ピッチャーの心拍数

僕は現役時代、練習時も試合時も心拍計を着けたままプレーをし、心拍数のデータを集めていました。
ただ、腕に着けるタイプなので、研究機関にあるほど精度の高い機械ではないため、急な心拍数の上昇時には、どうしてもかなり低く出てしまいます。
それを踏まえて見ていただけたらと思います。

それでも野球のプレー中の心拍数のデータが、なかなかないので参考にはなると思います。
心拍数なので個人差はありますが、このデータを参考にして、練習やトレーニング等に役立てていただければと思います。

また、先発ピッチャーの立ち上がりの対策を僕なりに考えてみたので参考までに見ていただけたらと思います。

それぞれの状態においての心拍数は次の通りです。

・普段のピッチング練習。

終始120前後くらい。

リリーフで1イニング投げたときの心拍数を見てみると
リリーフ、1イニング

矢印が試合のマウンドです。

リリーフ、1イニング、最終回

山が2つあるのは、ブルペンでの投球練習と試合です。
実際は、急激な心拍数の上昇時は低く出てしまうので、ブルペン145以上。試合175以上くらいになっていると思います。

緊迫した試合だと、マウンドに上がりプレーボールをしたときには、プレッシャーや緊張によるストレスだけで、心拍数が普段のピッチング練習より50~60くらい高くなることがわかります。

ここで注目してほしいのは、赤マルの部分です。
試合で投げる前のブルペンの段階で1回心拍数が上がっていることです。
リリーフピッチャーは試合が進んでいる緊張感の中で、短い時間で準備をするのでブルペンで心拍数が上がります。
僕はここが重要であると思っています。

先発の場合は

赤マルの部分のように、初回に急激な心拍数の上昇が起こってしまいます。

大事な試合やプロ野球の試合で先発投手が初回に本来のピッチングができないことが多いのには、心拍数が関係している可能性はあるのではないかと考えました。
初回に急な心拍数の上昇が起こったときに自分の身体を扱いきれずに、自分のパフォーマンスを発揮することが難しくなることは想像できます。
高い集中状態を作り出すのも、脳を上手く使いこなすのも、身体をコントロールするのも難しいように思えます。

2回からは、本来のピッチングに戻ることが多いのは、初回に心拍数が一度上昇していることを経験しているので、自分の身体を扱いやすくなりピッチングが安定しやすくなるということも考えられます。
また、リリーフピッチャーに立ち上がりが悪いと言われる選手がいないことと、立ち上がりが悪いと言われるピッチャーもリリーフで投げると初めから本来の投球ができることからも心拍数が関係している可能性はあると思っています。

そこで先発ピッチャーが初回の急な心拍数の上昇に対応するために、リリーフピッチャーの登板と同じように試合前に心拍数を上昇させてから試合に入ることが大切だと考え、実践してみました。
やり方は後ほど説明します。

そのため、以下の試合は、赤マルの部分(初回とその前)がリリーフで投げた時と、似た形になっています。

・社会人野球、オープン戦、先発。7イニング。

青い矢印がマウンドに上がっている時です。
社会人野球のオープン戦では、マウンドに上がっただけでは心拍数はあまり上がりません。

・社会人野球、地方大会、先発。7イニング。

社会人野球都市対抗予選、先発、7イニング。

都市対抗予選は、社会人野球で、1番緊張感があると言われています。
余談になりますが、目安の消費カロリーも1520カロリー。
この日は、4500カロリー以上を摂取し、4リットル以上の水分を取って、試合前の体重に戻りました。
改めて、先発ピッチャーの過酷さを感じました。
もっとプレッシャーがかかるプロ野球の先発ピッチャーは本当にすごいと思いました。

 

それでは、僕が取り入れた登板前のアプローチを説明します。
野球では、心拍数を重要視するということはあまりしませんが、オリンピックのメダリストは競技前に心拍数を上げて競技に入っていきます。
フィギュアスケートの羽生結弦選手
レスリングの選手たち
陸上の選手たちは、それを実践しています。

僕が取り入れたやり方はレスリングの選手を参考にしました。
先発の時は、ブルペンでピッチングを終えた後に行います。
そのやり方は
前後ジャンプ→腹筋(クランチ)→左右ジャンプ→腹筋(膝さすり)→バービージャンプ
これを20秒ずつ続けて行います。
1分40秒で心拍数が180前後まで上がります。
(上のデータでも先発時の初回の前に行い、急な心拍数の上昇時にグラフには正確な数値が出ず、130ちょっとくらいしか上がっていないことになってますが、実際は180前後まで上がっています。)
その後、5~10分後にマウンドに上がれるように逆算して行います。

全部のメニューを股関節を動かす意識で行います。ジャンプは膝を曲げるのではなく股関節から曲げて足を引き上げるジャンプです。
股関節を動かすことは全身の血流をよくする狙いがあります。
レスリングの選手や陸上選手が試合前に抱え込みジャンプをしているのをよく見ますがそのような狙いがあるのではないでしょうか。

 

立ち上がりが良くない選手は、投球フォーム等の技術的な要素もあると思いますが、心拍数にもアプローチしてみる価値はあると思います。
心拍数には、個人差があるので、自分に合ったやり方を見つけてほしいと思います。