野球選手の肘の故障。

今の野球界の現状は、小学生からメジャーリーガーまで、肩や肘を故障する選手がたくさんいます。
僕自身も、右肘を2回、右肩を1回手術をしています。
その間に、自分の身体やトレーニングを勉強して、初めて自分の投げ方、身体の使い方が関節に負担をかけていて、自分の身体が壊れるべくして壊れたことを知りました。
投げ方と身体の使い方を変えたら肩、肘の張りが減り、痛くなることがなくなりました。

今まで経験したことや理解したことを少しでも伝えることができたらと思います。

 

僕は、怪我と故障は違うと考えています。
打球が当たったり、接触した時に負傷するのが怪我です。
繰り返し投げ続けることにより肩や肘に痛みが出るのを故障だと思っています。
故障に対して、予防の意識を持つことで、減らすことができると考えています。

故障を減らすには、関節に負担が少ない身体の使い方、フォームを身に付けることです。
(しかし、このフォームは、抑えることと必ずしも同じとは限りません。)

僕が、手術をした時に、どれも手術が決まるのは、CT画像やMRI画像だけではなく、投げられるか投げられないかで決まりました。
試合に出ている時は、リハビリでと言われ、試合で投げられないと言うと手術へとなります。
これは、トミー・ジョン手術と言われる肘の内側側副靱帯の再建手術も同じです。

実際に病院に診察に行ったときの話で、僕と、一緒に診察に行った別の選手の内側側副靱帯の損傷は、MRIの画像上は、同じくらいと言われました。
しかし、僕は、手術をせずにリハビリで、一緒に行った別の選手は手術になりました。
それは、今、どのくらい投げることができているのかなどの問診やストレステストなどで決まります。

僕の内側側副靱帯は、手術が適用と言われてもおかしくない状態だったとも言えると思います。
でも、僕は、トミー・ジョン手術を受けたことがありません。
画像上の損傷が同じくらいでも、投げられなくなったら手術をしようとなります。

つまり、手術をするかしないかは、レントゲンやMRIの画像ではなく、投げ方で決まるということが言えます。

その投げ方をもう少し細かく説明すると、投球動作中の関節にかかる負担を減らせるか、ということです。
関節に負担がかかるタイミングでそれを守る筋肉を使えるかどうかでもあります。

筋肉とは、収縮しやすい角度と収縮しにくい角度があり、筋肉が働きやすいフォームで投げることが、肩や肘の故障を防ぐためには重要になります。

投球動作中は腕が高速で振られているために、その一瞬に、意識して筋肉に収縮を入れることは、難易度が高すぎます。
だから、練習やトレーニングで、この瞬間に、ここの筋肉を働かせるということを、身体に覚えこませ、無意識に、確実に、できるようにしなければなりません。

これを教育する練習やトレーニングをしっかりしないと、同じ人が、何度も故障することになってしまいます。
その反対に、これを身体が覚えた選手は、なかなか故障をしません。

内側側副靱帯自体の強度を考えたら、1球で断裂してもおかしくない強度しかないために、しっかり筋肉に守ってもらわなければいけません。

痛くなりノースローにして様子を見ているだけでは、投げ始めれば、また、痛くなるだけです。
休むだけではなく、フォームを見直して、肘や肩に負担がかからない、身体操作を身につけなければ、その場しのぎにしかなりません。
同じ人が同じ箇所を故障し続けている現状を考えると、故障した後の治療ばかりに目がいき、予防の意識が足りないと感じます。

1度でも痛くなったことがある選手は、フォームを見直す必要があると思います。

とはいえ、ピッチャーとは、バッターを抑えることが、目的であり、点を与えないことが仕事です。
怪我をしないことは、目的ではなく、怪我をしないことが目的なら、軽く投げ続ければ良いということになります。

手術も、ただ投げられるようにするのではなく、以前のパフォーマンスを取り戻すため、または、もっとパフォーマンスを向上させるために選択します。

そこが難しいところだとは、思っています。

しかし、僕の個人的な意見では、

パフォーマンス向上 < 怪我の予防

であってほしいと思っています。

まずは、故障しない身体操作、フォームを理解した上で、バッターを抑えることを考えてほしいと思います。

これは、僕の経験から、打たれて試合で負けることよりも、リハビリで試合に出られないことの方が断然、面白くないし、苦しいからです。

なかなかプレーしているときは、抑えることしか、考えられないとは思いますが、身体を守る予防の意識を忘れないでほしいと思います。