相手に対する思いやり。

スポーツはスポーツパーソンシップに則って行われます。
スポーツパーソンシップとは、「感情の抑制」「相手に対する思いやり」「フェアプレー」そして「卓越性を相互に追求する」といった、スポーツをする上での心構えのことをいいます。

なぜ、スポーツマンシップではなくスポーツパーソンシップという言葉を使っているかというと、最近は「ビジネスマン」という言葉を使わずに「ビジネスパーソン」「スチュワーデス」は「キャビンアテンダント」のように男女を別ける言葉は使わなくなっています。
実際、「スポーツマンシップ」でひとつの単語であり、「man」という単語には「人、人間」という意味もあるので問題はないのかもしれませんが、「person」には「人、人間」という意味と「人格」といった意味もあるので、今後のスポーツの持つ位置づけも考え「スポーツパーソンシップ」という言葉を使っています。

今回は、スポーツパーソンシップの中の「相手に対する思いやり」について考えていきたいと思います。

 

「相手に対する思いやり」とは、相手を尊重する、敬意を払う、リスペクトするといったようなことを言います。
相手を大切に思うこととも言えます。

この大切に思う相手とは、対戦相手だけのことを言っているわけではありません。
相手以外にもチームメートや、審判、指導者、観客、家族、関係者、など競技に携わる人たちのことを指します。
それだけでなく、道具、施設、ルール、歴史や伝統なども尊重する対象です。
そして忘れてはならないのが、自分自身を大切に思うことです。
自分自身を大切に思えば、自分自身に正直になり、誇りを持った行動ができると思います。

相手に対する思いやりを持つことで、相手の素晴らしかったプレーを評価し敬意を払います。
思いやりのある人というのは、相手の立場になって考えることができる人であり、まわりの人の感情を思いやって行動することができる人です。
自分がやられて気分が悪いと感じることは相手にもしてはいけません。

相手あってのスポーツなので、相手に気分よくプレーしてもらい、それでも負けないという気持ちでお互いに勝つために全力でプレーします。
常に全力を尽くしてプレーすることは、相手に対する思いやりでもあります。
試合には勝ち負けがありますが、より強い相手に勝てたときの方が大きな喜びがあります。
相手のおかげで自分も頑張れたし、成長できたと思えるはずです。
お互いにベストを尽くせたときに、純粋にスポーツを楽しいと感じ、充実感や達成感があるのではないかと思います。

また味方同士も思いやりを持つことが大切です。
味方の足りないところを補い合い、味方のミスを怒ったり責めたりするのではなく、カバーすることが大切です。
ひとりひとりを大切にし、個人個人が持っている個性を尊重しながらチーム力の向上を目指していきます。

また負けた時でも、他人のせいにしたり、ふてくされた態度をとるのではなく、自分より相手のほうが強かった、上手かったと思うことが大切です。
自分の弱さや課題を教えてくれたと思うことで次の目標ができ、次に進んでいけます。
このような態度が人間的な成長やプレーの向上につながるだけでなく、皆からも尊敬される良い人間になれるのではないかと思います。

思いやりの心は、他から強制されてできるものではなく、日頃から自分で意識し個人として判断力を磨かなければ、なかかな身につきません。

思いやりを持てる子供に育てるには、周囲のすべての大人が「思いやりの心」を持って子供に接することだと思います。
親、先生、指導者、審判員、など、周囲の大人が、子供の人格を認め、思いやりの心を持って接すれば、子どもは自然に思いやりの心を持つようになるのではないでしょうか。
自らが相手への尊重を示せば、相手からも尊重が返ってくると思います。
スポーツでは、その競技の歴史的な成り立ち、伝統を学び、理解した上で、その競技自体を尊重する心を持つ必要があります。
それを少しずつ教えていくことも指導者の役割です。

 

スポーツにおいて相手に対する思いやりを持つことは、勝利よりも優先すべきことだということを忘れてはいけません。
人間の尊厳を保ち、個人の人格を尊重し、ルールを守り、他人や周囲を思いやる気持ちを持った中でベストを尽くすのがスポーツです。
スポーツである以上優先されることは、個々の選手の健康・安全、そして努力から得ることができる喜びだと思います。
勝利は、喜びの中のひとつの要素にすぎないと思います。

 

スポーツパーソンシップとは、優れた人格を身に付けるための心構えであり、スポーツを通じて少しずつ身に付ける人格的な総合力のことだと言えます。
スポーツに大切なものを尊重し、自らが判断するということは、スポーツをする上で求められる最も基本的な要素です。

プレーヤー、審判、観衆、など、スポーツに携わるすべての人の行動がスポーツを作っていくということだと思います。

カテゴリーTIPS