普通ってどういうこと?

「そんなの普通だよ」とか「当たり前でしょ」とか「常識でしょ」というような言葉をよく耳にしますが、人によって、普通や当たり前や常識は違うことがあります。
人間は誰しも、今まで自分がやってきたことを普通と思い込んでいます。
それなので普通というのは人によって違います。
そんな普通とはどういうことかということを考えてみました。

 

プロ野球選手の普通と思っていることとアマチュア選手の普通と思っていることは異なります。
プロ野球選手になりたければプロ野球選手の普通を知り、実行することが近道となると思います。
ですが、難しいところはアマチュア選手は自分のやっていることが普通で当たり前だと思い込んでいて、プロ野球選手も自分のやっていることが普通で当たり前だと思い込んでいるので、そこが交わることがなかなかないということです。
プロもアマチュアも同じような練習をしていますが、個人個人のその練習に取り組む姿勢はまったく違ったものであると感じています。

例えば、キャッチボールと言う小学生でもやるような練習のひとつ見てみても、プロ野球選手はそのキャッチボールの中で自分のフォームがどうなってるのか、自分のボールがどうなってるのか、今日の自分の身体がどうなってるのか、などを確認しながらキャッチボールの中でも自分のパフォーマンスをどうやったらあげれるかを一球一球考えながら投げています。
これは特別なことではなく普通のことなのでキャッチボールをやるときは毎回このような意識を持って行なっています。

プロの選手にとって、グランドにいるときだけでなく普段の生活からどうやったら野球につながるかを考えることは普通のことであり、当たり前のことです。
僕は現役でプレーしてた時、食事を好き嫌いで食べるということはありませんでした。
栄養を考えながら何が自分の身体にとって必要なのかを考え、それに沿って食事を選んでいました。
これは特別なことではなく、そうやって食事を摂ることが普通であり、当たり前でした。
普通のことなで、頑張って食事をするといったような感覚もないし、それで楽しいのと言われても何とも思いませんでした。
それが普通なので、そうすることが当たり前であり、習慣なので何とも思わないということです。
普通とか当たり前とはそういうものです。

食事だけでなく生活の中でもこのようなことは多くあります。
普通で当たり前のことなので習慣になっているということでもあります。
プロの選手とアマチュアの選手では、持っている習慣が全く違います。

 

これは、野球選手だけに言えることではなく、何の分野でも同じではないかと思います。
優秀な人とは、普通や当たり前のレベルが高いということです。
レベルの高い普通や当たり前を作り上げていくことが上のレベルに行くことになるのではないかと思います。

そのためには、自分の普通や当たり前が、実は、普通や当たり前ではないのではないかと思うことが必要です。
そして自分が優秀だと思う人が、どのような習慣を持っていて、どのような生活をしているのかを知ることはとても重要なことです。

僕の考え方は、普通や当たり前、常識を疑えというわけではありません。
今までのやり方を否定するということでもありません。
普通や当たり前、常識を何も考えずに信じるのではなく、なぜそれが正しいのかを理解しておくべきということです。
そうやって根拠を考える習慣を持つことで、普通や当たり前、常識というものが、少しずつレベルの高いものに変わっていくのではないかと思います。

 

僕が多くの選手を見てきて感じることは、普通や当たり前のレベルを上げていくことなしに、高いレベルに近づくことは難しいということです。
しかし、トップ選手は自分のしていることが、特別ではなく、普通であり当たり前だと思っているので、アマチュア選手も同じだと思っています。
逆にアマチュア選手も自分のしていることが、普通であり当たり前だと思っているので、トップ選手も同じだと思っています。
このプロの選手とアマチュアの選手の普通や当たり前をチューニングすることができれば、アマチュア選手にとってとても価値のあることになると思います。
野球では、プロアマの問題があったりとプロの選手がアマチュアの選手を指導する機会がなかなかありませんが、この投稿から気づきを得る選手がひとりでも出てくれればと思います。

肩痛は休んでいるだけでは完治しない。

野球では1度肘や肩を痛めた選手が何度も同じ箇所を痛めてしまっています。
逆に、1度も肘や肩を痛めることなく長くプレーしている選手も多くいます。

痛くなるには痛くなるような原因があり、その原因にアプローチしなければまた同じように痛くなる可能性があります。
肘や肩が痛くて投げられない選手は休んでいるだけでは投げられるようにならないという話をしていこうと思います。

 

整形外科での診察では投げられないほど肘や肩を痛めているわけではないという診断結果が出ているにもかかわらず投げたら肘や肩が痛くなってしまい思ったように投げられないという選手がいます。
投げたら痛くなり、また休んである程度状態が良くなり、投げるとまた痛くなってしまう、と言ったことを繰り返しています。

このような選手の多くが自分の肘や肩など痛みのある部分を痛めていると思い込んでいます。
病院でもう投げても大丈夫だと言われても本人は病院の診断が正しくないと思っているような選手すらもいます。

現状を見ていると、肘や肩が痛くなった選手はただ休んだだけではまた投げると痛くなってしまうことがほとんどではないかと思います。
投げて肘や肩が痛くなったのなら休むだけでは完治させることは難しいということです。
痛くなるということは痛くなるような身体の機能をしていたり、痛くなるようなフォームで投げています。
そこにアプローチしなければなりません。

 

肘の関節はそんなに強度があるわけではないと思った方が良いと思います。
肘に負担のかかる投げ方をすれば簡単に痛めてしまいます。
投げるたびに肘が痛くなってしまうという選手も少なくないのではないかと思います。
そのような選手は肘が痛くなった時に、ただ休んでいるだけでは、また投げれば痛くなってしまいまいます。
肘に負担のかかっているその投げ方自体を修正する必要があります。

 

肩というのは野球をしていない一般の方でも肩こりになったり腕を上げるのが辛いというような症状を持っている人も多くいます。
四十肩や五十肩と言われるように肩の機能というのは低下しやすい部分でもあります。

ボールを投げるという動作はそのような方よりもはるかに多く肩を使うので当然、肩を痛めないように予防のためのトレーニングをしたり、肩のコンディションを整えるために気を配らなければなりません。

投げて肩が痛くなってしまう選手は身体の機能を整えたり、身体の動かし方を変えたり、投球フォームを見直したりしない限りは投げればまた肩が痛くなってしまいます。
ただ何もせず休むだけではなかなか完治させることは難しいことです。

段階としてはまずは身体機能を整えるようにします。
猫背になっていたり肩が前に出ていたりしていないのか。
僧帽筋など肩回りの筋肉を緩んだ状態にすることができているのか。
筋肉を緊張させることなく、背骨の上に頭がしっかり乗っているような適切な姿勢を作れていなければなりません。

次に肩回りの細かい筋肉(インナーマッスル)を中心に筋肉をうまく連動させ、しっかり力が入り肩関節を固定することができるようにします。
それができていればそこから動きの中でも同じように、肩関節を固定し、腕を肩甲骨に引きつけておくことができるようにしていかなければなりません。
このような身体機能があり、基本的な身体操作ができなければ肩に負担がかからない適切なフォームで投げることは難しいことです。

ここまでできて初めて、肩に負担がかからない適切なフォームを身につけることができる土台ができたことになります。
ここからフォームを追求し、自分に合った肩に負担のかからない適切なフォームに変えていかなければ痛みを完全になくすことはできません。

 

今回は野球選手の肘や肩の話をしてきましたがこれは他のスポーツであったりスポーツをしてない一般の方の膝や股関節、腰痛、肩痛などにも当てはまる考え方です。

最終的には痛くなってしまった原因である動きを改善しなければ、また同じように痛くなってしまう可能性は高く残ってしまうということです。
ただ何もせず休んで痛みが無くなるのを待つだけでは完治させることは難しいので、痛みの原因となっている部分にアプローチしてみてほしいと思います。

「なぜ結果がでなかった?」を考える。

スポーツをしていれば、結果が出る時もあれば、出ない時もあります。
野球では、打たれることもあれば、抑えることもあります。
バッター側からみれば、打てることもあれば、打てないこともあります。
野球だけでなくすべての競技に言えることです。
サッカーでもパスが通る時もあれば、パスが通らないこともあります。

結果が出た、出なかったをどう分析して、次につなげていけるかが大切になってきます。
今回は、プロ選手の考え方なので、いつもよりも少しレベルを上げた、話をしていこうと思います。

 

思い描いていたような結果が出なかったり、ミスをしてしまったりした時に、それがなぜそうなってしまったのかを考えなければなりません。
その根本にあるのが、行動を起こす前の物事の捉え方の部分、つまり、「こうしよう」というイメージを創る部分でミスをしてしまったのか、その行動自体にミスがあったのかを見極めることが重要です。

例えば野球のピッチャーが打たれてしまった時に、自分が思った通りのボールを投げて打たれてしまったのか、思った通りのボールが投げれずに打たれてしまったのかを見極めます。
もし狙った通りに投げていたにも関わらず打たれてしまったのなら、それはそのボールを選択したこと自体がミスをしていたことになります。
投げる前のサインを決めた時点で、コースなのか球種なのか、抑えることができると思って創ったイメージが良くなかったということです。

物事をどう捉えるかのインプットのミスと自分の身体をどう動かすのかのアウトプットのミスで分けなければいけません。

「失投した」と言われるような、狙ったところに投げることができずに打たれてしまうのはインプットのミスというよりも、アウトプットの部分でのミスです。
そもそものフォームが悪かったり、タイミングがずれてフォームが乱れたりといった部分の不具合から生じます。
そうではなく、狙っとところにイメージしたボールを投げられたにも関わらず打たれてしまったのなら、それは相手との駆け引きや抑えるイメージをしたそのイメージが良くなかったということです。

バッターで言えば狙ったところにしっかりバットを出せているにもかかわらず打ち取られてしまったのか、そもそも技術が足りずにバットを出そうと思ったところにしっかりとバットを出せなかったのかこれを見極めなければなりません。
バットを狙ったところに出して、捉えたと思ったにも関わらず打ち取られてしまったとしたら、それはアウトプットのミスではなくインプットの部分でミスをしているということです。
バッターのインプットの部分でのミスというのは目から得た情報を脳が錯覚し、ずれてしまっているということです。
ここが改善できなければいくらバットを振って狙ったところにバットが出せるようになっても打てるようにはなりません。

サッカーで言えば、例えばパスを出した時に、そもそもそのパスを出そうとした場所が悪かったのか、もしくは技術的に足りずにそこにパスが出せなかったのかを考えなければならないということです。
パスをする技術が足りなかったのかインプットの部分、つまり想像力や創造性、発想と言われるようなイメージの部分が足りなかったのかを考えなければなりません。

 

上のレベルを目指すのなら、この物事の捉え方の部分とその動き自体、両方を向上させる必要があります。
動きのミスは目で見ればわかるので、すぐに見つかりますが、物事の捉え方の部分は目では見えないので、指導をする場合には、選手との会話の中から見極めていかなければなりません。

何の競技でも相手とのレベルがかけ離れてしまっては物事を捉える部分(インプット)のミスなのか、その動作(アウトプット)でミスをしたのかの判断は難しくなります。
しっかりした技術、つまりアウトプットができなければ物事の捉え方でミスをしているのかが曖昧になります。

極端な例で言えば100キロぐらいのボールしか投げられないピッチャーがプロ野球選手と対戦した時に、配球が悪いから打たれたというのは通用せずに単純に投げる技術が足りないから打たれてしまったのであるということです。
どんなに物事の捉え方の部分が優れていたとしてもアウトプットの技術が低すぎては抑えることは難しいということです。

 

物事の捉え方のレベルを高めようと思ったら、身体を動かす技術が高くすることが大切です。
この相乗効果でスポーツのパフォーマンスは上がっていきます。

上手くいかなかった時にその原因がどこにあるのかを正確に把握し、そこに対してアプローチできればどんどん成長していきます。
どうしても目に見えるフォームや動きの部分ばかりをトレーニングしてしまいますが、高いレベルになればなるほど物事の捉え方の部分が重要になってくるので、早くからイメージを創るレベルを高めるための創造力や感覚を磨いていくことが重要だと思います。

ノースローの期間を作る。

野球というスポーツは肩や肘に大きな負荷がかかるスポーツです。
そのため、ボールを投げないノースローの期間を作ることも選択肢のひとつです。
12月に入り、どこのチームでも冬練と言われるような冬のトレーニングの期間に入っていると思います。
小学生のチームでも走り込みをしたり、トレーニングの期間にしたりしています。
そこで気をつけなければいけないことはオーバーワークやオーバーユースによる怪我や故障です。
日本での野球選手の肩や肘の故障についてのデータはなかなか見ることがありませんが、アメリカのMLBが調査したアメリカの青少年のデータを元にノースローの期間を作るメリットについて説明していきたいと思います。

 

アメリカでは若い野球選手の肩肘の故障についての研究を数十年かけて行なっているため細かなデータを見ることができます。
そこで出されているデータの中に、年に8ヶ月以上競技野球をした選手はそれ以下の選手に比べ、手術を必要とするような肩や肘の故障をする確率が約5倍高いというデータがあります。
そのためアメリカの少年野球では投手は少なくとも年に2~3ヶ月は投球を控え、少なくとも年に4ヶ月は競技野球での投球を避けるようなガイドラインをMLBが出しています。

日本のプロ野球の投手でさえ、シーズンが終われば、オーバーホールという身体を休める期間を設けています。
アマチュア野球の選手には、冬の期間でもピッチングをしたり、打撃投手をしたりするような選手を多く見ますが、ノースローの期間を作ることも必要なことです。

僕は多くのアマチュア野球選手を見てきましたが、多くの選手が登板過多による、肩や肘への疲労を持っています。
この疲労をしっかりとるということは肩や肘の故障のリスクを減らす意味でも重要なことです。
MLBが出しているデータの中に、青少年の野球で腕の疲労感が常にある選手はそうでない選手より約36倍肩や肘の故障の可能性が高いというデータもあります。
そのようなデータからも肩や肘の疲労をしっかり取ることが重要であることが分かると思います。
腕の疲労感がない状態でプレーすることで、故障のリスクをかなり減らせるということが言えます。

 

冬の期間は身体をいじめ抜くことが重要ということをよく聞きますが、怪我をしてしまってはマイナスになってしまいます。
またその怪我が長引けば、選手生命にも関わります。
身体にかける負荷は適度でなければなりません。
その適度を見極めることは簡単なことではありませんが、自分の身体と相談し疲労のコントロールに努めることも大切なことです。

パフォーマンスを向上させるには負荷をかけなさすぎではいけません。
しかし、負荷をかけなさすぎる以上に負荷をかけすぎることの方がいけないと思っています。
最も避けなければならないことは、怪我や故障で野球ができなくなることだからです。
自分にとって最適な負荷をかけることができるということもその選手が持つ能力のひとつです。

 

ピッチングをしなくてもできる練習はたくさんあります。
ピッチングだけでなく野球から離れても、できることはたくさんあります。
野球は寒い時にやるには向いていないスポーツです。
子供たちの成長や発達を考えた時に、一年中野球をやらせよりも他のスポーツをやらせたり野球とは違った運動をやらせることの方が得られることが多いのではないかと思います。
野球の動きだけでなく様々な動きをすることで、子供の運動能力の向上に役立つのではないかと思います。

道具を大切にする。

僕は、小学生から中学生、高校生、大学生、社会人野球の選手、またプロ野球の選手と多くの野球選手を見てきました。
その中でも圧倒的にプロ野球選手が一番道具を大切に使っていると感じました。
ほとんどのプロ野球選手はスポーツ用具メーカーから道具を頂いています。
グローブが欲しいと言えばグローブをもらえ、バットが欲しいといえばバットをもらえ、スパイクが欲しいと言えばスパイクがもらえます。
いつでも道具がもらえる状況にも関わらず、とても道具を大切にする選手がたくさんいます。
そんな道具の話をしていきます。

 

プロ野球選手の中にも道具を大切にしない選手もいますが、その割合はアマチュア選手よりはるかに少ないと思います。
イチロー選手がとても道具を大切にしていたことは有名です。
イチロー選手に限らず僕の見てきた多くの日本人のトップ選手はとても道具を大切にします。
それは、プロ野球選手のグローブやスパイクを見てもらえればとても綺麗だということからもわかります。
プロ野球選手の多くが毎日使う道具を大切にしています。

道具を大切に扱ったとしても、それだけで野球が上手くなるわけではありません。
道具を大切に扱わないメジャーリーガーもいます。
しかし、毎日どんな状況だろうと自分の道具を大切にするということを貫き通すということは、自分自身を成長させることにはつながります。

 

プロ野球選手でも思い通りにいかない時に、グローブを投げたりバットを投げたりすることもあります。
ゴルフのトッププレイヤーが思い通りになかった時に、ゴルフクラブを投げたり叩きつけたりすることもあります。
テニスのトッププレイヤーが思い通りにならなかった時にラケットを投げつけることもあります。
このような行動をフォローするつもりはありませんが、アマチュア選手がうまくいかなかった時に照れ隠しや周りの目を気にして道具に当たるというのとは違います。
これは選手によっては道具に当たることによって気持ちを切り替えるためのテクニックのひとつとして行なっている人もいます。
人生をかけて競技に打ち込み、練習やトレーニングを一生懸命に積んできて、良いプレーができるという自信があるにも関わらず、自分のプレーが上手くいかず、自分に腹が立つということも分かります。
しかし、僕の考え方はプロフェッショナルである以上、常に子供たちに見られていると自覚して行動をとらなければならないと思っています。
道具に当たるというようなことは、子供たちが真似していいことではありません。

 

子供たちには自分の使う道具は大切にして欲しいと思っています。
それは野球が上手くなるためではなく、自分を成長させるために必要なことだからです。

「今日ぐらいいいか」ということが積み重なるとすごく大きなことになります。
この「今日ぐらいいいか」「まあいいか」ということを自分自身が許していたら、そのような人間になってしまいます。
少しの妥協も許さないということができるようになると自分の目標に間違いなく近づくと思います。

また道具を買ってもらえるというのは当たり前のことではありません。
道具を大切にするということは道具を買ってくれた人への感謝の気持ちでもあります。
それだけではなく、例えば、グローブを見ても、100年前のグローブ、50年前のグローブ、20年前のグローブ、現在のグローブと、道具メーカーの努力により、どんどんグローブもいいものになっていっています。
グローブにはグローブを作るメーカーや職人さんの思いも詰まっているということです。

 

毎日自分の使う道具を綺麗にし、大切にするという小さな積み重ねから得られることは多くあります。
自分を成長させるためには、自分と向き合う時間を作ったり、感覚を研ぎ澄ますということも必要です。
グローブ磨いたりスパイクを磨いたりバットを大切にするということで自分と向き合う時間となったり感覚を研ぎ澄ますことにつながります。
道具を大切にするというところから、自分の成長につなげるだけでなく、道具だけではなく自分や他人、周りの環境など多くのモノを大切にするということにつなげてほしいと思います。

重心のコントロール。

スポーツ動作において重心のコントロールの優劣が、パフォーマンスの優劣に直結するとも言えると思います。
つまり、運動能力に優れた人とは、重心をコントロールする能力に優れている人とも言えます。
そんな話をしていこうと思います。

 

重心とは重さの中心のことを言います。
重さがあるものには重心があるということです。
当然、人の身体にも重心があります。
重さの中心なので何か動きをするたびに前後、左右、上下にも重心は移動するということになります。
しかし、いちいち意識して、重心をコントロールしているという人はいないと思います。
歩くときに、重心を右足に移して、左足に移して、前に移動して、などとは考えません。
人間は無意識に重心をコントロールしバランスを保っています。

 

運動能力の優れている人とは、この無意識に行う、重心のコントロールに優れている人と言っても過言ではないと思います。
走る動作に優れた人とは、重心を速く移動できる人のことです。
バランスが良いというのも重心を上手くコントロールできている人のことです。
物を投げるというのも重心移動(体重移動)で生み出した力を投げるものに上手く伝えられている人と言えます。
野球では、体重を乗せて投げるという表現をしますが、まさしくこれが重心移動で生み出した力をボールに伝えているということです。
ボクシングなどの格闘技でパンチ力があるという人も同じで、重心移動で生み出した力(体重)を相手に上手く伝えている人です。

重心を上手くコントロールすることで走りを楽に速くすることができたり、投球や打撃において大きな力を生み出すことができたりします。

 

さらに、重心をコントロールすることで、姿勢が良くなります。(姿勢が良いから重心がコントロールできるとも言えるのかもしれません。)
良い姿勢と言うのは、重心が良い位置にあり、なるべく筋肉に頼らずにいられるということでもあります。
姿勢が良いと、筋肉に頼らずに力を出すことができ、筋肉の疲労を少なくできるのでエネルギーを温存することにもつながります。
逆に、重心の位置が悪いと筋肉を過剰に使ってしまい疲労しやすくなるだけではなく、筋肉の過緊張は故障のリスクを高めてしまうことにもなります。
スポーツ動作において、できるだけ筋肉を緊張させないようにリラックスした状態を保つことは非常に重要なことです。
身体に無駄な力が入ったりすることでパフォーマンスを落としてしまうだけでなく、故障につながってしまいます。

筋肉がリラックスした状態を作れる重心の位置は、動き出しの反応にも関わってきます。
例えば野球では、盗塁で良いスタートを切ったり、守備で打球に対して早く反応したり、打撃でもピッチャーの投げてくるボールに早く反応するためには重要なことです。
ピッチャーのクイックモーションを速くするのにも重心位置は大切です。

大きな力を出すのにも、素早く動くためにも、重心を上手くコントロールするということは、重要なことです。

 

重心の位置は、ほとんどが無意識にコントロールされていますが、特に重要になってくるのが、頭の位置です。
頭は、人間の1番高いところに位置し、重さがあります。
頭は重いので、頭の位置によって重心の位置は大きく変わってきます。
無意識に、頭の位置がどうなっているのかを把握し、頭の位置を上手くコントロールできている選手が、重心のコントロールに優れている選手とも言えると思います。

赤ちゃんや子供は、大人に比べて身体に対して頭の重さの比率が高いので、重心のコントロールによってバランスを保とうとします。
大人は筋力がある分、筋肉を使ってしまいます。
肩こりなどは、その典型だと思います。
幼少期から悪い姿勢で生活したり、外遊びの経験や鬼ごっこのような走り回るような経験が少ないと重心のコントロールが上手くできなくなっていってしまいます。

幼少期の運動経験は重要ですが、ある程度年齢を重ねてからは、どのように意識したら良いかと言うと、無意識に適切な姿勢を保てるようにし、骨盤をどう移動するかを考えることが良いのではないかと思います。
無意識に適切な姿勢を保てるようにするためには、先ずは身体機能を整える必要があります。
例えば、猫背であるならば、猫背を直すようなトレーニングが必要です。
頭の位置を背骨の上にできるようにしなければなりません。
初めは意識して姿勢を正さなければならないかもしれませんが、それが無意識にできるようになるまで落とし込まなければなりません。

あとは、骨盤をどう移動するかを考えれば良いと思います。
スポーツ動作において、どこに重心があるかを正確に把握することは難しいことなので、僕は、走る動作や投げる動作では、骨盤=重心と意識していました。
例えば投球動作において、重心移動を考えた時に、骨盤をどう移動するかということを考えます。
骨盤を投球方向に大きく速く移動することができれば、 投球パフォーマンスに大きな影響を与えることができます。
走る動作でも同じです。
骨盤の移動を意識できれば、腰が引けたり、腰が落ちたりといったことは起こりにくいのではないかと思います。

 

重心を上手くコントロールすることができれば、パフォーマンスにもつながります。
特に子供のうちは、この重心のコントロールということにフォーカスしてみるのも将来、役に立つかもしれません。

考えてプレーする?考えないでプレーする?

前回、「論理と感覚。」の話をしましたが、どちらもスポーツには大切な能力です。
考えてプレーするのと考えずに直感でプレーするのをどう使い分けるかの話をしていこうと思います。

 

論理的に考えてプレーするということは、今までの経験や知識の中から行動を考えていく。
つまり、記憶したものを並べ替えたり組み合わせたりしているということなので、その能力は記憶に大きく左右されます。
それなので、今までに経験したことがないことやイレギュラーなことが起こると混乱してしまったり、答えを出せなくなってしまいます。
考えてプレーすることばかりだと創造力に欠けてしまい、瞬時に判断することが難しく、プレーのスピードも上がりません。
まだ野球のピッチャーのような自分から動けるような競技では、なんとかなるかもしれませんが、野球の打撃や守備もそうですが、サッカーやラグビーのような常に目の前で起こったことに反応していくような競技では、対応できません。
相手選手の能力も様々で、目まぐるしく変わる状況の中で最適なプレーを選択し決めていくのは、直感に頼らなければなりません。
だからといって、何も考えずに本能だけでプレーしていても、同じ問題を繰り返したり、悪い癖、悪いパターンなどを改善することができないので、両方を上手く使い分けなければなりません。

 

具体的には、
どうしたら上手くなれるのか、成長できるのかを論理的に考えて、フォームを調整したり、練習やトレーニングを行っていきます。
反復することで、段々と考えずにできるようになっていきます。
考えずに無意識でその動きができるようになると、素早く行動に移せるようになるので、パフォーマンスが上がるということになります。
それだけでなく、考えることを止めることで、創造力が働き、感覚は研ぎ澄まされ、直感的な判断で行動することができるので、コツを掴んだり新しいひらめきがあったりします。
この直感で得た創造やひらめきを再び論理的に考えていきます。
直感で得た創造やひらめきだけでは、それが良いのか、悪いのかが分からず、それを評価することができません。
起こったことを評価するのは、論理的に考えることをしなければならないので、論理的に考えて、評価することが必要です。
スタートは、考えることからでも直感で行動することからでも構いませんが、そこから、論理的と直感的を上手く組み合わせながら、何も考えずになんとなくプレーしているレベルを上げていくことがパフォーマンスを上げていくことにつながります。
ハイパフォーマンスは余計なことを考えていない夢中になっているときに発揮されます。
直感と論理の相乗効果を生むことが、パフォーマンスを高めるために重要なことです。

 

指導者は、選手を指導することやアドバイスをすることで、選手が直感を磨くための材料にしてもらい、感覚やコツを掴めるように導いていくことが大切です。
それには、選手が自分の理想と考えている動きと実際の動きの違いをどの程度理解しているのか。
指導者の理想としている動きと選手の理想としている動きとがどの程度同じか。
指導者が言っていることをどの程度感覚に落とし込むことができているのか。
などをコミュニケーションを取り、お互いに共通の認識を持ち、論理的に説明するだけでなく、感覚を伝えるなど選手によって、接し方を変えていかなくてはなりません。
その選手が動きを覚えるだけでなく、感覚やコツを掴むところまで落とし込むことができればパフォーマンスは上がっていきます。
この感覚やコツが掴めなければ、いくら頭で分かっていても、論理的に説明ができたとしても試合でのパフォーマンスは上がりません。
フォーム分析や身体について詳しい専門家やトレーナーが高いパフォーマンスを発揮できるわけではないことからも分かると思います。
多くの指導者は考えさせたり、フォームや動きを教えようと試行錯誤しますが、なかなか選手の創造力や感覚、コツを掴む能力を高めようとはしません。
実際に重要な能力は、効率的に感覚やコツを掴む能力です。

 

選手にとっては論理的に考えるということは、感覚やコツを掴むための手段にすぎないとも言えるのかもしれません。
考える、考えないというのを上手く使い分け、レベルアップにつなげていってほしいと思います。

論理と感覚。

スポーツ選手には、試合や練習、トレーニングなどを行う時に、頭で考えて行動に移す選手と、考えずに感覚や本能に任せて行動する選手がいます。
僕は、この考えて行動するのも、本能や感覚に頼って行動するというのも、どちらも重要なスキルだと思っています。
そんな頭の使い方を考えてみました。

 

頭で考えて行動するというのは、問題を整理することで、仮説を立て、記憶したもの(経験や知識)を並べ替えたり組み合わせたりして行動を決め、それを行動に移していきます。
言葉を話したり、理解して論理的に説明したりする時にも、頭で考えています。
筋道を立てて考えるので、様々なことが複雑に絡み合っていることでも、ひとつずつ整理していくことによって、問題への理解を深め、仮説を立てることで行動を決めていけます。
これは、問題解決や情報の整理など、様々な場面で役立つスキルです。

考えずに感覚や直感、本能に任せて行動するというのは、前置きや仮設などを立てることなく、無意識に行動を決めていきます。
なんとなく決めるということです。
実は、普段の生活のほとんどは特に考えずに行動を決めています。
これは、幼少期から当たり前に身につけているやり方で、素早く行動に移したり、アイデアを出すときに役立つスキルです。
子供は、今の興味だけで行動します。
なぜそれをするのかなど一切考えません。
考えないので、言葉にするのではなくイメージを創ったりもします。

 

この2つのスキルはどちらも大切なのですが、
選手によって考えるのが優位な選手。
直感や本能優位な野性的な選手。
論理と感覚をバランスよく使う選手。
などそれぞれです。
これが選手の個性であり能力、人格、プレースタイルなどにも現れます。

当然、教え方も変わってきます。
考えるのが優位な選手に「ギュッとためてパッと投げればいい」と言ったところでなかなか伝わりません。
逆に、本能でプレーするような選手にロジックを細かく説明してもなかなか理解できません。

 

スポーツ種目や同じ野球でも投手と野手では、その重要度も変わってくると思っています。
野手は投手に比べて、考えずに感覚や直感、本能に頼ってプレーすることが求められます。
投手は情報を整理したり、自分のタイミングでプレーできるのに対して、野手は投手の投げてくるボールを打ち返したり、飛んできた打球に素早く反応してアウトを取ったりと、目の前で起こる出来事に素早く反応して行動に移さなければならないからです。

だからといい、野手は考えて行動するというスキルが必要がないのかというとそうではありません。
逆に、投手は、考えずに感覚や直感、本能に頼るスキルが必要ないのかというとこれも違います。
どちらも重要なスキルですが、比重が違うということです。

 

多くの指導者は、本能でプレーするよりも考えてプレーすることの方が重要であると考えているように感じます。
自由な発想で、ひらめきを大切にするよりも、学校のテストのように答えはひとつで、教えたことを忠実にできるように型にはめるような教え方をする指導者が多いことからも、考える選手は、頭脳明晰で成功確率も高いと考えているのではないでしょうか。

しかし、僕の経験では、プロ野球選手やそれぞれの競技のトップ選手を見ると、それが、必ずしも正しいとは言えないと思います。
なぜなら、何を考えているのかわからないような、感覚でプレーしてるような選手が多くいるからです。
トップ選手は、直感的に決める決断が的確で、高い判断レベルを持っています。
さらに、プレー中は感覚を研ぎ澄まし、その一瞬に持っている力を総動員するような選手ばかりです。

 

この2つの頭の使い方を同時に発揮することはできません。
選手は、場面場面で、考えて動くか、直感や本能で動くかを選択します。
多くの選手は無意識に選択してしまっています。

この選択が的確でなければプレーに支障が出てしまう可能性があります。
例えば、内野手が打球を捕り、1塁にボールを投げる時には、考えずに直感や本能で投げることが理想です。
そこに、投げる途中に、「腕をこう動かして」や「暴投しないように丁寧に」などと考えてしまっては、暴投の確率は上がってしまいます。

 

問題点を解決するには、考えるというのは、とても重要です。
しかし、考えるというのは、今までの経験や知識の中から行動を考えていくので、今までにしてきた動きしか選択できません。
新しいものを生み出したり、新しい発見をすることには向いていません。
論理的に考えたり、データを集めて正確な分析をすることなどが、前例のない問題を解決する過程にあると思いがちですが、前例のない問題を解決するのは、直感的な判断によって生まれるひらめきです。
思考に思考を重ねて脳が一杯一杯になった後、リラックスした状態の時や環境が変わった時などに、潜在意識に埋もれている何かがつながり、直感としてひらめきます。
何かをひらめくというのは、ひらめきやすい状態というものがあり、そういう状態を意識して作り出すことが本能や直感という感覚を高めるスキルと言えます。
このスキルを磨くためには、常識や先入観を頭の中から排除し、考えることを止めなければなりません。

 

論理的に考えることも重要ですが、直感や感覚でプレーすることも重要です。
指導者は選手の個性や考え方、プレー中の頭の使い方などを認識した上で、どう接するのが良いのかを考えていく必要があるのではないかと思います。

投球に使う筋肉。

筋肉を鍛えるには、闇雲にウエイトトレーニングをして筋肉を鍛えるだけでは、パフォーマンスを上げることは難しいと思います。
動作の中で、どの筋肉がどのように使われているのかを理解する必要があります。
それが分かって、初めてどこの筋肉を鍛えなければならないのかが分かると思います。
野球のピッチャーが、投球する際に使う筋肉を簡単にですが、順番に説明していきたいと思います。

 

右投げのピッチャーを例に説明していきます。
投球動作は、大まかにいうと、右足に体重を乗せ、左足を前に踏み出し、左肩を前に出していきます。
そこから投球方向に重心を移動しながら、体幹が捻られ、身体を回転させることで、そのパワーが上体、肩、肘、そして手へと伝わってボールを投げます。

投球では、下肢の筋肉はほぼ全て使われますが、特に使われる筋肉をみていきます。
投球で初めに力を生み出すのは、軸足となる右足です。
右大殿筋や中殿筋、内転筋群、右ハムストリングス(大腿二頭筋、半膜様筋、半腱様筋)、ふくらはぎ(右下腿三頭筋)、などを使い、投球方向に力を生み出します。
軸足で生み出した力によって、重心を移動し、その力を前足となる左足で受け止め、身体を回転していきます。
その時に働く筋肉は、膝を安定させる筋群で、大腿四頭筋およびハムストリングス(大腿二頭筋、半膜様筋、半腱様筋)と、膝が体幹の回旋する力によって外側に倒れたり流れたりしないように支える左の大殿筋や中殿筋、内転筋群です。

その後、外腹斜筋などの体幹の筋。
大胸筋や、大円筋、前鋸筋、広背筋などの肩回りの筋肉。
上腕三頭筋などの上肢の筋。
屈曲回内筋群(特に尺側手根屈筋尺骨頭、円回内筋)の前腕の筋へと順に伝えられていき、ボールをリリースします。

 

これらの筋肉の動きを以前説明した、伸張反射や反動動作を使う(ウエイトトレーニングとパフォーマンス。)ことで、より大きな筋肉や腱のパワーを引き出します。

それだけではなく、投球では「捻り」を上手く使うことも重要なテクニックです。
特に、下半身と上半身の捻じれを上手く作り、より大きなパワーを発揮します。
軸足で力を生み出し、並進運動をし、それを回転運動に変換する際に、先に下半身を回転し、上半身との捻じれを作り、一瞬遅れて上半身が回転するようにします。
この一瞬の時間差があることで捻じれが生じ、より大きなパワーを生み出すことができます。

いくら筋肉を鍛えていても、このような伸張反射などの反動、身体の捻りなどを上手く使えなければ、速い球を投げることも、狙ったところにコントロールよく投げることも、再現性高く何度も繰り返し投げることもできません。

伸張反射や反動、身体の捻りなどを上手く使うためには、筋肉を上手く使うことが必要です。
どこの筋肉にどのタイミングで力を入れればいいのか。
どこの筋肉にどのタイミングで力を抜けばいいのか。
これを理解して、コツを掴むということが必要です。
「もっと力を抜いたほうがいい」と言われる選手の多くは、力を入れるべきではない筋肉に力を入れているから言われているのだと思います。
実際は力を入れて力まなければ、パワーはでませんが、固めるべきではない筋肉を固めては、投球に必要なパワーは発揮できません。
また、しなやかな動きもできません。

 

投球のコツとしては、伸張反射や反動、身体の捻りなどを上手く使い、大きな力を生み出し、関節を上手く固めることで、その力をロスなく末端(ボール)まで伝えていくことだと思います。
このテクニックを向上させながら、さらに筋肉を大きくすることができれば、投球のパフォーマンスは上がっていきます。

ただ闇雲に練習やトレーニングをするのではなく、投球のどこの動作を向上させるために、どこの筋肉を鍛えるのか、などと考えることが上達のスピードを早めていきます。

今回は、野球のピッチャーを例に話しましたが、多くのスポーツに共通することだと思います。
その競技に使う動きが、どのような動きで、どのような筋肉を使うのかを把握することが、トレーニングを始める前に考えなければならないことだと思います。

子供のウエイトトレーニング。

前回、前々回とウエイトトレーニングはについての投稿をしてきました。
ウエイトトレーニングの効果。
ウエイトトレーニングとパフォーマンス。

成長期の子供と大人とが、同じウエイトトレーニングをやって問題ないのでしょうか?
そもそも子供たちにウエイトトレーニングは必要なのか?

子供たちを指導していて「ウエイトトレーニングはやったほうがいいですか」と聞かれることが良くあります。
今回は、成長期の子供のウエイトトレーニングについて考えてみました。

 

ウエイトトレーニングをすることで得られることは、筋肉が大きくなることです。
そう考えると、大人と同じような筋肥大を狙ったウエイトトレーニングは成長期の子供には必要ないというのが僕の考えです。
(競技によっては必要な競技もある。野球では必要ない。)

筋肉を使いこなす神経の機能を低下させたり、反射と言われる反動動作が下手になったりするのがウエイトトレーニングの弊害でもあります。
このような能力は子供の頃に、特に成長すると言われています。
1番筋肉を動かす神経の機能が発達する時期にそれを阻害するようなウエイトトレーニングはやらない方が良いのではないかと思います。

 

成長期の子供に大切なことは、筋肉を太くするよりも長くすることです。
筋肉が発揮できる力の強さは、筋肉が太くなるほど強くなりますが、筋肉が長くなることでも強くなります。
この筋肉が長くなるというのは、骨が長くなるということです。
筋肉を太くするのは何歳になってからでもできますが、長くするのは、骨の成長が止まるまで、つまり、身長が止まるまでしかできません。
少しでも高身長になり、筋肉が長くなれば、多くの競技で有利になります。
特に野球のピッチャーは、高身長になることで、投球の際に、より大きな力をボールに加えることができます。
投球は円運動なので、円の半径を大きくでき、さらに、ボールに力を加える時間も長くできます。
長い筋肉の方が、力も大きくなるのでスピードボールを投げることができます。
だから、少しでも身長を高くする努力、骨端線を早く閉じさせない努力が必要です。

骨端線が閉じてしまうともう身長が伸びることはありません。
その骨端線を早く閉じさせてしまう要因は、過度に骨や関節に負担がかかことです。

適度な刺激は身体の成長を促進させてくれるのですが、負荷の強すぎることをすると骨や関節に負担が掛かるため、身長があまり伸びなくなってしまいます。
大人がやるようなウエイトトレーニングは、負荷が大きすぎます。
筋肉の疲労が強すぎると、その回復に成長ホルモンが使われ、身長を伸ばすために必要な成長ホルモンが不足してしまうことも考えられます。
だからといい、負荷を落としては、ウエイトトレーニングの効果がでません。

このような理由から、成長期の子供にウエイトトレーニングは必要ないと思っています。

 

ウエイトトレーニングではなく、自重を使った身体を上手く動かせるようにするようなトレーニングであったり、遊びやさまざまな運動を行うことで身につく身体操作の方が重要だと感じています。
負荷が特定の部分に集中するのではなく、全身をバランスよく鍛えられる運動を行うことが大切です。

適度な刺激は身体の成長を促進する効果があるのですが、この適度が個人差があります。
年齢や発達度合いに応じたトレーニングプログラムが必要です。
年齢が同じでも、体格差があったり、筋肉の成長度合いも異なるので、その選手に合わさなければなりません。
横並びの同じトレーニングをするのでは、その選手にとって適切な負荷にすることは難しいと思います。
当然、大人がやるようなプログラムを子供にやらせるのはよくありません。

子供を成長させるには、その子供にとって、今何をすることが良いのかを常に考え続けなければなりません。
筋肥大を狙ったウエイトトレーニングではなく、怪我の予防や基礎体力の向上を目指したトレーニングをした方が良いと思っています。
そして、その時に忘れてはいけないのが、適度な睡眠です。
成長期の子供には身体の成長のために十分な睡眠は欠かせません、

運動も休養も何事も適度を見極めてやっていくことが重要だと思います。

ウエイトトレーニングとパフォーマンス。

前回、ウエイトトレーニングとスポーツのパフォーマンス向上は目的がまったく逆で、ウエイトトレーニングは筋肉を発達させる効果はとても高いが、動作の効率を落としてしまう危険性があるという話をしました。(ウエイトトレーニングの効果。

今回は、さらになぜウエイトトレーニングがパフォーマンスを落としてしまうことがあるのかを考えていこうと思います。

 

ウエイトトレーニングは筋肉に十分に刺激を与えることが重要なので、「筋肉に効かせる」といった筋肥大の刺激を十分に与えられた状態を作ることを目指します。
スポーツ動作では、その反対になるべく「筋肉に効かせたくない」ということです。
ウエイトトレーニングに慣れてくるとこの「効かせる」ことが上手くなってきます。
それをスポーツの局面などウエイトトレーニング以外の場面で発揮してしまうとパフォーマンスの向上を阻害してしまいます。
筋肉に効かせてしまっては、早く疲労してしまうだけでなく、動きも硬くなってしまいます。

 

トップ選手の動きを見ていると動きがスムーズでしなやかに動ける選手ばかりです。
そう見える理由は、伸張反射と言われる反動動作を上手く使っていることと、身体全体を上手く使い、身体の中心から末端に連動して動かしているからです。
この伸張反射と連動性はパフォーマンスを発揮するには非常に重要で、このテクニックがスポーツの上手い下手に直結しているとも言えると思います。

伸張反射とは、骨と骨の間に付いている筋肉が急激に引き伸ばされると、その筋肉が元に戻ろうと収縮する現象を言います。
腱を伸長させた時にも、それにつれて筋肉が伸びるので伸長反射が起こります。
例えば、高くジャンプしようとした時に、一度沈み込み、反動を使って高く飛ぶ動きや、ボールを投げる時に胸を張ることで筋肉が伸ばされ、収縮することで大きな力を生み出すテクニックです。
この伸張反射は動的なスポーツのほとんどの局面で使われています。

伸張反射を使うことで、得られることは、多くあります。
筋肉に力を入れる時間が少なく、反動での切り返しの瞬間に大きな力が出るので、筋力の発揮時間が短くなり、筋肉の疲労もしにくくなります。
自分の力で終始動かすのではなく、反射で動くので、毎回同じ動きになり、再現性が高くなります。
さらには、発揮できる力は強く、速くなります。
怪我のしにくい動きにもなります。

この伸張反射を上手く使い、全身を連動性をもって力を伝えることで、バネのあるしなやかな動きになります。
素早く身体の中心部の大きな筋肉から先端の筋肉に順番に力を伝えていきます。
投球では、下半身から上半身、そして腕から指先と力を伝えていきます。
野球など身体運動のほぼすべての局面でこの身体操作を上手くすることが、パフォーマンスを発揮するには欠かすことができません。

 

一方、ウエイトトレーニングは、筋肉に肥大を誘発するような刺激をより多く与えたいので、伸張反射を使うことで力の発揮時間が短くなることや効率的に動いては刺激の量が少なくなってしまうので良くありません。
基本的に、ゆっくり動くウエイトトレーニングでは伸張反射を使った反動動作を行いません。
連動性を持たせるということもしません。
伸張反射を使った反動動作は、効率よく大きな力・速度を発揮ができるのでスポーツ動作には必要ですが、筋肉に大きな負荷をかけたいウエイトトレーニングには必要ありません。
反動を使わずにゆっくりと力を持続的に出し続け、筋肉を連動して使うということは一切せず、各関節を同時に動かします。
例えば、スクワットで重りを持ち上げる時には、股関節にも膝関節にも同時に力がかかります。

 

競技でパフォーマンスを発揮するには、反動を使い伸張反射を使うことで、全身を効率良く使って、一部の筋肉に負担が集中することを避けるのが、優れた身体操作であり、優れた筋肉の使い方と言えます。
ウエイトトレーニングは、反動や伸張反射を使わずに、身体を連動させることなく同時に持続的に力を発揮することが優れたウエイトトレーニングスキルと言えます。
このように、ウエイトトレーニングの熟練者になればなるほど、スポーツ動作を下手にさせることがどうしても起こってしまいます。

単純にウエイトトレーニングで身体を大きくしたらパフォーマンスが上がると考えるのは注意が必要です。
確かに多くのトップアスリートが筋肉隆々でがっちりした身体をしていますが、それは優れた身体操作スキルを身につけているので、その筋肉を使いこなすことができるからです。

自分のパフォーマンスを最大化させるためには何が必要かを考えることが大切だと思います。

ウエイトトレーニングの効果。

プロ野球も日本シリーズが終わり、オフシーズンに入っていきます。
アマチュア野球はまだ勝ち進んでいるチームは試合がありますが、そうでないチームは来年に向けて動き出しているのではないかと思います。
その中で、ウエイトトレーニングに力を入れてやるというチームや選手もいるのではないかと思います。
しかし、何も考えずにウエイトトレーニングをしたところで野球のパフォーマンスを上げることはできません。
それどころか逆にパフォーマンスを落としてしまう選手を何人も見てきました。
そうならないための知識として参考になればと思います。

 

人の身体やトレーニングなどがより研究されたことで、どのスポーツも競技力が上がってきています。
それと同時に、選手の身体も大きくなってきています。
これは身体を動かす土台となる筋肉が発達している方が、より高い身体パフォーマンスを発揮できると考えるようになってきたからです。

昔に比べて、近年は野球やサッカー、バスケ、ラグビー、陸上、水泳、など多くの種目で素晴らしい肉体を持った選手が多く見られます。
見た目だけでも筋肉が非常によく発達し、筋肉隆々で強そうな選手が増えてきています。
見た目だけでなく、そのような選手がスポーツ動作でも非常に優れた力を発揮しています。
その一方で、スポーツ現場を見ていると、ベンチプレスやスクワットで重たい重量を挙げられるようになり、筋肉が大きくなっているにもかかわらず、パフォーマンス向上につながらない選手が多くいます。
野球のピッチャーでも、ウエイトトレーニングで身体を大きくしたにもかかわらず球速が落ちてしまったというピッチャーが多くいます。

筋肉だけでいえば、筋肉が発揮できる力の強さは、筋肉が大きくなればなるほど強くなります。
筋肉は太いほど力が強く、そして力が強ければその分スピードも速くなります。
つまり、筋肥大するほど筋肉の能力は高まり、強く、そして速くなります。
力は強くても速度が遅い筋肉というものはありません。

そして、僕の知る限り、ウエイトトレーニングよりも効果的に筋肉を肥大させる方法はありません。
ウエイトトレーニングをしないボディビルダーを聞いたことがないことからも言えると思います。

では、なぜウエイトトレーニングをして筋肉を大きくしたにもかかわらず、パフォーマンスが落ちてしまうことがあるのでしょうか。
筋肉は太いほど力が強く、スピードも上がるはずなのになぜ動きが遅くなってしまう選手がいるのでしょうか。

 

多くの人は、脂肪がつけばついた分だけ身体に重りがつくという認識はあると思います。
実は、脂肪だけでなく筋肉もついた分だけ重りになります。
そのスポーツ動作に使わない筋肉が大きくなればそれが重りとなって動きを遅くする可能性は考えられます。

また、筋肉が大きくなることで、その大きくなった筋肉が関節の可動域を制限するなど、動きの邪魔になることも考えられます。
動きを阻害するほど筋肉が大きくなれば、それが動きを遅くする可能性もあります。

しかし、これらはそこまでになるには、かなりのウエイトトレーニングをして筋肥大しなければならないと思います。
そこまで筋肥大していないにもかかわらず、パフォーマンスが落ちてしまったり、動きが遅くなってしまうのは、ウエイトトレーニングによって、神経の伝達や連動性と言われるような動作の効率が落ちてしまうことが1番の原因ではないかと思います。

筋肉がなければ身体は動きませんが、身体操作の能力は筋肉の能力だけでは決まりません。
筋肉の能力とその筋肉を使いこなす神経の機能の掛け合わせて決まります
いくら筋肉が発達しても、神経と筋肉の機能が下がってしまっては、パフォーマンスが向上するかはわかりません。
筋肉が大きくて動きの遅い人というのは、筋肉に問題があるのではなく、筋肉を動かす神経と筋肉の機能や連動性に問題があるからです。
大きく発達した筋肉を上手く使いこなせば動きも速くなるはずですが、実際には筋肉が発達したのに動きが遅くなる選手が多くいます。
それは、筋肉の能力が低いのではなく、競技の動作の局面で筋肉を上手く使う能力が低いからです。

トップアスリートは筋肉もそれを使いこなす能力も両方とも優れているということです。

 

競技のパフォーマンスを向上させるには、できるだけ効率よく身体や道具などに大きな力(速度)を発揮させることです。
それだけではなく、それを再現性良く繰り返したり、長い時間持続させるということが必要です。
例えば、野球のピッチャーでは、より楽に、なるべく疲労せずに、ボールにより大きな力を伝えて、ボールの速度を上げることが求められます。
さらにそれを再現性良く狙ったところに何球も繰り返し投げることが必要です。
つまり、動作の効率が良いほど、優れたピッチャーということになります。

それに対してウエイトトレーニングは、筋肉を発達させて筋力を高めることを目的に行います。
そのために重要なことは、筋肉にかける負荷の大きさです。
ダンベルやバーベル等の重りを効率よく持ち上げることは必要ありません。
何キロの重りを持ち上げるかよりも、どれだけ筋肉に大きな負荷をかけて、刺激を与えられるかが重要になります。
筋肉に大きな負荷をかけることが目的なので、動作の効率の良し悪しは問題になりません。
むしろ、動作の効率が悪い方が筋肉にかかる負荷が大きくできるので、ウエイトトレーニングのやり方としては優れていることになります。

このようにウエイトトレーニングとスポーツのパフォーマンス向上は目的がまったく逆であるといえます。
ウエイトトレーニングは筋肉を発達させる効果はとても高いのですが、それと同時に、動作の効率を落としてしまう危険性があります。

 

だからこそスポーツ選手は、パフォーマンス向上を目的として、その手段のひとつとしてウエイトトレーニングをすると考えることが重要です。
決してウエイトトレーニングをすることが目的となってはいけません。
理想のパフォーマンスがあり、それをするために筋肥大が必要となって初めてウエイトトレーニングを行おう、とならなければなりません。
トレーニングはあくまでパフォーマンス向上を目指して行うということです。
ここを間違わずにトレーニングをしてほしいと思います。

危険・怪我の回避能力を育むには。

前回の投稿(ラグビーから学ぶ危険・怪我の回避。)で、いざというときに危険や怪我から身体を守るのは、自分自身の危険予知能力と身体能力であるという話をしました。
それを身につけるためにトレーニングをする必要があると言いましたが、トレーニング以外でも、遊びや大人の接し方など、育った環境によって身についていきます。
それを身につけるにはどのような環境で子供たちに接するのが良いのか、僕なりの考え方を書いてみました。

 

危険予知能力を高めることや危険を回避できるようにするには、経験を積むことは重要なことです。
だからといい、致命傷になるような怪我につながったり、命の危険にさらすようなことは避けなければなりません。

大人が危険だと思うことを子供はやろうとしますが、どこまで見守り、どこから止めるのかという判断はとても難しいことだと思います。
その状況によって臨機応変に対応しなければなりませんが、僕の持っている基準は、本人が危険を認識しているかしていないかということです。

本人が危険を認識している場合は、多少の危険は見守ります。
子供は、危険を認識していても、好奇心旺盛であり、わざと危険な遊びや危険な行動をしようとします。
リスクのあることは、チャレンジ精神を刺激し、スリルを味わうことで、より面白くします。
そのような行動は、面白いだけでなく、危険性のある遊びの対応を学び、経験的に危険を予測し、怪我を回避できるようになっていきます。
子供が危険を感じていることに、あえて、挑戦することで、自分の身体のコントロール方法を身につけていきます。
例えば、高いところから飛び降りて、足がしびれたり、痛みを感じるような経験をすることで、自分が飛び降りることができる高さを感覚的に覚えていきます。
「ここまでなら飛べる」「これは怪我をしそうだからやめよう」という判断をできるようにし、自分の中の安全基準を記憶していきます。

それに対して、本人が危険を認識できていない場面では、大人が注意を促す必要があると考えています。
例えば、夢中になってボールを追いかけている子供は、そのまま道路に飛び出していきます。
車にひかれるかもしれないということを認識できていないとそうなります。
このような場面では、大人が止めに入る必要があります。
本人が危険を認識できているかは、個人差があり、脳の成長段階よっても異なります。
大人になるにつれて、危険を予測できるようになっていきます。
それだけでなく、経験や知識、身体能力によっても危険性が変わってきます。
同じ状況でも、本人の精神状態や疲れて集中力がなくなっているような場面では、危険を認識できなくなるので注意を促す必要があります。
大人はこれらの状況を見極め、判断することが重要です。

注意の促し方としては、声を上げて、叱るというやり方も、その時は効果があるかもしれませんが、重要なことは、本人が危険性を理解し、自らの行動を変えられるようになることです。
「叱られるから止める」「怒鳴られるから止める」では、危険性の本質的なことを理解できたのではなく、叱る人や怒鳴る人に危険性を感じて止めるだけです。

 

危険予知能力を育むには、大人が見守ることで、子供が主体性を持って、危険に挑戦していくことです。
ここで重要なことは「主体性を持って」ということです。
「ここからから飛び降りろ」と言われて飛び降りるのと、自分のチャレンジ精神から高さを決め、飛び降りてみるのとでは、まったく違います。
スポーツに当てはめると、走り込みをやらされるのと、自分からどのくらい走れるのかをチャレンジしてみるのでは違います。
自分がボールをどのくらい投げたら、肩や肘などの身体が危険なのかを知るには、自分の判断で強度や球数を決めて、自分の身体と向き合うことです。
徐々に負荷を上げていくことが重要で、ここに試合で勝つことや、誰かと比較するということを考えては正確な判断が難しくなってしまいます。
自分の身体がどこまでやったら危険なのかを知るには、誰かにやらされるわけでもなく、自らチャレンジするということを何度も経験し、覚えていくということです。

 

ちょっと高い場所に登ったら「危ないから下りてきなさい」
転ぶ前から「転ばないようにね」
少し危険なだけで「危ないからダメだよ」、など
その反対に、高いところを怖がっているのに「怖がるな」
適度を超えて「もっとやれ」
少年野球のピッチャーに「投げ込め、走り込め」など

危険から守ることも練習をやることもどちらも大切ですが、自力で問題を解決し、直観を磨いていき、大人の干渉がなくても行動を自制できるようにならなければ、危険予知能力と身体能力は、身についていかないので、怪我を防げません。

子供を育てるということは、主体性を持って、様々なことに挑戦し、成功と失敗を多く経験し、そこから学んでいくことが必要です。
そこには、莫大な時間と周りの大人の我慢と根気がなければなりません。

大きな怪我は避けなければなりませんが、小さな怪我は多少は覚悟の上で危険回避能力を身に着けることを優先することが、将来、大きな怪我を防ぐことに役立ちます。

大人が何でも先回りして子供の危険を取り除いてしまうのではなく、こんな危険が予測できるということを認識させる方が、長い目で見たときに子供のためになるのではないかと思います。

ラグビーから学ぶ危険・怪我の回避。

今、ラグビーのワールドカップで盛り上がっていますが、試合を見ていると「痛そう」「怪我しそう」というような感想を持ってしまいます。
それと同時に、怪我を回避するための高度な身体能力を身につけているなぁとも思います。
世界トップクラスのラグビー選手が持つ、危険回避能力は他のスポーツや生きていく中でとても参考になります。
そんな話をしていこうと思います。

 

現在、多くの子供たちを指導する立場にありますが、そこで思うことが、運動中の危険な場面での自分の身体を守るための身のこなしが上手くできない子が多くいるということです。
転んだ時に、上手く受け身を取ったり、手を出すことができずに顔面を怪我してしまような選手がいます。
前転や後転などをした時に、頭を強打してしまうような選手も多く見ます。
野球のプレーでも、スライディングやデッドボールの回避などを見ても、危険を回避することが上手くないと感じることがあります。

こうした原因のひとつに、幼少期の外遊びの変化が関係しているのではないかと思います。
僕の幼少期にしてきた遊びは、鬼ごっこをしたり、木登りをしたり、崖に登ったり、ドッヂボールをしたり、公園で野球やサッカーをしたりといった遊びをしていました。
今では、公園でボールを使って遊ぶことですら、危険と言われてしまうので、どの遊びも現代では「危ない」と言われるような遊びです。
そんな時代背景もあってか、危険な場面の経験不足により危険回避の基礎的な動きが十分に習得できていないのではないかと感じます。
だからこそ、昔はあまり必要なかった、危険な場面で自分の身体を守ることができる身体能力を身につけるための基礎的な動きづくりや身体づくりもトレーニングをする必要性を感じます。
本来なら、トレーニングよりも遊びを取り戻すことの方が、効果的ではないかと思いますが、現実問題難しそうなので、トレーニングをする必要があるのではないかと思います。

 

どのような能力を身につけるためのトレーニングをすれば良いのかをラグビーから考えてみたいと思います。
テレビでラグビーワールドカップを見ていると、ラグビーの中には、他の競技や日常生活にもつながる怪我や危険を回避する能力が多く含まれているように感じます。

ラグビーで怪我をするとしたら1番に考えられることが、相手選手からのタックルなど、他のプレーヤーとの接触ではないかと思います。
そこでの接触を回避したり、回避できなくても、準備することで怪我のリスクを減らすことができます。
目で見たり、音や気配を感じ取るなどして仕入れた情報を元に、他のプレーヤーとの位置関係や接触のタイミングを把握することで準備ができます。
そして、それに応じて、切り返したり、加速したり、減速したり、身体をひねったり、タックルに備えて押し返したりと瞬時に状況を判断して行動に移します。
上手く受け身を取ったり、関節を痛めないような倒れ方を瞬時に選択したりもしています。
ラグビーにはボールがあるので、それをボールを見ながら、ボールをキャッチしたり、投げたり、蹴ったりといった判断も同時に行わなければなりません。
タックルを受けてバランスを崩しても、それを立て直す能力も必要です。
柔軟性やしなやかさや相手の力をいなす能力などが欠けると、筋肉や腱の断裂などの怪我だけでなく、慢性的に腰痛や股関節痛、膝痛などにもなります。
当然、ぶつかられたときに怪我をしない、強靭な身体も必要です。
筋力や持久力など基礎体力が欠けると、タックルなどの強い負荷に耐えられずに怪我をしてしまいます。

ワールドカップに出場するような、世界トップクラスのラグビー選手は、様々な状況を瞬時に判断し危険予測をして、身体能力で回避するという能力に優れています。
このような能力を身につけるためのトレーニングをすることは、怪我や危険を回避するだけでなくパフォーマンス向上にも役に立ちます。

 

いざというときに危険から身体を守るのは、自分自身の危険予知能力と身体能力です。
創造力を働かせ、先を予測し、自ら考え、答えを見つけていくことで養われていきます。
子供の頃から大人が危険をすべて取り除いていては、その能力はなかなか身につけられません。
成長には失敗はつきものです。
失敗をさせないのではなく失敗が致命的なダメージにならないようリスクを減らしてあげ、どんどん失敗できる環境を作ってあげることも必要です。
自分の身体は自分で守ることができる子供に育てていくことが子供のためになるのではないかと思います。

 

ラグビーを見て感じたことは、ラグビーは怪我と隣り合わせのスポーツですが「選手の危険予知を含めた身体能力」「スポーツパーソンシップに則った行動」「ルール」によって怪我のリスクを減らしていると思いました。
これは他のスポーツにも当てはまることであり、とても参考になります。
選手が自分の身体を常日頃から鍛え、疲労やその時々の体調など現状の状態を把握し、周りはその選手を大切にし、個人を尊重し、それでも危険なことはルールを作り、守るということができれば、怪我を100%防ぐことは難しいですが、かなりリスクを減らすことができると思います。
怪我を予防することは多くの競技の課題でもあります。
他の競技もラグビーから多くのことを学べるのではないかと感じました。

確率を考える。

前回の投稿で確率の話(実力?運?)をしましたが、試合で成功する確率をどう上げていくかを考えながら、普段の練習から取り組むことが大切です。
今回も確率を考えてみたいと思います。

 

野球だけでなくスポーツは勝つか負けるか。打つか打たないか。抑えるか抑えないか。のように結果が明確にわかります。
このように結果が明確だと、どうしても人はそこに運があったとしても、もっと納得しやすい他の原因を見つけてこようとしてしまいます。
運による影響に目をつぶり、別の因果関係を過大に評価してしまいます。
成功も失敗も、ある程度は運的なことがあるということを理解することは必要です。
もちろん結果が出ればそれなりの要因があり、結果が出ないのも出ないなりの要因はあります。
しかし、そこには偶然の働きもあったはずです。
だからこそ、成功や失敗も、すべてはできる限り確率的に捉える必要があります。
実力がない打者でもたまたまヒットを打つこともあります。
どんなにいい打者でも、打ち損じることはあります。
初心者のような悪いフォームでも狙ったところに投げられる場合もあります。
逆に、適切なフォームを身につけた一流の選手でも狙ったところに投げられないこともあります。
しかし、両者が狙ったところに投げられる確率には大きな差があります。
これらを確率的に捉えることができなければ、実力を正確に判断することができません。
この自分の実力を正確に判断できるのも能力のひとつです。

 

成長できない選手によく見られるのは、うまくいった要因を自分に求めたがります。
その要因が相手であったり偶然のおかげだとは思いません。
一方で、失敗については自分以外にその要因を求めたがります。
「うまくいったのは自分のおかげ、うまくいかなかったのは他人のせい」といった感じです。
成功は自分のおかげと考えることで、前向きな自信を維持できるということもあります。
また、うまくいかなかったのは自分以外の要因のせいと考えることで、そのことに対していちいちくよくよしないで済むという利点もあります。
しかし、運の要素を度外視した、自分の実力を測ることができなければ、成功を続けるということは難しいと思います。

運による成功に対しても自分の貢献度を過大に評価し、たまたま、うまくいった自分のやり方を絶対視してしまったり、反対に、結果が出ないことが続いたときには、「今はたまたま運が悪いだけだ」と考えるだけで、自分のやり方を変えようとは思わず、そこから学ぶことができなくなってしまいます。

そのような選手に多い特徴として気持ちや気合で乗り切ろうとします。
道を切り開くには、気合を入れて努力することは必要なことです。
大きな成果を出すためには、苦しいときに諦めずに努力を続け、チャレンジを続けていくことは重要です。
しかし、それも現状を正確に判断して、適切な方向に努力を積み重ねる場合の話です。
今までのやり方が通用しないときに、やり方を変えずに気合だけで乗り切ろうとしても、その方向が適切でなければ、その努力は報われないものになってしまいます。

成長しないチームの特徴として、苦境になればなるほど、気合に頼ろうとする傾向が強くなっていきます。
文句を言わず、良い結果だけを信じて、一致団結して悪い状況を打破しようと考えます。
うまくいっていないのなら、まずは、今までのやり方がうまくいかない状況にきているのではないかと考えるべきです。
方向を決め、そこに努力を傾ける必要があります。
気合に頼る精神論は、そうした方向性の修正をなかなかしないために、的外れの方向に努力を重ねる結果につながってしまいます。
過去にたまたま成功したことが、そのやり方を正しいと思い込み、新たな状況に適応できなくしてしまいます。

 

スポーツである以上、相手がいることなので、うまくいくこともあればいかないこともあります。
そこには、少なからず、運も存在しています。
運が存在しているからこそ、確率を高める努力をしなければなりません。
成功、失敗両方から学び、次につなげていくという姿勢が成長につながります。
結果だけに左右されずに、もっと本質的な部分を評価していくことが重要です。

運が存在するということを理解して、成功する確率を少しでも上げていけるように努力をすることが大切だと思います。