ウォーミングアップとトレーニング。

競技をするにあたり、ウォーミングアップは大切です。
これは多くの人が認識していると思いますが、本当に最適なウォーミングアップができているのかと考えると疑問が残ります。
それは、僕自身が、現役のころにしてきたウォーミングアップを思い出すと、もっといいアップができたのではないかと、強く思うからです。

今まで、やってきた中や、見てきた中で特に思うことは、
「ウォーミングアップとトレーニングを明確にするべき」
ということです。

そんな考えを書いてみました。

 

野球では、ウォーミングアップがトレーニングを兼ねていることがよくあります。
指導者やトレーナーはそう思ってやらせていますが、やっている選手は、アップだと思ってやっていることがほとんどです。

では、なぜアップをするのかというと、「怪我の予防」と「ベストパフォーマンスをするため」だと思っています。
そのために必要なことは、まず、体温を上げることです。
体温が上昇することで体内の血液の循環が良くなり、酸素の供給がスムーズになります。
それにより、筋肉の温度も上がり、筋肉の柔軟性が高まります。
そこで、筋肉や関節を伸ばすことで、可動域を広げることができます。
筋肉の動きと神経のつながりを高め、反応を良くすることにもなります。
血流がよくなることで、脳も活性化します。

自律神経を整えることで、心理面でも試合や練習の準備をします。
集中力を高めるだけでなく、緊張感が過度にある場合はストレッチなどで緊張をほぐすこともできます。

一度、心拍数を上げておくことで、心肺機能を激しい運動に順応させることもアップでやらなければならないことです。

また、その日の体調を含めた、自分の身体をチェックすることもアップの重要な要素です。

ウォーミングアップが不足すると「怪我の予防」と「ベストパフォーマンスをするため」という、アップの目的を果たせません。
逆に、やりすぎて、疲れてもベストパフォーマンスは出しにくいので、やりすぎも良くないということです。

瞬発的な運動前には体温が低すぎたらパワーが発揮できないので体温を上げる必要があります。
逆に、体温が高すぎたら、早期に疲労してしまうので、持久的な運動前には体温を上げ過ぎないようにします。

それに対してトレーニングは、「競技力を高めるため」に行います。
スポーツをする上で必要な基礎的な体力に加えて、野球選手として必要な体力を強化することや技術を身につけることがトレーニングです。
ポジションにもよりますが、瞬発力や素早い動きができるよう、筋力や瞬発力を高めたり、呼吸、循環器系の働きを高める持久力のトレーニングも競技力を高めるためには大切です。

 

このように考えると、やっている選手が、どこまでがウォーミングアップで、どこからがトレーニングかを理解していないと、アップが十分だと感じている選手は体力の温存をしようとします。
そうなるとトレーニングの効果が十分に得られるか、わからなくなります。
選手それぞれが、そのメニューを何のためにやっているのか、理解することが重要です。

例えば、アップで行うアジリティのメニュー。
加速、減速、スピード、方向転換、身体操作などを高めるために行います。
そのため、いかに素早く身体を動かせるかという神経系の伝達を高めるためのメニューです。
高速で身体を正確に自由に動かせるようになるためのものですが、よく見るのが、アップの中に入っているので、ウォーミングアップの延長になっていることです。
効果的なメニューにするには、全力で動くことで、ゆっくりやってしまうと求めている効果が期待できないということです。

そうならないためには、ウォーミングアップとトレーニングを明確にするべきだというのが僕の考えです。
何のために何をしているのかを明確にするということです。

 

アップで、自分の身体と向き合わず、何も考えずにアップしていては、いつまでたっても自分の身体を把握できません。
大きな声を出させることを求め、身体を動かさせ、とりあえず走らせて温まっている状態にするというのでは、アップの目的を果たせるとは思えません。

大きな声を出さなくても心理面の準備を進め、自分自身で、練習や試合に対して準備できる選手に育てていくことが重要だと思います。

ひとりで、自分の身体と向き合いながら「怪我の予防」と「ベストパフォーマンスをするため」の準備ができるように導いていくことは、指導者が選手にしてあげなければならないことのひとつではないかと思います。