危険・怪我の回避能力を育むには。

前回の投稿(ラグビーから学ぶ危険・怪我の回避。)で、いざというときに危険や怪我から身体を守るのは、自分自身の危険予知能力と身体能力であるという話をしました。
それを身につけるためにトレーニングをする必要があると言いましたが、トレーニング以外でも、遊びや大人の接し方など、育った環境によって身についていきます。
それを身につけるにはどのような環境で子供たちに接するのが良いのか、僕なりの考え方を書いてみました。

 

危険予知能力を高めることや危険を回避できるようにするには、経験を積むことは重要なことです。
だからといい、致命傷になるような怪我につながったり、命の危険にさらすようなことは避けなければなりません。

大人が危険だと思うことを子供はやろうとしますが、どこまで見守り、どこから止めるのかという判断はとても難しいことだと思います。
その状況によって臨機応変に対応しなければなりませんが、僕の持っている基準は、本人が危険を認識しているかしていないかということです。

本人が危険を認識している場合は、多少の危険は見守ります。
子供は、危険を認識していても、好奇心旺盛であり、わざと危険な遊びや危険な行動をしようとします。
リスクのあることは、チャレンジ精神を刺激し、スリルを味わうことで、より面白くします。
そのような行動は、面白いだけでなく、危険性のある遊びの対応を学び、経験的に危険を予測し、怪我を回避できるようになっていきます。
子供が危険を感じていることに、あえて、挑戦することで、自分の身体のコントロール方法を身につけていきます。
例えば、高いところから飛び降りて、足がしびれたり、痛みを感じるような経験をすることで、自分が飛び降りることができる高さを感覚的に覚えていきます。
「ここまでなら飛べる」「これは怪我をしそうだからやめよう」という判断をできるようにし、自分の中の安全基準を記憶していきます。

それに対して、本人が危険を認識できていない場面では、大人が注意を促す必要があると考えています。
例えば、夢中になってボールを追いかけている子供は、そのまま道路に飛び出していきます。
車にひかれるかもしれないということを認識できていないとそうなります。
このような場面では、大人が止めに入る必要があります。
本人が危険を認識できているかは、個人差があり、脳の成長段階よっても異なります。
大人になるにつれて、危険を予測できるようになっていきます。
それだけでなく、経験や知識、身体能力によっても危険性が変わってきます。
同じ状況でも、本人の精神状態や疲れて集中力がなくなっているような場面では、危険を認識できなくなるので注意を促す必要があります。
大人はこれらの状況を見極め、判断することが重要です。

注意の促し方としては、声を上げて、叱るというやり方も、その時は効果があるかもしれませんが、重要なことは、本人が危険性を理解し、自らの行動を変えられるようになることです。
「叱られるから止める」「怒鳴られるから止める」では、危険性の本質的なことを理解できたのではなく、叱る人や怒鳴る人に危険性を感じて止めるだけです。

 

危険予知能力を育むには、大人が見守ることで、子供が主体性を持って、危険に挑戦していくことです。
ここで重要なことは「主体性を持って」ということです。
「ここからから飛び降りろ」と言われて飛び降りるのと、自分のチャレンジ精神から高さを決め、飛び降りてみるのとでは、まったく違います。
スポーツに当てはめると、走り込みをやらされるのと、自分からどのくらい走れるのかをチャレンジしてみるのでは違います。
自分がボールをどのくらい投げたら、肩や肘などの身体が危険なのかを知るには、自分の判断で強度や球数を決めて、自分の身体と向き合うことです。
徐々に負荷を上げていくことが重要で、ここに試合で勝つことや、誰かと比較するということを考えては正確な判断が難しくなってしまいます。
自分の身体がどこまでやったら危険なのかを知るには、誰かにやらされるわけでもなく、自らチャレンジするということを何度も経験し、覚えていくということです。

 

ちょっと高い場所に登ったら「危ないから下りてきなさい」
転ぶ前から「転ばないようにね」
少し危険なだけで「危ないからダメだよ」、など
その反対に、高いところを怖がっているのに「怖がるな」
適度を超えて「もっとやれ」
少年野球のピッチャーに「投げ込め、走り込め」など

危険から守ることも練習をやることもどちらも大切ですが、自力で問題を解決し、直観を磨いていき、大人の干渉がなくても行動を自制できるようにならなければ、危険予知能力と身体能力は、身についていかないので、怪我を防げません。

子供を育てるということは、主体性を持って、様々なことに挑戦し、成功と失敗を多く経験し、そこから学んでいくことが必要です。
そこには、莫大な時間と周りの大人の我慢と根気がなければなりません。

大きな怪我は避けなければなりませんが、小さな怪我は多少は覚悟の上で危険回避能力を身に着けることを優先することが、将来、大きな怪我を防ぐことに役立ちます。

大人が何でも先回りして子供の危険を取り除いてしまうのではなく、こんな危険が予測できるということを認識させる方が、長い目で見たときに子供のためになるのではないかと思います。