投球に使う筋肉。

筋肉を鍛えるには、闇雲にウエイトトレーニングをして筋肉を鍛えるだけでは、パフォーマンスを上げることは難しいと思います。
動作の中で、どの筋肉がどのように使われているのかを理解する必要があります。
それが分かって、初めてどこの筋肉を鍛えなければならないのかが分かると思います。
野球のピッチャーが、投球する際に使う筋肉を簡単にですが、順番に説明していきたいと思います。

 

右投げのピッチャーを例に説明していきます。
投球動作は、大まかにいうと、右足に体重を乗せ、左足を前に踏み出し、左肩を前に出していきます。
そこから投球方向に重心を移動しながら、体幹が捻られ、身体を回転させることで、そのパワーが上体、肩、肘、そして手へと伝わってボールを投げます。

投球では、下肢の筋肉はほぼ全て使われますが、特に使われる筋肉をみていきます。
投球で初めに力を生み出すのは、軸足となる右足です。
右大殿筋や中殿筋、内転筋群、右ハムストリングス(大腿二頭筋、半膜様筋、半腱様筋)、ふくらはぎ(右下腿三頭筋)、などを使い、投球方向に力を生み出します。
軸足で生み出した力によって、重心を移動し、その力を前足となる左足で受け止め、身体を回転していきます。
その時に働く筋肉は、膝を安定させる筋群で、大腿四頭筋およびハムストリングス(大腿二頭筋、半膜様筋、半腱様筋)と、膝が体幹の回旋する力によって外側に倒れたり流れたりしないように支える左の大殿筋や中殿筋、内転筋群です。

その後、外腹斜筋などの体幹の筋。
大胸筋や、大円筋、前鋸筋、広背筋などの肩回りの筋肉。
上腕三頭筋などの上肢の筋。
屈曲回内筋群(特に尺側手根屈筋尺骨頭、円回内筋)の前腕の筋へと順に伝えられていき、ボールをリリースします。

 

これらの筋肉の動きを以前説明した、伸張反射や反動動作を使う(ウエイトトレーニングとパフォーマンス。)ことで、より大きな筋肉や腱のパワーを引き出します。

それだけではなく、投球では「捻り」を上手く使うことも重要なテクニックです。
特に、下半身と上半身の捻じれを上手く作り、より大きなパワーを発揮します。
軸足で力を生み出し、並進運動をし、それを回転運動に変換する際に、先に下半身を回転し、上半身との捻じれを作り、一瞬遅れて上半身が回転するようにします。
この一瞬の時間差があることで捻じれが生じ、より大きなパワーを生み出すことができます。

いくら筋肉を鍛えていても、このような伸張反射などの反動、身体の捻りなどを上手く使えなければ、速い球を投げることも、狙ったところにコントロールよく投げることも、再現性高く何度も繰り返し投げることもできません。

伸張反射や反動、身体の捻りなどを上手く使うためには、筋肉を上手く使うことが必要です。
どこの筋肉にどのタイミングで力を入れればいいのか。
どこの筋肉にどのタイミングで力を抜けばいいのか。
これを理解して、コツを掴むということが必要です。
「もっと力を抜いたほうがいい」と言われる選手の多くは、力を入れるべきではない筋肉に力を入れているから言われているのだと思います。
実際は力を入れて力まなければ、パワーはでませんが、固めるべきではない筋肉を固めては、投球に必要なパワーは発揮できません。
また、しなやかな動きもできません。

 

投球のコツとしては、伸張反射や反動、身体の捻りなどを上手く使い、大きな力を生み出し、関節を上手く固めることで、その力をロスなく末端(ボール)まで伝えていくことだと思います。
このテクニックを向上させながら、さらに筋肉を大きくすることができれば、投球のパフォーマンスは上がっていきます。

ただ闇雲に練習やトレーニングをするのではなく、投球のどこの動作を向上させるために、どこの筋肉を鍛えるのか、などと考えることが上達のスピードを早めていきます。

今回は、野球のピッチャーを例に話しましたが、多くのスポーツに共通することだと思います。
その競技に使う動きが、どのような動きで、どのような筋肉を使うのかを把握することが、トレーニングを始める前に考えなければならないことだと思います。