前回の投稿で「フォームの重要性。」についての話をしました。
だからといい、フォームを教えても選手はよくならないということが現実だと思います。
多くの選手がフォームに明らかな改善点があるにもかかわらず改善できません。
実際に、フォームを教えても身につけることができないという選手をたくさん見てきました。
僕自身も、フォームを変えることが大変であるということは、たくさん経験してきました。
フォームを変え、身につけることは簡単ではありません。
しかし、大谷選手は足を上げる打撃フォームから足を上げない打撃フォームに数日間で変え、結果につなげました。
ダルビッシュ選手もどんどんフォームが変化していっています。
イチロー選手の打撃フォームも毎年のように変わっていました。
フォームを身につける差はとんでもなく大きな差として存在しています。
何年かかっても身につけることができない選手もいれば、数日で身につけるとこができる選手もいます。
僕はこの差を能力として捉えています。
僕の提唱する「スポーツセンシング」とは、このような能力のことも含めて言っています。
理想のフォームを身につけるには
・何が良いフォームで何が悪いフォームかを知る。
・理想のフォームをイメージする。
・現状のフォームを知る。
・現状と理想を埋めるために必要なことを決める。
・練習を決める。
・必要なトレーニングを決める。
・練習を実行する。
・練習を繰り返す。努力を続ける。
・身体が動きを記憶する。
・感覚をすり込んでいく。
・どう変わったのかを振り返る。
・再構築して次の行動を決める。
簡単にフォームを改善するといってもそこにはたくさんの能力が必要になります。
上に挙げたことがひとつでもできなければ、理想とするフォームを身につけることができない確率が高くなります。
フォームを教えることよりも、どの作業をする能力が低いのかを知り、そこを優先的に鍛えることの方が重要だと思っています。
理想のフォームがわからずに、イメージできないのであれば、メカニックの仕組みを理解する必要があります。
努力を続けられないのであれば、努力できる選手に導くことが選手のためになります。
努力をしてもフォームが身につかないのであれば、努力の方向性を考えなければなりません。
ただフォームを指摘するだけでは、人によっては不十分だということです。
自分の身体がどう動いているのかわからないという選手は非常に多くいます。
そのために、理想としているフォームと実際の自分のフォームの違いがわかりません。
そんな選手にフォームを「こうしろ」「ああしろ」と言ったところで効果的だとは思えません。
形を教えても見た目ではどこの筋肉がどのタイミングで使われているのか等は、なかなかわかりません。
外見上の形だけでなく、動員する筋肉や力を入れる(力を抜く)タイミングなど僅かな違いがとても重要なことです。
つまり、本人の理解なしに理想的なフォームを身につけることは難しいということです。
だから、人から教えられてもなかなか変わらない選手が大多数ではないかと思います。
理想的なフォームに変えていくことができるのが能力なら、理想的なフォームを身につけられないのも能力ということです。
「こういうフォームにしろ」という指導で追い込まれていく選手を多く見てきました。
野球のピッチャーでは「テークバックをこうしろ」という指導でおかしくなる選手が本当に多くいます。
フォームをどう教えるのかで、選手の人生を左右します。
僕の考えは、フォームを教えるよりも、フォームを身につけられる能力を鍛えることが必要だということです。
この能力を持った選手は、自ら、フォームを理想に近づけていくことができます。
逆に、この能力がなければ、どんなにフォームを教えたとしても、成長に繋がりません。
パフォーマンスを発揮するにはフォームが重要ですが、単純にフォームを教えれば解決するわけではないということです。
指導者に「選手を成長させるために何ができるのか」という考えがあれば、一方的にフォームを押し付けるとはならずに選手に寄り添って考えることができるのではないかと思います。