甲子園を目標にする危険。

甲子園が目標の野球少年を見かけますが、僕は、これは危険だと思っています。
もちろん、僕も、甲子園を目標に高校野球をしていましたし、多くの野球人の目標になっているので、すべてが危険と思っているわけではありません。

甲子園が最大の目標で、その先を考えられていない選手が危険だと思っています。
そして、そのような選手が非常に多いと感じています。

そこで僕なりの考えを書いてみました。

 

甲子園を最大の目標にし、そこにゴールを設定するのは、とても危険だと思っています。
それは、高校野球が終われば目標を失い、燃え尽き症候群になってしまう恐れがあるからです。

現に、高校野球での、燃え尽き症候群は問題に上がってきます。

燃え尽き症候群から、引きこもりやうつ症状になることもあります。
10代で目標がなくなるのは大きな問題であると思います。

自分が生きていく目的を持ち、なぜ野球をやっているのか、なぜ甲子園を目指すのか、などを考えた上で、甲子園を目標にするのは問題ありません。
むしろ素晴らしいことだと思います。
これは甲子園が、目的に向かっていくうちの、ひとつの通過点でしかないからです。

しかし、甲子園が最終目標で、その後のことを考えていないのは避けなくてはならないことだと思います。

これは受験で、入ることが目標で、入学したら、そこから何をしたいかがわからない、というのと同じです。
本来は、その後に続く何かがあるはずです。

燃え尽き症候群になる原因が、本人の目的や目標設定にあるだけでなく、指導者やまわりの大人にも、原因がある場合もあります。
選手に対して、必要以上の厳しい練習内容や指導、長時間の練習をさせる、などがあります。
また、指導者や保護者などから、能力以上の期待をかけられたり、勝つことへのプレッシャーを過剰にかけられることなども考えられます。
難しいのは、個人差がかなりあるということです。
同じ練習や同じ接し方でも、プラスになる選手もいれば、マイナスになる選手もいるということです。

指導者は、選手が練習中や試合中に大きなストレスを受け続けないように、選手それぞれの適切な練習内容や目標を設定し、その目標に向かって、リフレクションを繰り返しできているのかを、選手と一緒に考えることが重要です。
そのためには、指導者と選手が信頼関係を築き、コミュニケーションをしっかり取ることが必要です。

リフレクションを繰り返せる選手とは、
今の行動を客観的に見て、振り返ることができる。
次の試合でのプレーをイメージし、今日の練習がどうだったのかを振り返り、明日に繋げていく。
最後の夏の大会での自分をイメージし、今日を振り返り、次に繋げる。
さらには、野球人生やこれからの人生を考えて、今日の練習や行動がどうだったのかを振り返り、行動を再構築していく。
毎回、このようなことをできる選手のことです。

これは競技力を上げるために必要な能力であると同時に、生きていく上でも必要な能力だと思います。

今までの行動を振り返り、どうやったらもっとよくなるのかを考えて、チャレンジすることは、明日へのモチベーションを生み出し、充実した人生にするための方法でもあります。
長く競技を続けている人の共通点でもあるように感じます。
一流選手や長くプレーしている選手の、やり抜く力や継続する力は、このような思考から生まれています。
決して根性や忍耐力で長く競技や練習を続けている訳ではありません。

指導者はリフレクションを繰り返せる選手に育てることを忘れてはいけないと思います。

 

野球の競技人口が減っている今、早い段階でのリタイアは、野球の発展にもマイナスになります。
野球から燃え尽き症候群をなくす努力を、みんなでしなくてはならないと思います。
高校生で野球を辞めるということは、野球を始めて、長い選手でも10年くらいです。
それで、もうプレーしないということになっては、とても寂しいと感じます。

せっかく大きなバイタリティーを持って、甲子園を目標に頑張れたなら、そのバイタリティーを次の目標にも向けるべきです。
甲子園を最終目標にするのではなく、人生の通過点という考えを持つことです。
例え、高校で野球を辞める選手でも、高校野球は通過点です。
野球で培った能力で、人生を豊かにしていってもらいたいです。