明確な目標・目的のある練習。(投球時の体重移動)

僕は以前から上手くなりたければ、明確な目標・目的を持って、それを理解した練習やトレーニングをすることが大切と言ってきました。
練習メニューやトレーニングメニューをどのように決めるのかを、投手の投球を例に、もっと具体的に説明しようと思います。

投手のスキルには、フィールディング、けん制、スタミナ、リカバリーなど、投球以外にもたくさんありますが今回は、投球のパフォーマンスを向上させるということに焦点を絞り考えていきます。

投手がパフォーマンスを向上させるには、以下のことがひとつでも向上したら必ずパフォーマンスが向上します。
しかし、これには条件が付きます。
条件とは、ひとつを向上させたときに他がマイナスにならなかったらということです。
(簡単に書きましたが、実際はこれがかなり難しい。マイナスを考えられるのは大切な能力)

今回はそのマイナスは頭から外して話を進めます。

投球パフォーマンス向上に必要なこと

  1. 体重移動の速さの向上。体重移動の方向の向上。
  2. 前足(踏み出した足)の着地の安定。
  3. 身体の回転速度の向上。
  4. 腕と肩甲骨(腕と体幹)の協調。
  5. 支点からの距離をできるだけ離したリリースポイント。
  6. フォームの再現性の向上。
  7. 力の伝達の向上。

僕が投手の練習メニューやトレーニングメニューを決めるときに必ず意識していることです。
この中からどこをターゲットにするのかを決めて、練習やトレーニングを考えていきます。

今回は上記の「1・体重移動の速さの向上。体重移動の方向の向上。」を例に説明したいと思います。

投球において、体重移動(重心移動)はとても重要です。
球のスピードには、体重移動の速さが大きなウエイトを占め、打者が感じる球威やコントロールには体重移動の方向が大きく関わってきます。

先ず、体重移動の速さを向上させることを考えてみます。

速さなので、小学生の算数でやった「は・じ・き」を思い出してください。

速さ = 距離 ÷ 時間

つまり、より長い距離をより短い時間で移動できれば速度が上がるということです。

そのためにはどのようにしたらいいのかを考えなくてはなりません。

メカニック(投球フォーム)を変更する。
瞬発力(スピード)を向上させる。
筋力(パワー)を向上させる
コンディションを整える。

やり方はたくさんあります。

例えば、投球フォームを変える、と考えたときに、理想とするフォームを決め、そのフォームを目指すにはどうするのが良いのか、さらに考えます。

身体操作を身に付ける。
投げ込みをする。
体重を上げる。または、減らす。
筋力をつける。

これもいろいろと考えられます。

さらに細かく考えていくことが必要になります。
例えば、身体操作を身に付けるには、柔軟性が必要だったり動作の教育が必要だったりします。
そのためには「じゃあこの練習やこのトレーニングをやろう」と決まるわけです。

そうなって初めて明確な目標・目的のあるトレーニングになります。

体重移動の方向を良くするのも同じような思考で考えていくことが重要になります。
どのようにしたら投球方向に体重移動できるのかを考え、やるべきことを決めていきます。
いくら体重移動の速度が上がってもその方向が投球方向と違っていては十分に体重移動の速度を活かすことができません。
それだけでなく、打者が感じる体感速度やコントロールも体重移動の方向が影響します。

体重移動の速さと方向を向上させると考えるだけでも数えきれないほどの選択肢があります。
その無数にある選択肢から的確に今の自分に合った練習やトレーニングを選ぶことが上達につながります。

どんどん上手くなる選手はこれを当たり前に行っています。
当たり前なので深く考えなくてもできています。
それだけではなくこの作業を反対からもできます。
どのようなことかというと、練習が決められているときになにげなくその練習をするのではなく、この練習は自分のここを向上させるためにすると決め、だからこうする。と自分から明確な目標と目的を設定して練習します。
それはキャッチボールのような単純な練習でも同じようにやるべきことを明確にしています。
このような思考の差から同じ練習を与えられても得られることに差がついていきます。
野球のようなチームスポーツでは、練習メニューが決められていることが多いので、自分からメニューを決められることも、決められたメニューの中で自分なりの目標や目的を決めて練習することも、どちらも重要になります。

今回は、投球における、体重移動についてを例に、話を進めましたが、練習だけでなく、普段の生活から上手くなるためにはどうしたらいいかを考える習慣を持つことが重要です。
一生懸命、練習やトレーニングをする前に明確な目標と目的を持つことにより、同じ練習メニューやトレーニングメニューをしても得られる成果が変わってくると思います。