを向上させながら、さらに筋肉を大きくすることができれば、投球のパフォーマンスは上がっていきます。

ただ闇雲に練習やトレーニングをするのではなく、投球のどこの動作を向上させるために、どこの筋肉を鍛えるのか、などと考えることが上達のスピードを早めていきます。

今回は、野球のピッチャーを例に話しましたが、多くのスポーツに共通することだと思います。
その競技に使う動きが、どのような動きで、どのような筋肉を使うのかを把握することが、トレーニングを始める前に考えなければならないことだと思います。

子供のウエイトトレーニング。

前回、前々回とウエイトトレーニングはについての投稿をしてきました。
ウエイトトレーニングの効果。
ウエイトトレーニングとパフォーマンス。

成長期の子供と大人とが、同じウエイトトレーニングをやって問題ないのでしょうか?
そもそも子供たちにウエイトトレーニングは必要なのか?

子供たちを指導していて「ウエイトトレーニングはやったほうがいいですか」と聞かれることが良くあります。
今回は、成長期の子供のウエイトトレーニングについて考えてみました。

 

ウエイトトレーニングをすることで得られることは、筋肉が大きくなることです。
そう考えると、大人と同じような筋肥大を狙ったウエイトトレーニングは成長期の子供には必要ないというのが僕の考えです。
(競技によっては必要な競技もある。野球では必要ない。)

筋肉を使いこなす神経の機能を低下させたり、反射と言われる反動動作が下手になったりするのがウエイトトレーニングの弊害でもあります。
このような能力は子供の頃に、特に成長すると言われています。
1番筋肉を動かす神経の機能が発達する時期にそれを阻害するようなウエイトトレーニングはやらない方が良いのではないかと思います。

 

成長期の子供に大切なことは、筋肉を太くするよりも長くすることです。
筋肉が発揮できる力の強さは、筋肉が太くなるほど強くなりますが、筋肉が長くなることでも強くなります。
この筋肉が長くなるというのは、骨が長くなるということです。
筋肉を太くするのは何歳になってからでもできますが、長くするのは、骨の成長が止まるまで、つまり、身長が止まるまでしかできません。
少しでも高身長になり、筋肉が長くなれば、多くの競技で有利になります。
特に野球のピッチャーは、高身長になることで、投球の際に、より大きな力をボールに加えることができます。
投球は円運動なので、円の半径を大きくでき、さらに、ボールに力を加える時間も長くできます。
長い筋肉の方が、力も大きくなるのでスピードボールを投げることができます。
だから、少しでも身長を高くする努力、骨端線を早く閉じさせない努力が必要です。

骨端線が閉じてしまうともう身長が伸びることはありません。
その骨端線を早く閉じさせてしまう要因は、過度に骨や関節に負担がかかことです。

適度な刺激は身体の成長を促進させてくれるのですが、負荷の強すぎることをすると骨や関節に負担が掛かるため、身長があまり伸びなくなってしまいます。
大人がやるようなウエイトトレーニングは、負荷が大きすぎます。
筋肉の疲労が強すぎると、その回復に成長ホルモンが使われ、身長を伸ばすために必要な成長ホルモンが不足してしまうことも考えられます。
だからといい、負荷を落としては、ウエイトトレーニングの効果がでません。

このような理由から、成長期の子供にウエイトトレーニングは必要ないと思っています。

 

ウエイトトレーニングではなく、自重を使った身体を上手く動かせるようにするようなトレーニングであったり、遊びやさまざまな運動を行うことで身につく身体操作の方が重要だと感じています。
負荷が特定の部分に集中するのではなく、全身をバランスよく鍛えられる運動を行うことが大切です。

適度な刺激は身体の成長を促進する効果があるのですが、この適度が個人差があります。
年齢や発達度合いに応じたトレーニングプログラムが必要です。
年齢が同じでも、体格差があったり、筋肉の成長度合いも異なるので、その選手に合わさなければなりません。
横並びの同じトレーニングをするのでは、その選手にとって適切な負荷にすることは難しいと思います。
当然、大人がやるようなプログラムを子供にやらせるのはよくありません。

子供を成長させるには、その子供にとって、今何をすることが良いのかを常に考え続けなければなりません。
筋肥大を狙ったウエイトトレーニングではなく、怪我の予防や基礎体力の向上を目指したトレーニングをした方が良いと思っています。
そして、その時に忘れてはいけないのが、適度な睡眠です。
成長期の子供には身体の成長のために十分な睡眠は欠かせません、

運動も休養も何事も適度を見極めてやっていくことが重要だと思います。

ウエイトトレーニングとパフォーマンス。

前回、ウエイトトレーニングとスポーツのパフォーマンス向上は目的がまったく逆で、ウエイトトレーニングは筋肉を発達させる効果はとても高いが、動作の効率を落としてしまう危険性があるという話をしました。(ウエイトトレーニングの効果。

今回は、さらになぜウエイトトレーニングがパフォーマンスを落としてしまうことがあるのかを考えていこうと思います。

 

ウエイトトレーニングは筋肉に十分に刺激を与えることが重要なので、「筋肉に効かせる」といった筋肥大の刺激を十分に与えられた状態を作ることを目指します。
スポーツ動作では、その反対になるべく「筋肉に効かせたくない」ということです。
ウエイトトレーニングに慣れてくるとこの「効かせる」ことが上手くなってきます。
それをスポーツの局面などウエイトトレーニング以外の場面で発揮してしまうとパフォーマンスの向上を阻害してしまいます。
筋肉に効かせてしまっては、早く疲労してしまうだけでなく、動きも硬くなってしまいます。

 

トップ選手の動きを見ていると動きがスムーズでしなやかに動ける選手ばかりです。
そう見える理由は、伸張反射と言われる反動動作を上手く使っていることと、身体全体を上手く使い、身体の中心から末端に連動して動かしているからです。
この伸張反射と連動性はパフォーマンスを発揮するには非常に重要で、このテクニックがスポーツの上手い下手に直結しているとも言えると思います。

伸張反射とは、骨と骨の間に付いている筋肉が急激に引き伸ばされると、その筋肉が元に戻ろうと収縮する現象を言います。
腱を伸長させた時にも、それにつれて筋肉が伸びるので伸長反射が起こります。
例えば、高くジャンプしようとした時に、一度沈み込み、反動を使って高く飛ぶ動きや、ボールを投げる時に胸を張ることで筋肉が伸ばされ、収縮することで大きな力を生み出すテクニックです。
この伸張反射は動的なスポーツのほとんどの局面で使われています。

伸張反射を使うことで、得られることは、多くあります。
筋肉に力を入れる時間が少なく、反動での切り返しの瞬間に大きな力が出るので、筋力の発揮時間が短くなり、筋肉の疲労もしにくくなります。
自分の力で終始動かすのではなく、反射で動くので、毎回同じ動きになり、再現性が高くなります。
さらには、発揮できる力は強く、速くなります。
怪我のしにくい動きにもなります。

この伸張反射を上手く使い、全身を連動性をもって力を伝えることで、バネのあるしなやかな動きになります。
素早く身体の中心部の大きな筋肉から先端の筋肉に順番に力を伝えていきます。
投球では、下半身から上半身、そして腕から指先と力を伝えていきます。
野球など身体運動のほぼすべての局面でこの身体操作を上手くすることが、パフォーマンスを発揮するには欠かすことができません。

 

一方、ウエイトトレーニングは、筋肉に肥大を誘発するような刺激をより多く与えたいので、伸張反射を使うことで力の発揮時間が短くなることや効率的に動いては刺激の量が少なくなってしまうので良くありません。
基本的に、ゆっくり動くウエイトトレーニングでは伸張反射を使った反動動作を行いません。
連動性を持たせるということもしません。
伸張反射を使った反動動作は、効率よく大きな力・速度を発揮ができるのでスポーツ動作には必要ですが、筋肉に大きな負荷をかけたいウエイトトレーニングには必要ありません。
反動を使わずにゆっくりと力を持続的に出し続け、筋肉を連動して使うということは一切せず、各関節を同時に動かします。
例えば、スクワットで重りを持ち上げる時には、股関節にも膝関節にも同時に力がかかります。

 

競技でパフォーマンスを発揮するには、反動を使い伸張反射を使うことで、全身を効率良く使って、一部の筋肉に負担が集中することを避けるのが、優れた身体操作であり、優れた筋肉の使い方と言えます。
ウエイトトレーニングは、反動や伸張反射を使わずに、身体を連動させることなく同時に持続的に力を発揮することが優れたウエイトトレーニングスキルと言えます。
このように、ウエイトトレーニングの熟練者になればなるほど、スポーツ動作を下手にさせることがどうしても起こってしまいます。

単純にウエイトトレーニングで身体を大きくしたらパフォーマンスが上がると考えるのは注意が必要です。
確かに多くのトップアスリートが筋肉隆々でがっちりした身体をしていますが、それは優れた身体操作スキルを身につけているので、その筋肉を使いこなすことができるからです。

自分のパフォーマンスを最大化させるためには何が必要かを考えることが大切だと思います。

ウエイトトレーニングの効果。

プロ野球も日本シリーズが終わり、オフシーズンに入っていきます。
アマチュア野球はまだ勝ち進んでいるチームは試合がありますが、そうでないチームは来年に向けて動き出しているのではないかと思います。
その中で、ウエイトトレーニングに力を入れてやるというチームや選手もいるのではないかと思います。
しかし、何も考えずにウエイトトレーニングをしたところで野球のパフォーマンスを上げることはできません。
それどころか逆にパフォーマンスを落としてしまう選手を何人も見てきました。
そうならないための知識として参考になればと思います。

 

人の身体やトレーニングなどがより研究されたことで、どのスポーツも競技力が上がってきています。
それと同時に、選手の身体も大きくなってきています。
これは身体を動かす土台となる筋肉が発達している方が、より高い身体パフォーマンスを発揮できると考えるようになってきたからです。

昔に比べて、近年は野球やサッカー、バスケ、ラグビー、陸上、水泳、など多くの種目で素晴らしい肉体を持った選手が多く見られます。
見た目だけでも筋肉が非常によく発達し、筋肉隆々で強そうな選手が増えてきています。
見た目だけでなく、そのような選手がスポーツ動作でも非常に優れた力を発揮しています。
その一方で、スポーツ現場を見ていると、ベンチプレスやスクワットで重たい重量を挙げられるようになり、筋肉が大きくなっているにもかかわらず、パフォーマンス向上につながらない選手が多くいます。
野球のピッチャーでも、ウエイトトレーニングで身体を大きくしたにもかかわらず球速が落ちてしまったというピッチャーが多くいます。

筋肉だけでいえば、筋肉が発揮できる力の強さは、筋肉が大きくなればなるほど強くなります。
筋肉は太いほど力が強く、そして力が強ければその分スピードも速くなります。
つまり、筋肥大するほど筋肉の能力は高まり、強く、そして速くなります。
力は強くても速度が遅い筋肉というものはありません。

そして、僕の知る限り、ウエイトトレーニングよりも効果的に筋肉を肥大させる方法はありません。
ウエイトトレーニングをしないボディビルダーを聞いたことがないことからも言えると思います。

では、なぜウエイトトレーニングをして筋肉を大きくしたにもかかわらず、パフォーマンスが落ちてしまうことがあるのでしょうか。
筋肉は太いほど力が強く、スピードも上がるはずなのになぜ動きが遅くなってしまう選手がいるのでしょうか。

 

多くの人は、脂肪がつけばついた分だけ身体に重りがつくという認識はあると思います。
実は、脂肪だけでなく筋肉もついた分だけ重りになります。
そのスポーツ動作に使わない筋肉が大きくなればそれが重りとなって動きを遅くする可能性は考えられます。

また、筋肉が大きくなることで、その大きくなった筋肉が関節の可動域を制限するなど、動きの邪魔になることも考えられます。
動きを阻害するほど筋肉が大きくなれば、それが動きを遅くする可能性もあります。

しかし、これらはそこまでになるには、かなりのウエイトトレーニングをして筋肥大しなければならないと思います。
そこまで筋肥大していないにもかかわらず、パフォーマンスが落ちてしまったり、動きが遅くなってしまうのは、ウエイトトレーニングによって、神経の伝達や連動性と言われるような動作の効率が落ちてしまうことが1番の原因ではないかと思います。

筋肉がなければ身体は動きませんが、身体操作の能力は筋肉の能力だけでは決まりません。
筋肉の能力とその筋肉を使いこなす神経の機能の掛け合わせて決まります
いくら筋肉が発達しても、神経と筋肉の機能が下がってしまっては、パフォーマンスが向上するかはわかりません。
筋肉が大きくて動きの遅い人というのは、筋肉に問題があるのではなく、筋肉を動かす神経と筋肉の機能や連動性に問題があるからです。
大きく発達した筋肉を上手く使いこなせば動きも速くなるはずですが、実際には筋肉が発達したのに動きが遅くなる選手が多くいます。
それは、筋肉の能力が低いのではなく、競技の動作の局面で筋肉を上手く使う能力が低いからです。

トップアスリートは筋肉もそれを使いこなす能力も両方とも優れているということです。

 

競技のパフォーマンスを向上させるには、できるだけ効率よく身体や道具などに大きな力(速度)を発揮させることです。
それだけではなく、それを再現性良く繰り返したり、長い時間持続させるということが必要です。
例えば、野球のピッチャーでは、より楽に、なるべく疲労せずに、ボールにより大きな力を伝えて、ボールの速度を上げることが求められます。
さらにそれを再現性良く狙ったところに何球も繰り返し投げることが必要です。
つまり、動作の効率が良いほど、優れたピッチャーということになります。

それに対してウエイトトレーニングは、筋肉を発達させて筋力を高めることを目的に行います。
そのために重要なことは、筋肉にかける負荷の大きさです。
ダンベルやバーベル等の重りを効率よく持ち上げることは必要ありません。
何キロの重りを持ち上げるかよりも、どれだけ筋肉に大きな負荷をかけて、刺激を与えられるかが重要になります。
筋肉に大きな負荷をかけることが目的なので、動作の効率の良し悪しは問題になりません。
むしろ、動作の効率が悪い方が筋肉にかかる負荷が大きくできるので、ウエイトトレーニングのやり方としては優れていることになります。

このようにウエイトトレーニングとスポーツのパフォーマンス向上は目的がまったく逆であるといえます。
ウエイトトレーニングは筋肉を発達させる効果はとても高いのですが、それと同時に、動作の効率を落としてしまう危険性があります。

 

だからこそスポーツ選手は、パフォーマンス向上を目的として、その手段のひとつとしてウエイトトレーニングをすると考えることが重要です。
決してウエイトトレーニングをすることが目的となってはいけません。
理想のパフォーマンスがあり、それをするために筋肥大が必要となって初めてウエイトトレーニングを行おう、とならなければなりません。
トレーニングはあくまでパフォーマンス向上を目指して行うということです。
ここを間違わずにトレーニングをしてほしいと思います。

スポーツの力

これまでスポーツには様々な楽しみ方があるという話をしてきました。

競技スポーツの魅力
生涯スポーツの魅力
スポーツ観戦の魅力

スポーツには、単純に楽しむということだけでなく、今後の日本の発展に影響を与えることができる力を持っていると思っています。
そんなスポーツの力について考えてみました。

 

まず、これまで書いてきた、スポーツをプレーすることで、自分自身を豊かにしていくことができます。
競技スポーツとして、相手と競うことを楽しんだり、成功や成長を目指すことで努力し、充実感や達成感を得ることができます。
競技スポーツに限らず、スポーツに親しむことによって、他者との連帯感や精神的な充実を得ることにもつながります。
体力の向上、ストレスの発散、生活習慣病の予防など、心身共に健康の維持、増進に大きな効果を得ています。
高齢化社会へと向かっていき、高齢者の医療費の問題は、より大きくなっていきます。
そこで、言われているのが予防医療の重要性です。
日ごろの健康維持にスポーツが大きな力を発揮できることは間違いありません。

それは、高齢者だけに限ったことではありません。
どの年齢でもスポーツをすることが健康増進につながるだけでなく、プレーしなくても、競技スポーツを見たり、スポーツに携わることで、スポーツに打ち込む選手のひたむきな姿や高い技術は、スポーツへの関心を高め、夢や感動を与えるなど、人々の生活を豊かにすることができます。

スポーツ少年団やスポーツクラブ、部活動などは、スポーツを通じた青少年の健全育成という役割も担っています。
スポーツをすることで、身体の健全な発達を促し、体力を向上させます。
身体だけでなく、コミュニケーション能力や自己コントロール能力、思いやりなど、精神や人格を育みます。

適度なスポーツ環境は、子供たちの運動不足や心身のストレスの解消にもつながり、多様な価値観を認め合う機会を与えるなど、青少年の健全育成に大きな力を発揮します。

 

人に影響を与えるだけでなく、地域振興や地方創生にも大きな役割を担っています。
スポーツ産業など経済発展にもスポーツの持つ力を使うことができます。
例えば、プロスポーツチームを地域に密着させることで、そこに人が集まり、人が集まることで、仕事が生まれ、雇用が生まれます。
特に、地方の町からしてみれば、人が集まり、そこでお金を使ってもらうことが、地域の活性化につながります。
一緒に地元のチームを応援したり、スポーツクラブに集まることなどを通じて地域の人々が交流を深めていくことは、地域の一体感を生んだりと大きなエネルギーを生み出します。
地域に愛着を感じたり、連帯感や誇りを持つことが、地域振興や地方創生の土台となります。

アメリカのスポーツ産業の規模を見ても、まだまだ日本のスポーツ産業には発展する余地が多く残されているのではないかと感じます。
スポーツに魅力を感じてもらい、スポーツを発展させることで、スポーツ産業が広がり、それに伴って、雇用が生まれたり、観光産業が広がったりと世の中の経済発展にもスポーツの持つ力を役立てることができます。
人材教育が進むことで、優秀な人間を増やすこと自体が経済発展につながっていきます。
健康増進が進めば、医療費が削減され、これもまた経済発展につながります。

 

スポーツの持つ力として平和と友好ということも挙げておきたいと思います。
「スポーツは世界共通の文化」や「スポーツは世界共通言語」と言われるように、多様な価値観や言葉を超えて、人と人、地域と地域をつなげる力を持っています。
今行われているラグビーワールドカップでも、カナダ代表が台風の被害にあった地域にボランティア活動をしたという話がありました。
それぞれの国は大会期間中に練習や調整を行うために合宿をしています。
合宿地となった地域の人たちが、その国を応援するということもありました。
また、選手もその地域の人たちとの交流を楽しんでいるというニュースも見ました。
このような国際的な親善に役立てることができるのもスポーツの力であると言えます。

 

このようにスポーツの力は多くあります。
にもかかわらず、その力を十分に使えていないのが現状のように感じます。
子供の頃から勝った負けた。
オリンピックでメダルを何個取った。
感動させてくれ。
といったようなことだけではなく、子供の健全育成、人の幸せ、健康、国際交流などを大切にし、もっとスポーツを文化として根付かせることが必要だと思います。

スポーツに携わる人が、スポーツの本質を理解し、スポーツの文化を創っていくという意識を持つことでスポーツがより素晴らしいものになっていくのではないかと思います。

スポーツ観戦の魅力

前々回、「競技スポーツの魅力
前回、「生涯スポーツの魅力
とスポーツをプレーする魅力について考えてみました。
スポーツの魅力はプレーするだけだなく、見るという魅力もあります。
プロ野球は近年、観客動員数がどんどん伸びてきています。
高校野球でも観客動員数は増えています。
今回はその見たり応援したりする魅力を考えてみようと思います。

 

今、アメリカメジャーリーグのプレーオフ、日本のプロ野球のクライマックスシリーズ(プレーオフ)、ラグビーのワールドカップ、等、テレビで見て、興奮しています。
僕は、スポーツをすることも好きですが、見ることもとても好きです。
このスポーツを見るのが好きだったり、楽しいと思っている人が世界中に多くいます。
今の時代は、テレビやインターネットを通じて国内のスポーツだけでなくアメリカやヨーロッパのスポーツを見ることもできます。
アメリカメジャーリーグ(MLB)などアメリカの4大スポーツやヨーロッパのサッカーなどは、放映権が数千億円という額で売られています。
その放映権の値段を見れば、見るスポーツの人気や価値が分かると思います。

 

テレビやインターネットでスポーツを見るだけでなく、スタジアムなど、現地に行き観戦する楽しみもあります。
実際に、現地で競技を観戦すれば、テレビには映っていない選手の動きを見ることができます。
テレビではわからない、競技中の音に触れることもできます。
選手の声もそうですが、その競技によって、音で楽しむことができます。
野球ならボールをバットで打つ音。これは選手の打撃力によって全然音が違います。
サッカーのボールを蹴った時の音もテレビとは違った音を聞けます。
ラグビーでは、人と人がぶつかる音があります。
応援する音もあります。
様々な音を含めて、会場に行けば、テレビではわからない雰囲気を味わったりすることができます。
同じ選手やチームを応援することで、一体感を味わうこともできます。

 

見る人が増えることにより、プロスポーツでは、ファンに見せる役割も大きくなってきています。
試合時間をお客さんが入りやすい時間にしたり、東京オリンピックでは、アメリカの時差を考えて、アメリカの時間に合わせて行ったりと見せることを前提にして行われます。

手に汗握るといったような、夢中になれる時間というのは、充実感を味わうことができます。
仕事や普段の生活から離れ、スポーツを夢中になって見るということが生きがいになるという人もいます。
特定の選手や特定のチームを応援することが生きがいになるという人も多くいます。

スポーツを発展させるには、プレーヤーだけでなく見る人のことも考えなければならないと言えます。
しかし、当然、スポーツはする人がいなければ見ることはできません。
見る楽しみを増やすためには、競技のレベルを上げることは大切なことです。
そのためには、競技人口を増やすことは必要なことです。

スポーツはプレーヤーだけでなくコーチや審判、観客など多くの人の支えがあり、良いものになっていきますが、忘れてはいけないことは、スポーツが結果的に人々に感動をもたらすことがあっても、決してそれは目的にはなりえないということです。
競技に携わる人すべてが、プレーヤーズ・ファーストの考え方とスポーツパーソンシップ(スポーツマンシップ)に則った行動をすることで、選手を育て、スポーツをさらに魅力的なものに変えていくのではないかと思います。

 

今、ラグビーの世界一を決めるワールドカップが日本で開催されています。
来年には、競技スポーツの最高峰といわれるオリンピック・パラリンピックが東京で行われます。
どちらも、競技スポーツの大会であり、日本人だけでなく世界中のほとんどの人にとっては見るスポーツの大会です。
再来年に関西で行われるワールドマスターズゲームズは生涯スポーツの最高峰の国際大会です。
生涯スポーツはスポーツを行うこと自体に目的があります。
そのため、勝たなければ出場権がないオリンピックなどの競技スポーツとは違い、年齢制限はありますが、誰でも参加することができます。(参加したい人はぜひ!!)

立て続けに日本で、世界的なスポーツのビッグイベントが行われます。
競技スポーツ、生涯スポーツ、見るスポーツ、と多くの人にスポーツの魅力を伝え、感じてもらうチャンスです。
それ以外にも、選手をサポートしたり、大会をサポートしたりとスポーツに携わったり、スポーツについて語り合ったりと、それぞれのスポーツの楽しみ方を見つけてほしいと思います。

 

今、スポーツに携わっている人たちの言動が、スポーツの未来を創っていきます。
スポーツの様々な魅力を伝えることでスポーツが発展していきます。
僕も、少しでもスポーツの魅力を多くの人に伝えていけたらと思っています。

生涯スポーツの魅力

前回「競技スポーツの魅力」について書きましたが、今回は、生涯スポーツの魅力について書きたいと思います。
生涯スポーツとは、その生涯を通じて、健康の保持・増進や自己実現、レクリエーションを目的に「だれもが、いつでも、どこでも気軽に参加できる」スポーツのことを言います。

競技スポーツは、より成長することや、より良い成績を目指し勝ち負けを競いますが、生涯スポーツは、健康促進や自己実現、仲間との交流に意味があります。
つまり、「スポーツをすること」自体が目的になるということです。

 

日本のスポーツは、部活動を中心に競技志向にあります。
もちろん競技スポーツも日本では欠かすことができないものですが、もっとライトなスポーツの関りをする生涯スポーツを広げることは、とても重要になってくるのではないかと思います。

競技スポーツではない生涯スポーツやレクリエーションとしてスポーツを楽しむことで、充実した人生を送る手助けになります。

人間は年を重ねるごとに体力が衰え、健康も損なわれていきます。
スポーツを続けることは、体力を向上させ、健康促進に役立ちます。
特に、日本の高齢者医療の問題にスポーツが大きな役割を担っているのではないかと思います。
高齢者だけでなく、現代は、ストレス社会といわれるように、多くの人が、多くのストレスにさらされています。
ストレスと上手く付き合うことは、健康ともつながります。
スポーツを通じて、爽快感や達成感を得ることで、毎日の充実や生きがいに結びつけることができます。
ストレス社会への対策としてもスポーツを楽しむことは、重要な役割を担っています。

 

健康や体力づくりだけでなく、スポーツを通じて、他者とのつながりを作ることもできます。
人と人とがコミュニケーションを取り、地域コミュニティや家族との交流をすることで、人と人との結びつき、支え合いや助け合いを通じて絆を深めることができます。

地域にはスポーツクラブが多く存在しています。
テニスコートや草野球場、フィットネスジム、体育館などで、人々が集まり行うスポーツ活動は、競技スポーツとは異なり、年齢も幅広く、運動能力や体力にも差があります。
そのような人たちが一緒に汗を流し、運動する楽しみを味わうことができます。

スポーツという共通言語を使い、生涯スポーツの場では、普段の生活では知り合う機会がなかなかないような人々とも知り合い、交流することができます。

相手に勝利することを目指すのではなく、健康のためや交流のため、単純に楽しみのために行うのも立派なスポーツと言えます。

僕の周りには、元プロ野球選手だけでなく、部活動などで競技スポーツに一生懸命になっていた選手たちが、今は年齢を重ね生涯スポーツとして草野球を楽しんでいる人が多くいます。
若い時は、しっかり練習し、トレーニングを繰り返し、ひたすらに勝利を目指していた選手たちが、現在は、試合の時だけ集まり、今ある力で野球を楽しみその仲間たちと交流するといったような、競技とは、かけ離れた野球をしています。
中には、草野球を生きがいに、仕事のモチベーションを保っているような人もいます。
スポーツの歴史を辿ると、元々は、日常や仕事を離れた遊びがスポーツの始まりなので、このような生涯スポーツが本来のスポーツの姿とも言えるのかもしれません。

 

どんな選手でもいつかは、競技スポーツから生涯スポーツに切り替えるタイミングが来ます。
競技スポーツは、上のレベルになればなるほど、技術やパフォーマンスの向上を目指し、自分の身体の極限へ挑戦していきます。
そのために競技スポーツは健康を害するところまで自分の身体を追い込んでしまう危険性があります。
だからこそ、競技スポーツの現場には、生涯スポーツの現場にはいない、選手にブレーキをかけられる冷静な指導者が必要であると思います。
僕の考えとしては、競技スポーツで燃え尽きてはいけないし、怪我や故障で将来そのスポーツができなくなるのは避けなければならないということです。
スポーツは生涯にわたってプレーされるべきだと思っています。

 

近年は、スポーツをやる環境が変化してきています。
テクノロジーが発展し、IT技術や交通手段が発達し、身体運動の機会が減ってきています。
そんな時代だからこそ、ぜひ、多くの人に、自分の人生をより良いものにするために、何かしらのスポーツをする習慣を持ってほしいと思っています。

競技スポーツの魅力

今、日本ではラグビーのワールドカップが行われています。
陸上の世界選手権である世界陸上がカタールのドーハで行われています。
来年には、東京でオリンピックが開催されます。
これらのスポーツの大会は、選手たちが日頃の練習やトレーニングの成果を競い合うことを目的とした競技スポーツの大会です。
僕自身も野球というスポーツを競技として長くプレーしてきました。
そんな競技スポーツをする魅力について考えてみました。

 

競技スポーツをする魅力は、スポーツを通じて楽しみや喜びを得ることができるということに尽きると思います。

競技の1番の楽しさは、競争する楽しさではないでしょうか。
野球やラグビー、サッカーのような球技でも世界陸上で行われているような種目でも、体操のような採点種目でも、決められたルールに則って、プレーしなければなりません。
普段の生活には存在しない、スポーツだけに通用するルールを守りながら競争します。
どちらのチームが相手よりも多くの得点を入れることができたのか。
誰が最も早く走ることができたのか。
誰が最も遠くまで物を投げることができたのか。
など、その瞬間に緊張し、全力を出し、どちらが優れているかを競い合うことで、すべてを忘れて夢中になれるところに、競技の楽しさがあります。

 

それだけでなく、今までよりも成長したい。
パフォーマンスを少しでも高めたい。
今までできなかったことをできるようにしたい。
といったような少しでも高みを目指し努力を重ねることで、充実感や喜びを得ることができます。
相手を抑えるといったように、他の誰よりも良い成績を残すことを目指します。
そのために、もっと速い球を投げられるように、もっとコントロールよく投げられるようにといったことを目指して努力を重ねます。
陸上選手なら、100分の1秒でも記録を縮めたい。
体操選手は、まだ誰も成功したことのない技に挑戦したい。
などと以前の自分よりも優れた状態にすることを目指します。
今までの自分に挑戦すること自体が、喜びとなります。

 

どんな優れた選手でも、最初にボールに触れた瞬間から一流選手のように打ったり投げたりできるわけではありません。
野球に限らず、どの競技でも、最初から理想のフォームで投げたり、打ったり、跳んだり、走ったり、泳いだりできるわけではありません。
選手は時間をかけて試行錯誤を繰り返しながら、理想のフォームやプレーを身につけていきます。
自分が思い描く、身体操作ができるように学ぶことで、できなかったことができるようになったり、自分が理想とするフォームを身につけたりすることができます。
自分自身の身体を変えていくことにも喜びを得ることができます。

 

選手にとっては達成感も喜びのひとつです。
たとえ試合に勝てなくても、自分で目標を立て、それに向けて努力を重ね、自分で納得できる結果を得られたとき、達成感を得ることができます。

競技スポーツではすべての人が勝利できるわけではありません。
優勝した選手以外は負けることを経験します。
たとえ負けたときでも、自分が精一杯の努力をして全力で戦ったならば、達成感があります。
達成感からなる喜びは、苦労や困難を克服したときに味わえる喜びです。
この達成感は、チームや集団で味わうこともできます。
僕は、抑えのピッチャーというポジションを経験しましたが、他の選手がつないでくれたことにより、出番が巡ってきます。
そこで抑えた喜びは、自分だけの喜びではなく、チームメートやそれをサポートしてくれた人たち全員の喜びになります。
喜びを分かち合えることも競技スポーツの大きな魅力のひとつです。

 

どの競技でもトップ選手たちは、人々に素晴らしいパフォーマンスを見せてくれます。
それは、その選手が、より良い成績が残せるよう、高みを目指し努力を重ねることで生まれます。
プロスポーツになれば、結果も大切になりますが、競技スポーツの魅力は、努力の過程があってこそで、成長を目指して行動し、自分自身の身体を変えていき、達成感を得ることで、自分自身の存在価値を示していくところにあると思います。
スポーツを競技として行うことは、自分と向き合い、自分を成長させることにつながるということも魅力のひとつだと思います。

危険・怪我の回避能力を育むには。

前回の投稿(ラグビーから学ぶ危険・怪我の回避。)で、いざというときに危険や怪我から身体を守るのは、自分自身の危険予知能力と身体能力であるという話をしました。
それを身につけるためにトレーニングをする必要があると言いましたが、トレーニング以外でも、遊びや大人の接し方など、育った環境によって身についていきます。
それを身につけるにはどのような環境で子供たちに接するのが良いのか、僕なりの考え方を書いてみました。

 

危険予知能力を高めることや危険を回避できるようにするには、経験を積むことは重要なことです。
だからといい、致命傷になるような怪我につながったり、命の危険にさらすようなことは避けなければなりません。

大人が危険だと思うことを子供はやろうとしますが、どこまで見守り、どこから止めるのかという判断はとても難しいことだと思います。
その状況によって臨機応変に対応しなければなりませんが、僕の持っている基準は、本人が危険を認識しているかしていないかということです。

本人が危険を認識している場合は、多少の危険は見守ります。
子供は、危険を認識していても、好奇心旺盛であり、わざと危険な遊びや危険な行動をしようとします。
リスクのあることは、チャレンジ精神を刺激し、スリルを味わうことで、より面白くします。
そのような行動は、面白いだけでなく、危険性のある遊びの対応を学び、経験的に危険を予測し、怪我を回避できるようになっていきます。
子供が危険を感じていることに、あえて、挑戦することで、自分の身体のコントロール方法を身につけていきます。
例えば、高いところから飛び降りて、足がしびれたり、痛みを感じるような経験をすることで、自分が飛び降りることができる高さを感覚的に覚えていきます。
「ここまでなら飛べる」「これは怪我をしそうだからやめよう」という判断をできるようにし、自分の中の安全基準を記憶していきます。

それに対して、本人が危険を認識できていない場面では、大人が注意を促す必要があると考えています。
例えば、夢中になってボールを追いかけている子供は、そのまま道路に飛び出していきます。
車にひかれるかもしれないということを認識できていないとそうなります。
このような場面では、大人が止めに入る必要があります。
本人が危険を認識できているかは、個人差があり、脳の成長段階よっても異なります。
大人になるにつれて、危険を予測できるようになっていきます。
それだけでなく、経験や知識、身体能力によっても危険性が変わってきます。
同じ状況でも、本人の精神状態や疲れて集中力がなくなっているような場面では、危険を認識できなくなるので注意を促す必要があります。
大人はこれらの状況を見極め、判断することが重要です。

注意の促し方としては、声を上げて、叱るというやり方も、その時は効果があるかもしれませんが、重要なことは、本人が危険性を理解し、自らの行動を変えられるようになることです。
「叱られるから止める」「怒鳴られるから止める」では、危険性の本質的なことを理解できたのではなく、叱る人や怒鳴る人に危険性を感じて止めるだけです。

 

危険予知能力を育むには、大人が見守ることで、子供が主体性を持って、危険に挑戦していくことです。
ここで重要なことは「主体性を持って」ということです。
「ここからから飛び降りろ」と言われて飛び降りるのと、自分のチャレンジ精神から高さを決め、飛び降りてみるのとでは、まったく違います。
スポーツに当てはめると、走り込みをやらされるのと、自分からどのくらい走れるのかをチャレンジしてみるのでは違います。
自分がボールをどのくらい投げたら、肩や肘などの身体が危険なのかを知るには、自分の判断で強度や球数を決めて、自分の身体と向き合うことです。
徐々に負荷を上げていくことが重要で、ここに試合で勝つことや、誰かと比較するということを考えては正確な判断が難しくなってしまいます。
自分の身体がどこまでやったら危険なのかを知るには、誰かにやらされるわけでもなく、自らチャレンジするということを何度も経験し、覚えていくということです。

 

ちょっと高い場所に登ったら「危ないから下りてきなさい」
転ぶ前から「転ばないようにね」
少し危険なだけで「危ないからダメだよ」、など
その反対に、高いところを怖がっているのに「怖がるな」
適度を超えて「もっとやれ」
少年野球のピッチャーに「投げ込め、走り込め」など

危険から守ることも練習をやることもどちらも大切ですが、自力で問題を解決し、直観を磨いていき、大人の干渉がなくても行動を自制できるようにならなければ、危険予知能力と身体能力は、身についていかないので、怪我を防げません。

子供を育てるということは、主体性を持って、様々なことに挑戦し、成功と失敗を多く経験し、そこから学んでいくことが必要です。
そこには、莫大な時間と周りの大人の我慢と根気がなければなりません。

大きな怪我は避けなければなりませんが、小さな怪我は多少は覚悟の上で危険回避能力を身に着けることを優先することが、将来、大きな怪我を防ぐことに役立ちます。

大人が何でも先回りして子供の危険を取り除いてしまうのではなく、こんな危険が予測できるということを認識させる方が、長い目で見たときに子供のためになるのではないかと思います。

ラグビーから学ぶ危険・怪我の回避。

今、ラグビーのワールドカップで盛り上がっていますが、試合を見ていると「痛そう」「怪我しそう」というような感想を持ってしまいます。
それと同時に、怪我を回避するための高度な身体能力を身につけているなぁとも思います。
世界トップクラスのラグビー選手が持つ、危険回避能力は他のスポーツや生きていく中でとても参考になります。
そんな話をしていこうと思います。

 

現在、多くの子供たちを指導する立場にありますが、そこで思うことが、運動中の危険な場面での自分の身体を守るための身のこなしが上手くできない子が多くいるということです。
転んだ時に、上手く受け身を取ったり、手を出すことができずに顔面を怪我してしまような選手がいます。
前転や後転などをした時に、頭を強打してしまうような選手も多く見ます。
野球のプレーでも、スライディングやデッドボールの回避などを見ても、危険を回避することが上手くないと感じることがあります。

こうした原因のひとつに、幼少期の外遊びの変化が関係しているのではないかと思います。
僕の幼少期にしてきた遊びは、鬼ごっこをしたり、木登りをしたり、崖に登ったり、ドッヂボールをしたり、公園で野球やサッカーをしたりといった遊びをしていました。
今では、公園でボールを使って遊ぶことですら、危険と言われてしまうので、どの遊びも現代では「危ない」と言われるような遊びです。
そんな時代背景もあってか、危険な場面の経験不足により危険回避の基礎的な動きが十分に習得できていないのではないかと感じます。
だからこそ、昔はあまり必要なかった、危険な場面で自分の身体を守ることができる身体能力を身につけるための基礎的な動きづくりや身体づくりもトレーニングをする必要性を感じます。
本来なら、トレーニングよりも遊びを取り戻すことの方が、効果的ではないかと思いますが、現実問題難しそうなので、トレーニングをする必要があるのではないかと思います。

 

どのような能力を身につけるためのトレーニングをすれば良いのかをラグビーから考えてみたいと思います。
テレビでラグビーワールドカップを見ていると、ラグビーの中には、他の競技や日常生活にもつながる怪我や危険を回避する能力が多く含まれているように感じます。

ラグビーで怪我をするとしたら1番に考えられることが、相手選手からのタックルなど、他のプレーヤーとの接触ではないかと思います。
そこでの接触を回避したり、回避できなくても、準備することで怪我のリスクを減らすことができます。
目で見たり、音や気配を感じ取るなどして仕入れた情報を元に、他のプレーヤーとの位置関係や接触のタイミングを把握することで準備ができます。
そして、それに応じて、切り返したり、加速したり、減速したり、身体をひねったり、タックルに備えて押し返したりと瞬時に状況を判断して行動に移します。
上手く受け身を取ったり、関節を痛めないような倒れ方を瞬時に選択したりもしています。
ラグビーにはボールがあるので、それをボールを見ながら、ボールをキャッチしたり、投げたり、蹴ったりといった判断も同時に行わなければなりません。
タックルを受けてバランスを崩しても、それを立て直す能力も必要です。
柔軟性やしなやかさや相手の力をいなす能力などが欠けると、筋肉や腱の断裂などの怪我だけでなく、慢性的に腰痛や股関節痛、膝痛などにもなります。
当然、ぶつかられたときに怪我をしない、強靭な身体も必要です。
筋力や持久力など基礎体力が欠けると、タックルなどの強い負荷に耐えられずに怪我をしてしまいます。

ワールドカップに出場するような、世界トップクラスのラグビー選手は、様々な状況を瞬時に判断し危険予測をして、身体能力で回避するという能力に優れています。
このような能力を身につけるためのトレーニングをすることは、怪我や危険を回避するだけでなくパフォーマンス向上にも役に立ちます。

 

いざというときに危険から身体を守るのは、自分自身の危険予知能力と身体能力です。
創造力を働かせ、先を予測し、自ら考え、答えを見つけていくことで養われていきます。
子供の頃から大人が危険をすべて取り除いていては、その能力はなかなか身につけられません。
成長には失敗はつきものです。
失敗をさせないのではなく失敗が致命的なダメージにならないようリスクを減らしてあげ、どんどん失敗できる環境を作ってあげることも必要です。
自分の身体は自分で守ることができる子供に育てていくことが子供のためになるのではないかと思います。

 

ラグビーを見て感じたことは、ラグビーは怪我と隣り合わせのスポーツですが「選手の危険予知を含めた身体能力」「スポーツパーソンシップに則った行動」「ルール」によって怪我のリスクを減らしていると思いました。
これは他のスポーツにも当てはまることであり、とても参考になります。
選手が自分の身体を常日頃から鍛え、疲労やその時々の体調など現状の状態を把握し、周りはその選手を大切にし、個人を尊重し、それでも危険なことはルールを作り、守るということができれば、怪我を100%防ぐことは難しいですが、かなりリスクを減らすことができると思います。
怪我を予防することは多くの競技の課題でもあります。
他の競技もラグビーから多くのことを学べるのではないかと感じました。

確率を考える。

前回の投稿で確率の話(実力?運?)をしましたが、試合で成功する確率をどう上げていくかを考えながら、普段の練習から取り組むことが大切です。
今回も確率を考えてみたいと思います。

 

野球だけでなくスポーツは勝つか負けるか。打つか打たないか。抑えるか抑えないか。のように結果が明確にわかります。
このように結果が明確だと、どうしても人はそこに運があったとしても、もっと納得しやすい他の原因を見つけてこようとしてしまいます。
運による影響に目をつぶり、別の因果関係を過大に評価してしまいます。
成功も失敗も、ある程度は運的なことがあるということを理解することは必要です。
もちろん結果が出ればそれなりの要因があり、結果が出ないのも出ないなりの要因はあります。
しかし、そこには偶然の働きもあったはずです。
だからこそ、成功や失敗も、すべてはできる限り確率的に捉える必要があります。
実力がない打者でもたまたまヒットを打つこともあります。
どんなにいい打者でも、打ち損じることはあります。
初心者のような悪いフォームでも狙ったところに投げられる場合もあります。
逆に、適切なフォームを身につけた一流の選手でも狙ったところに投げられないこともあります。
しかし、両者が狙ったところに投げられる確率には大きな差があります。
これらを確率的に捉えることができなければ、実力を正確に判断することができません。
この自分の実力を正確に判断できるのも能力のひとつです。

 

成長できない選手によく見られるのは、うまくいった要因を自分に求めたがります。
その要因が相手であったり偶然のおかげだとは思いません。
一方で、失敗については自分以外にその要因を求めたがります。
「うまくいったのは自分のおかげ、うまくいかなかったのは他人のせい」といった感じです。
成功は自分のおかげと考えることで、前向きな自信を維持できるということもあります。
また、うまくいかなかったのは自分以外の要因のせいと考えることで、そのことに対していちいちくよくよしないで済むという利点もあります。
しかし、運の要素を度外視した、自分の実力を測ることができなければ、成功を続けるということは難しいと思います。

運による成功に対しても自分の貢献度を過大に評価し、たまたま、うまくいった自分のやり方を絶対視してしまったり、反対に、結果が出ないことが続いたときには、「今はたまたま運が悪いだけだ」と考えるだけで、自分のやり方を変えようとは思わず、そこから学ぶことができなくなってしまいます。

そのような選手に多い特徴として気持ちや気合で乗り切ろうとします。
道を切り開くには、気合を入れて努力することは必要なことです。
大きな成果を出すためには、苦しいときに諦めずに努力を続け、チャレンジを続けていくことは重要です。
しかし、それも現状を正確に判断して、適切な方向に努力を積み重ねる場合の話です。
今までのやり方が通用しないときに、やり方を変えずに気合だけで乗り切ろうとしても、その方向が適切でなければ、その努力は報われないものになってしまいます。

成長しないチームの特徴として、苦境になればなるほど、気合に頼ろうとする傾向が強くなっていきます。
文句を言わず、良い結果だけを信じて、一致団結して悪い状況を打破しようと考えます。
うまくいっていないのなら、まずは、今までのやり方がうまくいかない状況にきているのではないかと考えるべきです。
方向を決め、そこに努力を傾ける必要があります。
気合に頼る精神論は、そうした方向性の修正をなかなかしないために、的外れの方向に努力を重ねる結果につながってしまいます。
過去にたまたま成功したことが、そのやり方を正しいと思い込み、新たな状況に適応できなくしてしまいます。

 

スポーツである以上、相手がいることなので、うまくいくこともあればいかないこともあります。
そこには、少なからず、運も存在しています。
運が存在しているからこそ、確率を高める努力をしなければなりません。
成功、失敗両方から学び、次につなげていくという姿勢が成長につながります。
結果だけに左右されずに、もっと本質的な部分を評価していくことが重要です。

運が存在するということを理解して、成功する確率を少しでも上げていけるように努力をすることが大切だと思います。

実力?運?

野球は確率のスポーツと言われていますが、運の要素が多いスポーツとも言えると思います。
だからこそ、運の要素をなるべく減らせるように、プロ野球ではシーズンを143試合と多くの試合数をするのではないでしょうか。
そんな確率の話をしていきたいと思います。

 

例えば、ジャンケンをして勝つ確率は5割です。
負ける確率も5割です。
勝敗は運によって決まります。
ジャンケンを5戦した時の勝ち負けを表してみました。
「○●○○●」
「●●○●●」
「○○○○○」
ジャンケンを5戦した時の勝率は毎回変わると思います。
5戦だけでは、5連勝の勝率10割も考えられます。

「○●○●○●○●○●」という10戦の勝敗を見て、11戦目の勝敗を予想すると「○」と思い込む人が多くいるのではないでしょうか。
しかし、11戦目の勝率も5割です。
「○●○●○●○●○●」のように勝ち負けが交互に続く確率も「●●●●●●●●●●」と10連敗になる確率も実は同じです。
常に次の勝負の勝ち負けは五分五分であるということです。
10戦だけでは勝率5割から大きく離れることもありますが、勝負の数が増えれば、勝率は5割に近づいていきます。

ジャンケンとプロ野球が同じとは到底言えませんが、今年のプロ野球は全球団が勝率4割~6割の中にいます。
大型連勝や大型連敗が多くなるのも野球の勝敗には運の要素が多くあるという証でもあるのではないでしょうか。

 

次は野球の打者の打つ確率を考えてみたいと思います。
プロ野球の打者でいえば、例えば、今年のここまでの打率が3割の選手が今日、打席に立ったとします。
しかし、その打席でヒットを打つ確率は、3割とは言えません。
投手との相性、打者の調子、環境、状況、運、など非常にたくさんの要素によって、打つ確率が決まります。
どんなに会心の当たりを打とうがそこに野手が守っていて捕ってしまえばアウトです。
当然、相手のバッテリーも球種別の打率やコース別の打率など、様々なデータを頭に入れています。
それを踏まえ、抑える確率が高いであろう配球をしてきます。
野球の面白いところは、投手がボールを投げる前は確率しかありません。
実際に投球した後には、結果しかありません。
確率の厄介なところは、実際に結果が出てしまうと、確率が意味を持たなくなってしまうということです。
しかし、結果を多く積み上げていくと、そこには再び確率が現れます。
それがシーズンの打率であり、対戦成績です。

確率のスポーツと言われる野球をするには、未来を予測して上手くいく確率の高いプレーを選択することはとても重要なことです。
先に起こることを確率的に捉えながらプレーする必要があります。
しかし、運の要素が多く、相手もいるので、一回一回の結果ではなく、パフォーマンスや長い目で見たトータルの結果でその善し悪しが判断されなければなりません。
判断材料を増やし、トータルで見ることが、運に対処するためには必要なことです。

 

未来をすべて予測することは難しいですが、未来には、予測可能な未来と予測不可能な未来とがあります。
例えば、技術や知識は未来の予測を可能にします。
今回の夏の高校野球の話題を呼んだ、佐々木朗希選手のドラフト1位指名は予測できます。
しかし、クジ引きになった時に、どこの球団がそのクジを引くかは予測できません。
すべてを予測しようという考え方ではなく、予測可能な未来においては、できるだけその精度を高められるように、全力で努力をしていくということです。
能力や技術を向上させることで、活躍できる確率を高めることは可能です。
しかし、相手がいることや運的な部分は予測ができません。
予測できる未来にアプローチせずに、見逃していたのなら、それは改善しておく余地がありますが、運が多く存在する場面では、上手くいかない出来事が起きたときに、いかに冷静に、いかに柔軟に対処できるかということが重要です。

 

すべての予測は、未来に起こることの、当たる保証のない仮説のひとつにすぎないということです。
予測が当たらないことが問題なのではなく、予測できないことに予測することで対処しようという考え方があまり良い考え方とは言えません。
自分自身を磨くことで、未来の可能性を広げようと考えることが、未来の予測の確率を上げることになるのではないかと思います。

スポーツ、身体活動、体育、武道。

スポーツ、身体活動、体育、武道を混合して語られることが多くありますが、実際は、これらはまったく異なる行為です。
今回は、そのスポーツ、身体活動、体育、武道の説明をしていきたいと思います。
目的を考えたら違いが分かると思いますが、スポーツ、身体活動、体育、武道のどれが1番良いのかということは言えません。
すべて、重要な役割を持っていて、それを行う人の価値判断によります。

 

スポーツ(SPORT)
スポーツは、もともと日常生活の労働から離れることを意味していたことからも、自ら楽しむもので、強制されて行うのではなく自らが判断して行うものです。
スポーツとは、難しいものではなく、「遊び」と「真剣さ」のバランスによって成り立つ、「ルールのある遊び」とも言えます。
人間が楽しみを求め、より善く生きるための自発的に行なう身体活動であり、ルールの中で、自由な能力の発揮と挑戦を試み、スポーツパーソンシップに則って行います。

 

身体活動(Physical Activities)
人が安静時よりも多くエネルギーを使う行為を身体活動と言います。
身体活動=運動+生活活動にまとめられます。
運動とは、身体活動のうち、体力の維持・向上を目的として計画的・意図的に実施するものです。
例えば、散歩をしたり、ジョギングをしたり、ジムやフィットネスクラブで行うトレーニングなどが運動です。
当然、野球、サッカー、バスケなどのスポーツも運動と言えます。

生活活動とは、身体活動のうち、運動以外のものを言います。
例えば、掃除機をかける、洗濯物を干す、などの家事。子供と屋外で遊ぶなども生活活動です。
通勤、営業の外回りもそうですが、荷物を運んだり、階段を上り下りしたりもそうです。
農作業、などの仕事上の活動なども生活活動です。

 

体育(Physical Education)
「Physical Education」とは、日本語に訳すと身体教育になります。
身体教育なので、身体を動かしながら、身体的動作や行為、他者との身体的関係性を学ぶことです。
それだけでなく、身体の構造や機能を知るために学ぶことも体育です。
「体育」は、学校教育が中心で行われているので、身体の向上と健康の促進が目的であることは、授業を通じて経験してきていると思います。
体育は心身鍛錬や集団訓練、軍隊教育などのために行われてきたという歴史があります。
軍隊教育では、戦争に勝つために兵士の身体を強くすることが目的で行われていました。
そのため、指導者(上官)が主導権を握り、その指示に従いながら、規律を守り訓練に耐えることが求められていました。

 

武道
「武道は、武士道の伝統に由来する日本で体系化された武技の修錬による心技一如の運動文化で、心技体を一体として鍛え、人格を磨き、道徳心を高め、礼節を尊重する態度を養う、人間形成の道であり、柔道、剣道、弓道、相撲、空手道、合気道、少林寺拳法、なぎなた、銃剣道の総称を言う。」(日本武道協議会より)
つまり、武術・武芸の修業を通じて自制を保ち、欲望や怒り等を消し去り悟りを得ることを目的として行うのが武道です。

 

このように考えると、スポーツ、身体活動、体育、武道は混合されて言われていることが多くありますが、それぞれ違いがあるということがわかると思います。

例えば、自宅周辺をただジョギングすることや野球ボールを持ってただ壁当てを行うことは、身体活動です。
そこから身体の構造や機能、健康概念に基づきジョギングの効果を学び教えることは体育です。
スローイングのメカニックや身体機能を学び、それを踏まえてより速い球やコントロール良くボールを投げることも体育と言えます。
さらに、ジョギングを5km走の競技として発展させルールを創り、より多数の人間がそのゲームに参加し競い合うのがスポーツです。
ただ投げるだけではなく、そこに打者がいて、打たれたボールを守る野手がいて、ルールに則って勝敗を競うのが野球というスポーツになります。
スポーツには他者がいるとも言えます。

 

身体活動も体育もスポーツもどれも重要な役割を持っているということです。
体育とスポーツは異なりますが、体育がいらないというわけではなく、目的としているものが異なるということです。
それぞれの違いを理解し、何を目的にしているのかを考えることで「より善く生きる」ということにつながるのではないかと思います。

ただ、スポーツ、身体活動、体育、武道、どれも共通して言えることは「継続は力なり」ということです。
継続して行うことで、心身ともに変化していき、自分の人生を豊かなものにしていけるのではないかと思います。