前回の投稿で「センスのある人の記憶」(スポーツセンシング、記憶)について書きました。
センスのある人とない人の記憶に、大きな差があるということは、感じることができたのではないでしょうか。
記憶だけでなく、「感じとる感覚」にも、非常に大きな差があります。
今回は「センスのある人の感覚」について考えてみたいと思います。
優れたスポーツセンシングを持った選手の感覚は想像以上です。
おそらく、この投稿を読んでくださっている方たちの想像をはるかに超えているのではないかと思います。
優れたスポーツセンシングを持った選手は、とんでもなく感覚が研ぎ澄まされています。
プロ野球選手のバッターを例に説明すると、
一流のバッターは、バットにかなりのこだわりを持っていますが、木製バットの素材をアオダモは柔らかくしなりやすく、メープルは硬くてしなりにくいと言います。
しかし、あんなに硬い木製バットがしなったとしても1ミリにも満たないのではないかと思います。
それをよくしなるやしならないと感じています。
それだけでなく、ボールを打ったとき、バットによって、バットとボールがくっついている時間が違うという表現もします。
アオダモは柔らかいので、バットとボールが接地している時間が長く、その時に後ろの手で押し込む、などと言います。
バットとボールがくっついている時間なんて、ほんの一瞬でしかありません。
そのくらい感覚が研ぎ澄まされています。
その研ぎ澄まされた感覚は、バットを通しても感じられているところからも、バットと一体になっているとも言えると思います。
ピッチャーでは、リリースの直前で「これはボールが抜ける」や「これは打たれそうだ」というのを感じ、ボールを押さえつけたり、直前で対応したりしています。
ゴルフでも、プロゴルファーがスイングの途中に打ち損ねるのを感じとり、スイングを微妙に変化させたりする、と聞いたことがあります。
陸上選手は風を感じて走ると多くの選手がコメントしています。
水泳でもプールと一体になっている感じと言います。
優れたスポーツセンシングを持った選手がプレー中に感じていることは、一般人の想像をはるかに超えています。
一流ピッチャーが「今日はフォームを変えて投げた」ということがよくあります。
しかし、はたから見たらまったく違いがわかりません。
感覚が優れているので、ほんのわずかな違いをとても大きな違いに感じています。
これはバッターも同じです。フォームを微調整したと言っても、ほとんどの人は、気がつかないくらいわずかな違いです。
でも、同じレベルかそれ以上のセンスを持っている人は、その違いに気がつくことができます。
わずかに変わったタイミングや動きを見て、ピッチャーはバッターの狙い球を予測したり、バッターはピッチャーの球種やコースを判断しています。
ピッチャーは、例えば「チェンジアップを投げる時、着地の瞬間に膝の力を抜く」「スライダーを投げる時、身体の開きを一瞬我慢する」などといったような、それぞれ独自の感覚を持っています。
しかし、どんなに映像で見比べても同じフォームで投げているようにしか見えません。
誰も気がつかないくらいのほんのわずかな違いで球種を投げわけています。
もし、これが、ピッチャーよりもバッターの感覚(センス)の方が優れていれば、フォームから球種がわかってしまいます。
例えば、ボクシングでは、相手がパンチを打ってくる時のわずかな初動や雰囲気を感じとり対応しています。
決して右のパンチを右手の動きだけを見て対応しているわけではありません。
卓球も、球だけを見て、返してるわけではなく、相手の身体の動きやラケットの振り始めのわずかな違いを感じとり対応しています。
サッカーの一対一の場面でも、わずかな重心の移動を感じとって相手を抜いていったり、逆に、わずかな動きからこれはフェイントだと感じ、フェイントにかからずにボールを奪ったりします。
人それぞれ感じとれる感覚の違いがあるので、もしそれが、本人は感じとれないわずかな差が、相手には感じとれる差であれば勝負は見えています。
前回の「記憶」と合わせて考えると、優れたスポーツセンシングを持った人は、感覚が研ぎ澄まされ、そこから仕入れた情報をどんどん記憶していくので、同じことをしていてもどんどん成長していきます。
感じとる力が違うので、わずかな動作を修正し記憶していくので、教えられたことを、自分の感覚に変えて記憶します。
トレーニングでも、感覚に優れているので、細かく意識できたり、より正確な動きができるだけでなく、動作を記憶する能力もあるので、効率よくトレーニングできます。
「なんでわからいの」「なんでできないの」というのは、スポーツセンシングが低いからです。
でも、スポーツセンシングは、鍛えることができる能力なので、鍛えることで、人の可能性は広がっていくと思います。
「記憶」「感覚」だけでなく他にも得られることが多くあるので、スポーツセンシングを身につけることは、とても重要だと思っています。