重心のコントロール。

スポーツ動作において重心のコントロールの優劣が、パフォーマンスの優劣に直結するとも言えると思います。
つまり、運動能力に優れた人とは、重心をコントロールする能力に優れている人とも言えます。
そんな話をしていこうと思います。

 

重心とは重さの中心のことを言います。
重さがあるものには重心があるということです。
当然、人の身体にも重心があります。
重さの中心なので何か動きをするたびに前後、左右、上下にも重心は移動するということになります。
しかし、いちいち意識して、重心をコントロールしているという人はいないと思います。
歩くときに、重心を右足に移して、左足に移して、前に移動して、などとは考えません。
人間は無意識に重心をコントロールしバランスを保っています。

 

運動能力の優れている人とは、この無意識に行う、重心のコントロールに優れている人と言っても過言ではないと思います。
走る動作に優れた人とは、重心を速く移動できる人のことです。
バランスが良いというのも重心を上手くコントロールできている人のことです。
物を投げるというのも重心移動(体重移動)で生み出した力を投げるものに上手く伝えられている人と言えます。
野球では、体重を乗せて投げるという表現をしますが、まさしくこれが重心移動で生み出した力をボールに伝えているということです。
ボクシングなどの格闘技でパンチ力があるという人も同じで、重心移動で生み出した力(体重)を相手に上手く伝えている人です。

重心を上手くコントロールすることで走りを楽に速くすることができたり、投球や打撃において大きな力を生み出すことができたりします。

 

さらに、重心をコントロールすることで、姿勢が良くなります。(姿勢が良いから重心がコントロールできるとも言えるのかもしれません。)
良い姿勢と言うのは、重心が良い位置にあり、なるべく筋肉に頼らずにいられるということでもあります。
姿勢が良いと、筋肉に頼らずに力を出すことができ、筋肉の疲労を少なくできるのでエネルギーを温存することにもつながります。
逆に、重心の位置が悪いと筋肉を過剰に使ってしまい疲労しやすくなるだけではなく、筋肉の過緊張は故障のリスクを高めてしまうことにもなります。
スポーツ動作において、できるだけ筋肉を緊張させないようにリラックスした状態を保つことは非常に重要なことです。
身体に無駄な力が入ったりすることでパフォーマンスを落としてしまうだけでなく、故障につながってしまいます。

筋肉がリラックスした状態を作れる重心の位置は、動き出しの反応にも関わってきます。
例えば野球では、盗塁で良いスタートを切ったり、守備で打球に対して早く反応したり、打撃でもピッチャーの投げてくるボールに早く反応するためには重要なことです。
ピッチャーのクイックモーションを速くするのにも重心位置は大切です。

大きな力を出すのにも、素早く動くためにも、重心を上手くコントロールするということは、重要なことです。

 

重心の位置は、ほとんどが無意識にコントロールされていますが、特に重要になってくるのが、頭の位置です。
頭は、人間の1番高いところに位置し、重さがあります。
頭は重いので、頭の位置によって重心の位置は大きく変わってきます。
無意識に、頭の位置がどうなっているのかを把握し、頭の位置を上手くコントロールできている選手が、重心のコントロールに優れている選手とも言えると思います。

赤ちゃんや子供は、大人に比べて身体に対して頭の重さの比率が高いので、重心のコントロールによってバランスを保とうとします。
大人は筋力がある分、筋肉を使ってしまいます。
肩こりなどは、その典型だと思います。
幼少期から悪い姿勢で生活したり、外遊びの経験や鬼ごっこのような走り回るような経験が少ないと重心のコントロールが上手くできなくなっていってしまいます。

幼少期の運動経験は重要ですが、ある程度年齢を重ねてからは、どのように意識したら良いかと言うと、無意識に適切な姿勢を保てるようにし、骨盤をどう移動するかを考えることが良いのではないかと思います。
無意識に適切な姿勢を保てるようにするためには、先ずは身体機能を整える必要があります。
例えば、猫背であるならば、猫背を直すようなトレーニングが必要です。
頭の位置を背骨の上にできるようにしなければなりません。
初めは意識して姿勢を正さなければならないかもしれませんが、それが無意識にできるようになるまで落とし込まなければなりません。

あとは、骨盤をどう移動するかを考えれば良いと思います。
スポーツ動作において、どこに重心があるかを正確に把握することは難しいことなので、僕は、走る動作や投げる動作では、骨盤=重心と意識していました。
例えば投球動作において、重心移動を考えた時に、骨盤をどう移動するかということを考えます。
骨盤を投球方向に大きく速く移動することができれば、 投球パフォーマンスに大きな影響を与えることができます。
走る動作でも同じです。
骨盤の移動を意識できれば、腰が引けたり、腰が落ちたりといったことは起こりにくいのではないかと思います。

 

重心を上手くコントロールすることができれば、パフォーマンスにもつながります。
特に子供のうちは、この重心のコントロールということにフォーカスしてみるのも将来、役に立つかもしれません。