投球に必要なスキル。

僕は、何の練習をするにも、練習は手段でなく目的そのものという考え方を持っています。
練習のための練習ではなく成長するためであり、試合で結果を出すために行います。

その練習をすると、どうなるのかを考えて練習に取り組むことが重要です。
投手では、どのようなスキルを向上させたいのかを明確にすることです。
練習ありきではなく、向上させたいスキルを考え、そのための練習を考えます。

投球に必要なスキルを考えると以下になります。
僕の考えなので人によって多少変わるかもしれませんが、参考になればと思います。

 

投球に必要なスキル
・スピード
・球筋
・球威(打者が感じる球の力)
・コントロール
・変化球
・セットポジション
・スタミナ
・リカバリー

これを基に、このスキルをどう使うのかが重要で、配球などの打者を打ち取るための考え方と、試合で勝つための考え方が合わさって投球の能力になります。
僕が思いつくのはこんな感じですが、まだまだあるかもしれません。
この中のどれをターゲットに練習するかを考えることが重要です。

1つずつ説明していきます。

・スピード
スピードガンに表れるスピードです。
あるに越したことはありません。
ドラフト会議を見てもスピードがある選手が高い評価を受けています。
僕が指導をするときに、子供たちには言いませんが、大人には、とにかくスピードを上げるにはどうしたらいいかということを考えさせます。
子供の頃にやることはスピードを上げることではなく、その土台を作ることの方が重要だと思っています。

・球筋
球の質のことを言っています。投げたボールの角度、回転軸、回転数などの違いにより球筋が変わります。
定量化されたデータを基に判断できます。

・球威
打者が感じる球の力を言っています。
スピードガン以上に速く感じる投手や、球が重いといったようにバッターに感じさせるような球の力です。
数値化されない球の力を言います。
力の方向がズレていると球威を感じさせることが難しくなります。
バッターによって感じ方が変わることもあります。
僕は、球威は、ピッチングの中でかなり重要だと思っています。

・コントロール
野球はストライクを投げなければ始まりません。
ストライクを投げられることがピッチャーの最低条件になると思います。
あるに越したことはありませんが、スピードの方が重要だと思っています。
最近のメジャーリーグのフォアボールが少なく、コントロールが良いと言われている投手を見ると、細かいコントロールを持っているというよりも、甘いコースに強い球をどんどん投げこんでいるように見えます。
逆に、スピードや球威がなければコースを突く必要があるのでボール球が増えてしまいます。
このようなことから最低限のコントロールがあれば、あとは、スピードや球威の方が武器になると思います。

・変化球
ストレートを基準にボールの軌道を変化させたボールのことです。
大切なことはバッターに変化球であることを早く気づかれないことです。
極端な言い方をすれば、最後までバッターに変化したことに気づかれなければ、数センチ変化するだけで打ち取ることができます。
近年では「ピッチトンネル」という、違う球種をどれだけ同じ出だしで投げることができているかを数値化したデータもあります。
出だしを、違う球種でも同じにすることで、打者が球種の違いを認識しづらくなるということです。
または、バッターの予測を裏切ることです。
このくらい曲がるだろうというバッターの予測以上に曲がれば空振りがとれます。
逆に、このくらい曲がるだろうと思っているバッターの予測以上に曲がらなくても空振りします。
抜けた変化球やフォークボールが落ちなくて空振りするケースがそれにあたります。
なかなか狙って投げることは難しいですが、できたら有効なボールになります。

・セットポジション
セットポジションの中にクイックモーションも含まれます。
ランナーがいてもいなくても自分のバランスで投げられることが大切です。
ランナーが出ると自分のリズムで投げることが難しくなりますが、それでもリズムを崩されないのは大切な能力のひとつ。

・スタミナ
多くの球数を投げたり長いイニングを投げたりしてもパフォーマンスが落ちない能力です。
心肺機能が重要視されることが多いですが、必要なことは、身体操作の部分です。
非効率な動きは身体の一部分に負担が集中したり、代償運動により余計なエネルギーを使うことになってしまうからです。
投手のスタミナとは、技術であるとも言えます。

・リカバリー
イニング間で筋肉を回復させる力や試合での疲労を回復させる力です。
毛細血管の数を増やすことでリカバリー能力が向上します。
登板後のリカバリーとして重要なことは、栄養と睡眠です。
行動によって回復させるだけでなく、回復力もスキルということを忘れずに向上させることが大切です。

 

以上が投球に必要な能力です。
自分がどの能力を身につけたいのか。
今やっている練習で、どこを伸ばそうとしているのか。

何をするかではなく、何ができるようになるか、という考えを持って練習をすれば、成長につながると思います。