やる気。

プロ野球選手とアマチュア選手の差のひとつに、やる気を生み出す能力の差があると感じます。
この能力を身につけている選手でなければ、上のレベルまで上がっていけないのが、現状だと思います。
そう考えると、投げるや打つという技術と同様に、身につける努力をする必要があるのではないでしょうか。
これは、本人が努力をするというよりも、親や指導者やまわりの大人が、どう身につけさせるかを考え、導いていくことが大切だと思います。

 

練習を、子供がゲームをやめられなくなるようなのと、同じ状態にすることが重要です。
大人で言えば、ギャンブルやたばこ、お酒、などをやめられなくなっている状態です。
それと同じように、仕事がやめられないという人も何人も見てきました。
周りから「やめた方がいいよ」「やりすぎない方がいいよ」と言われても、やめられない。
プロ野球選手も「そんなに練習をしないほうがいい」と止められている選手を多く見てきました。

「気がついたらまたやっていた」「いつの間に繰り返していた」というような、ハマっている状態に、どのようにするのかを考えてみました。

 

まず、覚えておかなければいけないことは「練習しろ」と言うことは、逆効果になるということです。
「練習しなさい」と言われれば、言われるほど、やりたくなくなるのは、人間の脳の仕組みです。
それが、厳しく言われたり、怒られたりとなれば、なおさらです。
「なんでやる気を出さない」「やらないお前が悪い」と怒るのは、恐怖により脳が委縮したり、反抗的な態度を引き起こすことになり、「やる気」を阻害してしまうことにつながります。

では、どのようにすることがよいのかと言うと、「練習すればこんないいことがある」ということを思わせるということです。
練習することにより、成長できたり、試合に勝利するといったような成功体験を感じさせるということです。

例えば、勉強をさせたいときに、親が「勉強をしなさい」と言い続けるよりも、親が「勉強してよかった」「勉強は楽しい」「たくさん勉強できるのが羨ましい」と伝えるほうが効果的です。
親が勉強している姿を見せることも重要です。
子供は、親の言うことは聞かなくても、人間の脳には、親の行動は無意識に真似してしまうという仕組みがあります。
姿勢や歩き方、しぐさが親と似てしまうのはこのためです。

仕事も「この仕事は楽しくて、意味もある」「世のため、人のためになる」と本気で思って働く方がやる気がでます。

「もっと練習をしておけばよかった」よりも「もっと練習を楽しめばよかった」と思わせるように導く方が、選手は伸びると思います。
楽しく練習できなければ、なかなかスキルも身につきません。
苦痛に耐えて練習するようでは、競技自体を長く続けるのも難しくなります。

いくら「練習をしろ」と言ったところで、選手に課題を抱えている自覚がなく、改善や向上しようという意思がなければ、どんなに選手のためを思い、言ったところで、選手には響きません。
選手が、自ら「ここを改善したい」「ここを伸ばしたい」と思わなければ練習の質は上がりません。
選手がどうなりたいのか、どんな課題を感じているのかを把握し、それに沿った練習を提供することで、選手は、やる気になります。

上手くなって褒められたり、いいプレーができたり、勝負に勝つ、という快感や、ワクワク、ドキドキした快感が、やる気につながります。

夢中で練習した。→いいプレーができた。
これを繰り返すことで練習にハマる状態を作り出せます。

練習をやらずにはいられない選手は、次の練習をやろうと決めると、こう練習したら上手くなるんじゃないかと、ワクワクしてきます。
そうなると、次の練習までの、私生活のレベルも上がります。
そして、グランドに入り練習すると、ホッとして、落ち着きます。
その状態を作り出せると、ハードな練習も、きつく思わずに、いつまでも練習できます。
練習が終わってホッとするのではなく、練習を始めると落ち着くのが、プロ野球の一流選手です。
夢中で練習した。→いいプレーができた。
を作り出せるので、それがいいスパイラルになり、練習がやめられなくなります。

 

やる気とは、自らの行動と、そこから得られる快感の結びつきによって出てきます。

練習をすすんで、繰り返し行える選手にするには「褒めて練習するのを待つ」ということが必要ではないかと思います。
大人が選手のためを思って「練習しろ」と言ったところで、選手のためにはならないということです。
まずは楽しいことだけをやらせる。
そこから少しずつ、成長する楽しみや、勝負に勝つ楽しみを教えていく。
さらに上を目指す選手には、大舞台になればなるほど、もっとワクワク、ドキドキするということを伝えていく。

これは、スポーツに限らず、勉強や他のことでも、人が成長するには大切なことであり、なるべく早い段階で、スポーツや勉強、習い事を通じて身につけたい能力だと思います。

人間のやめられなくなる仕組みを理解することで、お酒やたばこ、ギャンブル、薬物などにハマるのではなく、趣味や仕事、スポーツなどに夢中になれるように自分をコントロールできるようにすることは人生を充実させることにつながるのではないかと思います。