成長するのに大切な思考。

優れたスポーツセンシングを持った人とは、思考技術に優れた人のことです。

技術なので、投げるや打つといったような技術と同じで、無意識に落とし込んで、自動化された技術になるようにしなければなりません。
つまり、行動を決めるときに考えて決めるのではなく、自動化された脳が自然と行動を決めるようにすることが大切です。

優れたスポーツセンシングを持った人とそうでない人の違いのひとつである行動を決める思考について考えてみます。

 

スポーツセンシングのある人と、ない人の思考の違いのひとつに、「成長したい」「学びたい」という思考が先にくるか、「恥をかきたくない」や「自分をよく見せたい」という思考が先にくるかの違いがあります。

「成長したい」「学びたい」という思考のほうが強ければ、挑戦を喜んで受け止め、努力は成長へつながると考え、逆境に立っても批判を受けても成長につながると考えるので耐えることができます。
他の人の成功から学んだり、真似たりすることもできます。
根本にあるのが「成長したい」「学びたい」という考えのため、全てをどんどん吸収し、高いレベルへと成長していきます。

それとは反対に「恥をかきたくない」や「自分をよく見せたい」という思考のほうが強いと、失敗する可能性がある挑戦を避けたり、努力は実を結ばないと思ったり、諦めが早かったりします。
批判やネガティブな意見に対し、自分で考えずに同意してしまったり、他人の成功に焦りを感じます。
自分の評価を、「よく見られているか」「賢く見られているか」「成功しているのか」「バカに見られていないか」と考えてしまいます。

そうではなく、自分の評価は「まだこれから」と思い、努力によって変えられると考えることで、情熱を持ち練習やトレーニングを続けることができます。

行動の基準が「上手く見せること」ではなく「上手くなること」ということです。
上手く見せようと練習すると、「ミスをしない」ということを考えてしまうので、チャレンジすることをしません。
上手くなろうと練習すると、どうしたら成長できるかを考えるので、どんどんチャレンジできます。

例えば、プロ野球選手が行う、野球教室で、たくさんの選手がいるところで「誰か出てきて見本で投げてみて。それを教えるから」と言ったとします。
多くの選手は手を上げませんが、成長する選手は、上手い下手関係なしに手を上げます。
それは、「恥ずかしい」や「上手くできなかったらどうしよう」と思う以上に「上手くなれる」「直接教えてもらえる」といったような思考を持っています。

それは、学校の授業でも同じです。
例えば、数学の授業で、「誰かこの問題を前に出てきて解いてください」と言われたときに、わからない時こそ手を上げて前に出て、解くべきです。
そうすれば、自分のわからないところを、先生に教えてもらえるので、成長につながります。

 

このスポーツセンシングのある人と、ない人の思考の差はとても大きいと思います。

センスは、持って生まれた能力ではなく、家庭や環境などから、後天的に身につけた能力というのが僕の考えです。
この「成長したい」や「学びたい」と「恥をかきたくない」や「自分をよく見せたい」という2つの考え方も環境によって変わってくると思っています。

小さい頃から、いいプレーをしたときに「才能があってすごい」と褒め続けるのと「よく練習してすごい」と褒め続けるのでは違います。
才能や能力を褒め続けられると、その選手は、いいプレーができなかった時に「能力がない」「才能がない」というように感じてしまう傾向にあります。
そうすると、上手くいかないプレーが続くとチャレンジしなくなり、簡単にできることばかりやる傾向になります。
上手くいかないと楽しむこともできなくなり、どんどんやる気をなくしていきます。

それに対し、努力を褒められ続けると、上手くいかないときに、もっと努力をしようと考えます。
努力することに意義を感じるので、難しいことへもチャレンジし楽しむことができます。
チャレンジを楽しめるので、練習も続けられ、成長につながります。

このようにして環境によってセンスが磨かれていきます。

この2つの考え方は、評価に対する考え方も違います。
成長する人は、今までの自分と比較して成長していることを評価します。

それに対し、周りの人と比較して自分の評価を決めます。
これは大人になれば必要ですが、子供のうちは成長スピードにも個人差があり、たまたま良いライバルがいれば良いかもしれませんが、自分が成長しなくても周りよりも優れているから良いと考えてしまっては成長が止まってしまいます。

 

「相手がどう」と考える前に「自分がどうなのか」を考えることが大切で、自分の能力は自分自身の努力で変えていけると考えることが重要です。
もちろん、努力をしたからといって、イチロー選手や大谷翔平選手のようになれるかはわかりません。
しかし、自分の能力は、まだわからないと考えることで、練習やトレーニングを高い意識を持って、続けることができると思います。