練習すればするほど上手くなる?

よく「練習をすればするほど上手くなる。」「上手くなるには誰よりも練習しなければいけない」といったような話を聞きます。
それを信じて、休みなく練習したり、長時間練習するチームが多くあります。
本当に正しいのでしょうか?

そんな話を書いてみます。

 

もし、練習をすればするほど上手くなるのであれば、メジャーリーガーが日本人ばかりになるはずです。
日本人の練習量は世界的に見ても上位です。(トップと言いたいところですが世界のすべてを知っているわけではないので)
しかし、そうはなっていません。

僕は、小学2年から野球を始めましたが、高校に入るまでは、土日、祝日しかチームでの活動がありませんでした。
土曜日は学校があったのでチームの練習は14時から17時くらいまで。日曜日は朝から夕方まででした。
高校に入学するまでの練習時間は週に10時間以下くらいだったと思います。

メジャーリーガーを多く輩出しているドミニカでは1日やっても3時間。
アメリカの環境を聞いたときも同じような話を聞きました。

練習を多くやったからといって上手くなるわけではないということです。
海外の選手が証明してくれています。

アメリカや中南米、欧州では、投げ込みや走り込みのような「○○込み」というようなことをやりません。
それをやらなくても上手くなれるし身体は鍛えられるということです。

 

プロ野球のキャンプが4勤1休や5勤1休が中心で3勤1休の場合もあります。
時間も14時くらいには終わります。
アメリカメジャーリーグのキャンプは11時にはチームの練習が終わると聞きました。

身体もできていて、体力もある選手が集まるトップのチームがこのくらいです。
身体も体力も未熟な子供たちは当然それ以下で練習を行うべきだと思います。

身体に大きな負荷をかけてやる練習は、少なくとも身体の成長が止まって大人の身体になってからだと思います。

本来、指導者はブレーキ役になるべきです。年齢が下がれば下がるほどその役割は重要になります。
成長期の子供たちにとって重要なことは、適度な運動と食事と睡眠です。
学生は特に、食事と睡眠が重要だと思っています。

食事は、生きるための栄養に加え、身体の成長に必要な栄養も摂取する必要があるのでとても重要になります。

睡眠は、成長ホルモンが寝ている間に最も多く分泌され、十分な睡眠時間を確保できなければ、疲労も回復せず、心身ともに成長の妨げになるということは言うまでもないと思います。
朝練や夜遅くまで練習があるために、睡眠時間を削るということは、当然故障のリスクも上がり、集中力も高い状態にならないので、練習してもなかなか身になりません。
練習だけでなく、授業中などの学校生活にも支障をきたすことにもなります。

適度な運動という部分では、成長度合いにもよりますが、可動域や柔軟性、瞬発力や俊敏性のような脳や神経や筋肉の連動を高めるためのトレーニングを適度にすることは重要ですが、骨がまだ成長している子供に対して、筋肉の量を増加させることが目的のトレーニングは必要ないと思っています。
身体をでかくして、筋力をつければ、試合での勝利は近づくかもしれませんが、成長期の子供たちにとって、もっと重要なことは、身体の成長を促し、将来を見据えることです。
筋トレや過度な食事トレーニングで早く身体を作るのではなく、少しでも身長を伸ばす努力をすることです。

過剰なトレーニングを肯定する意見はアマチュアの指導者から良く聞きますが、トレーニングの専門家や医療関係者から聞いたことはありませんし、科学的なデータも見たことがありません。

中身が濃く、質の高いトレーニングをすれば、それだけで選手たちは相当に疲労します。
その疲れた筋肉や関節をさらに酷使することで、故障につながったり、動きの質を低下させます。
動きの質が低下した動きを身体が覚えれば、パフォーマンスの低下になります。

成長のスピードは人により異なります。
なかなか伸びない時期もあります。
その時は、練習が足りないと、過度の練習をやらせることは逆効果になってしまうことがよくあります。
そういう時こそ、好きなことをして、好きなだけ食べて、ゆっくりと休むことを勧めるべきです。
自分から「上手くなりたい」「練習したい」と思わせることが指導者の役割です。
練習が義務になってしまっては、いい練習はできません。

 

「練習量と実力は比例しない」ということを認識する必要があると思います。
選手と指導者が一緒になり、少ない時間で効率的に上手くなるにはどうしたらいいのかを考え続けることで、創造力が育ち、チャレンジ精神が身につき、自分自身で成長できる選手に育っていくと思います。