目指すべき選手。

僕が子供たちを指導するときに心掛けていることです。
どのような人になってほしいのかという理想を常に頭に置いて子供たちに携わっています。
決して目先の結果だけにとらわれないように意識しています。
そんな話をしていきたいと思います。

 

僕が目指している理想の選手とは「勝手に自分自身で上手くなっていく選手」です。
自分で自分の人生を切り開く力をつけてほしいと願っています。
この力が低いと何かに依存するという状態になりやすくなってしまいます。
依存とは、他のものに頼って成立・存在することを言います。
ギャンブルやお酒、たばこ、薬物、人への依存もあります。
ギャンブルやお酒、たばこ、薬物、などの依存は説明するまでもないと思いますが、人への依存には、常に相手にしがみついたり、相手を支配したり、束縛することで安心や満足を得ようとします。
このような依存の原因として、自分で自分の人生を生きるという感覚が損なわれてしまうことがあると思います。
ギャンブルやお酒、たばこ、などは「どのような危険があるのか」「どのくらいの量なら問題ないのか」といったことが理解していて、実行できることが重要です。

コーチに依存していたり、親に依存しているのは、良いことではありません。
これを作り出しているのは、コーチであり、親です。
いつまでも、親やコーチに「こうやりなさい」「これをしなさい」と課題を与えられていては、考える力が身についていきません。
大人は子供に簡単に答えを教えるのではなく、子供が自分で考え、時には質問し、話し合い、自分で決断し行動していくことが重要です。
小さな頃からの小さな決断の習慣の積み重ねがどんな状況下でも、自分の意思、判断で行動し、その自分の行動の根拠を説明できる人に育っていきます。
子供が自分で課題を見つけ、考え、話し合い、自分で選択して、自分なりの解決をしていく、というサイクルを支えていくのが大人の役割です。

これは、決して、大人は子供に任せっぱなしで、大人は何もできないということではありません。
子供を放置しておくということでもありません。
子供の話をよく聞き気持ちを考え、よく話し合うことが大切です。
悪いことは悪いとはっきり伝え、ダメなものはダメと言わなければなりません。
その時に大人としての意見を言う必要があります。
ただし「あなたはどう思う?」と聞くことは忘れてはいけません。
決定は本人がすることが重要だと思っています。
自分で自分の人生をコントロールできているという感覚を身につけることは必要なことです。

 

僕が見ているのは今だけではありません。
決して小学生を今、良い子に育てることではなく、中学生を完成された中学生として良い子に育てることではないと思っています。
今、良い子だからといい、将来、幸せになれるわけではないからです。
その代わりに、選手が30歳、50歳、70歳、となった時に、幸福に生きていける力を身につけられるように接していきます。
選手が幸福な人生を生きていくことができるような人間に育てることを目指します。

大人は、子供に安心感、安全感を持ってもらうことや、必要とされている、愛されているという感覚を与えることが何よりも大事だと思っています。
親や指導者から必要とされるため、愛されるためにいつも気を使い、ビクビクしながら育てば、育ちに悪影響を及ぼすことになります。

例え失敗しても「失敗はするもの、しても何とかなるものだ」というのを子供の頃から身につけていくことは重要です。
失敗の1つや2つ何とかなるという安心感、安全感を育てることでチャレンジ精神を育むことにつながります。
選手が何かミスや大失敗をしてしまったときに、隠される人ではなく、1番に話をされる存在でありたいと思っています。
選手が上手くいっているときよりも上手くいかずに悩んでいるときこそ、指導者の資質が試されると思っています。

 

人生というのは自分で決めて自分で実行するしかないものです。
だから、育成とは、選手を上手くすることではなく、自分自身で上手くなれる選手にする手助けをすることだと思っています。
何かに振り回されるのではなく、周りのものを上手く使ったり、自分自身をコントロールできるようにしていきます。

自分で課題を見つけ、自分でどんどん成長していく。
自分で自分の人生を切り開いていく。
そして、自分の人生を自分自身で幸福にしていく。

このような生きる力を「スポーツセンシング」と言っていますが、人が成長するための本質的な能力を育んでいくことが選手の育成において重要なのではないかと思います。

カテゴリーTIPS