定時制高校野球部。

僕は昨年から、ある定時制高校の軟式野球部を指導しています。
それまでは、定時制高校の野球は全く知りませんでしたが、定時制高校の野球がとても重要なポジションを担っているということを知りました。

注目度も高くないので、知っている人は少ないとは思いますが、少しでも多くの方に知っていただきたいので投稿します。

 

定時制高校軟式野球は「全国高等学校定時制通信制軟式野球連盟」に属しています。
高野連(高校野球連盟)の管轄ではないので、僕も自由に教えに行くことができます。

高野連に属している硬式野球部とは違い、生徒の多くがアルバイトをしています。
練習に行っても、「アルバイトがあるので帰ります」と練習途中で抜ける生徒も珍しくありません。
多くの生徒が勉強とアルバイト、そして野球の3つが生活の中心になっています。

 

高野連の調査では、1年生が3年生まで高校野球部で活動を続けている継続率は91.0%というデータがあります。
これは過去最高の数字みたいですが、それでも1割近くが硬式野球部を退部しています。
そのうちの何人が、部活だけでなく学校も辞めているのかは把握できていませんが、僕の知る限り、高校野球の強豪校やスポーツ推薦で入学した生徒が高校で野球部を退部したら学校も辞めている生徒がほとんどです。
それが、野球部員が何か問題を起こしたとなれば、退部→退学は当たり前になっています。
本来、そのような生徒こそ真っ当な社会人にするべく、教育が必要なはずですが、学校も経営があるので退学させるのが一般的です。

そう考えると、毎年数百人単位の高校野球部員が、高校を退学していることが予想されます。

野球に多くのエネルギーを傾けていた生徒が、退部し退学することにより、そのエネルギーを向けるところを間違ってしまうことや、引きこもりになってしまうことは防がなければならないことです。

そこで、野球を続ける受け皿として定時制高校や通信制高校があるのはとても大きいな意味があると思います。
実際、そのような生徒の一部が定時制高校や通信制高校で野球を続けています。

もちろん、学校を辞めれば、時間ができ、自分の好きな環境で好きなことができるので、目的がしっかりしていて、それに向かって時間を有効に使い、学ぶことができれば、高校中退だろうと問題はありません。

しかし、高校を中退してからの進路には、もう一度進学するか就職するかを考えます。
就職を目指す場合、高校中退だと、最終学歴は中卒になります。
中卒では社会的信用が薄く、就ける仕事の選択肢はどうしても狭まってしまうということが現実です。

生徒の将来を考えた時に、もう一度学校で教育をし直すということは必要なことです。
そういう意味で、定時制高校の野球部がとても重要な役割を担っていると思います。

 

まだ人間的に未成熟な生徒が多くいることも事実ですが、野球に対する真摯な姿勢や目標に向かって全力で取り組む姿を見ると、これからの成長が楽しみになります。

幸いにも、野球には、人格を育み、生きていく力を養っていける力があります。
全部員が、野球が好きで入部してきているので、好きな野球を通じての人間教育はとても効果的だと感じています。
中学校で不登校だった生徒が1日も休むことなく通学しているという話を聞いたり、高校を退学して入学してきた生徒が一生懸命練習する姿を見ると、人は変われるということを実感します。
野球を通じて、どんどん成長していく姿を見ると、改めてスポーツの教育的価値を感じます。

逆に、野球がなかったらどうなってしまうのだろうとも思います。
自信が持てない生徒が、野球で努力して成長することで自信をつけていきます。
それが積み重なれば、自分はやればできるということを感じていきます。
ちょっと頑張ることを積み重ねるだけで、人は変われるということを本人が知っていきます。

僕自身も、定時制高校の生徒に携わることで、とても良い経験ができ、成長させてもらっています。
今までのやり方では、生徒に伝わらないことがたくさんあります。
生徒とともに成長していくことの大切さを感じます。

 

一度、道を外れかけた生徒がもう一度教育を受けることができる。
定時制高校の全国大会もあるので、軟式野球とはいえ、日本一を目指し本気で野球に取り組める。
そのような生徒にとって、定時制高校や通信制高校が重要な役割を担っているということを知っていただきたいと思いました。
もし高校を辞めてしまっても、選択肢のひとつとして、定時制や通信制の学校で再び学び直すことができます。

 

いよいよ、僕が見ている定時制高校も、全国大会の予選が始まります。
日々成長している生徒たちが、さらに成長できる場になってほしいと思います。

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