ACLとMCL(前十字靭帯と内側側副靭帯)

先日、膝の前十字靭帯(ACL)再建手術の経過の確認で診察に行ってきました。
術後5年経ち、お陰様で全く問題なく、完治したと言えるくらい回復しました。(ドクターのお墨付きもいただきました)
肘も肩も手術したことがありますが、これも完治したと言っていいと思います。

野球選手でACLの手術を受ける選手はほとんどいませんが、サッカーやラグビー、バスケットボール選手などには多くいます。
特に女子サッカーや女子バスケの選手には、かなり多くの選手がACLの手術をしています。(高校生で3度手術している選手を見たことがあります)

野球選手は、トミー・ジョン手術と言われる、肘の内側側副靭帯(MCL)再建手術を受ける選手が多くいます。
最近では、大谷選手が手術をしました。
トミー・ジョン手術は内側側副靱帯を損傷した選手に対して、プロ選手のみならず若いアマチュア選手の間でも手術されるようになっています。

その膝のACLと肘のMCLの損傷や断裂について考えてみます。

 

ACLやMCLの損傷は、スポーツの問題のひとつだと思います。

ACLやMCLは、断裂してしまえば、自然に修復することはできないので、他の靭帯を移植する手術が必要になります。

あまりにも多くの選手が膝のACLや肘のMCL再建の手術をし、競技人生を短くしたり、引退に追い込まれたりしています。
そして、同じ選手が何度も同じ手術をしているという現状もあります。

しかし、ACLもMCLも、どちらも知識があり、予防の意識を持つことで、かなり防げるのではないかと思っています。(個人的には接触での怪我以外は限りなくゼロに近づくと思う。)

僕自身、ACLは断裂、肘のMCLは損傷していますが、予防という意識がなかった結果、そうなったと思っています。

今なら、知識が付き、どう予防すればいいのか、わかっているので、自信を持って傷めないと言えます。

ACLは、接触プレーでは、防げない場合もあると思います。
しかし、接触以外で傷めることは防ぐことができると思っています。僕が傷めたのもそうですが、多くが、止まる動作や切り返しや着地の時に傷めてしまいます。

野球選手の肘のMCLは、接触プレーで傷めるわけではなく、投げることによって傷めるのでこれは防ぐことができると思っています。

ACLを守るには、大腿四頭筋(前もも)とハムストリングスが重要になります。
大腿四頭筋が単独で収縮するとACLには、伸ばされるストレスがかかります。
これに対して、ハムストリングスを収縮させることで、ACLを助けることができます。
実際のスポーツ場面では、ストップ動作や切り返し動作で大腿四頭筋のみではなくハムストリングスも収縮させることで、膝関節は安定し、ACLにかかるストレスは減らすことができます。
特に、女子選手を見ていると、筋力が低い上に、ストップ動作の際にハムストリングスがうまく働かず、大腿四頭筋優位でストップする傾向にあるように思えます。
(野球の投手で、投球の際に、ステップした脚の膝が割れたり、グラつく選手も同じで、着地の時に、ハムが収縮していないから膝が安定しない。)
そのためには、大腿四頭筋とハムストリングスに注意を向けるだけではなく、そこが上手く機能するように、股関節のアライメントや動きに注意を払わなければなりません。

また、ACLが断裂したままプレーすると、半月板損傷も起きてしまうので、そのままプレーすることは、かなりのリスクがあるといえます。
競技レベルにもよりますが、半月板や軟骨損傷などの傷害につながるので、そうなる前に再建手術を受けることが大切だと思います。

 

野球選手が肘を守るためには、投球フォームと回内・屈筋群の収縮が重要になります。
この筋肉の収縮が重要とはいえ、小さな筋肉なので、あくまで投球は、腕や手に頼るのではなく、体重移動と身体の回転運動優位で投げることです。
極端にいえば、肘を使わないで投げたら肘を壊すわけがありません。
これは肩にも言えることです。
肘関節や肩関節の負担をどう減らしていくかを考えることが大切です。

とは言うものの、投球数が増えたり、それに応じた休息期間や、球速による負担の考慮、などがなければ、疲労の蓄積により、傷めるリスクは上がります。
疲労が蓄積されれば、柔軟性が落ち、可動域が十分に確保できず、フォームに問題が出ることが考えられます。
筋肉が働かなければ、関節に負担がかかります。

受動喫煙も血流を悪くするので、故障の発症要因になると言われています。

 

様々な方向からリスクを減らす努力をすることで、スポーツ選手の怪我を予防できると思います。
僕自身が、ACLやMCLについて、経験し、自分自身の身体を使って検証し、学んできた中で思うことは、もっと予防できるということです。
サッカーやバスケットボールの指導者なら膝のACLの知識。
野球の指導者なら肘のMCLの知識を持つことは選手のために重要なことです。
多少の知識があるだけでも、今よりも格段に選手の身体は守られるようになると思います。

 

ACLやMCLの損傷や断裂の予防についての話は、また、次回しようと思います。