ウエイトトレーニングの効果。

プロ野球も日本シリーズが終わり、オフシーズンに入っていきます。
アマチュア野球はまだ勝ち進んでいるチームは試合がありますが、そうでないチームは来年に向けて動き出しているのではないかと思います。
その中で、ウエイトトレーニングに力を入れてやるというチームや選手もいるのではないかと思います。
しかし、何も考えずにウエイトトレーニングをしたところで野球のパフォーマンスを上げることはできません。
それどころか逆にパフォーマンスを落としてしまう選手を何人も見てきました。
そうならないための知識として参考になればと思います。

 

人の身体やトレーニングなどがより研究されたことで、どのスポーツも競技力が上がってきています。
それと同時に、選手の身体も大きくなってきています。
これは身体を動かす土台となる筋肉が発達している方が、より高い身体パフォーマンスを発揮できると考えるようになってきたからです。

昔に比べて、近年は野球やサッカー、バスケ、ラグビー、陸上、水泳、など多くの種目で素晴らしい肉体を持った選手が多く見られます。
見た目だけでも筋肉が非常によく発達し、筋肉隆々で強そうな選手が増えてきています。
見た目だけでなく、そのような選手がスポーツ動作でも非常に優れた力を発揮しています。
その一方で、スポーツ現場を見ていると、ベンチプレスやスクワットで重たい重量を挙げられるようになり、筋肉が大きくなっているにもかかわらず、パフォーマンス向上につながらない選手が多くいます。
野球のピッチャーでも、ウエイトトレーニングで身体を大きくしたにもかかわらず球速が落ちてしまったというピッチャーが多くいます。

筋肉だけでいえば、筋肉が発揮できる力の強さは、筋肉が大きくなればなるほど強くなります。
筋肉は太いほど力が強く、そして力が強ければその分スピードも速くなります。
つまり、筋肥大するほど筋肉の能力は高まり、強く、そして速くなります。
力は強くても速度が遅い筋肉というものはありません。

そして、僕の知る限り、ウエイトトレーニングよりも効果的に筋肉を肥大させる方法はありません。
ウエイトトレーニングをしないボディビルダーを聞いたことがないことからも言えると思います。

では、なぜウエイトトレーニングをして筋肉を大きくしたにもかかわらず、パフォーマンスが落ちてしまうことがあるのでしょうか。
筋肉は太いほど力が強く、スピードも上がるはずなのになぜ動きが遅くなってしまう選手がいるのでしょうか。

 

多くの人は、脂肪がつけばついた分だけ身体に重りがつくという認識はあると思います。
実は、脂肪だけでなく筋肉もついた分だけ重りになります。
そのスポーツ動作に使わない筋肉が大きくなればそれが重りとなって動きを遅くする可能性は考えられます。

また、筋肉が大きくなることで、その大きくなった筋肉が関節の可動域を制限するなど、動きの邪魔になることも考えられます。
動きを阻害するほど筋肉が大きくなれば、それが動きを遅くする可能性もあります。

しかし、これらはそこまでになるには、かなりのウエイトトレーニングをして筋肥大しなければならないと思います。
そこまで筋肥大していないにもかかわらず、パフォーマンスが落ちてしまったり、動きが遅くなってしまうのは、ウエイトトレーニングによって、神経の伝達や連動性と言われるような動作の効率が落ちてしまうことが1番の原因ではないかと思います。

筋肉がなければ身体は動きませんが、身体操作の能力は筋肉の能力だけでは決まりません。
筋肉の能力とその筋肉を使いこなす神経の機能の掛け合わせて決まります
いくら筋肉が発達しても、神経と筋肉の機能が下がってしまっては、パフォーマンスが向上するかはわかりません。
筋肉が大きくて動きの遅い人というのは、筋肉に問題があるのではなく、筋肉を動かす神経と筋肉の機能や連動性に問題があるからです。
大きく発達した筋肉を上手く使いこなせば動きも速くなるはずですが、実際には筋肉が発達したのに動きが遅くなる選手が多くいます。
それは、筋肉の能力が低いのではなく、競技の動作の局面で筋肉を上手く使う能力が低いからです。

トップアスリートは筋肉もそれを使いこなす能力も両方とも優れているということです。

 

競技のパフォーマンスを向上させるには、できるだけ効率よく身体や道具などに大きな力(速度)を発揮させることです。
それだけではなく、それを再現性良く繰り返したり、長い時間持続させるということが必要です。
例えば、野球のピッチャーでは、より楽に、なるべく疲労せずに、ボールにより大きな力を伝えて、ボールの速度を上げることが求められます。
さらにそれを再現性良く狙ったところに何球も繰り返し投げることが必要です。
つまり、動作の効率が良いほど、優れたピッチャーということになります。

それに対してウエイトトレーニングは、筋肉を発達させて筋力を高めることを目的に行います。
そのために重要なことは、筋肉にかける負荷の大きさです。
ダンベルやバーベル等の重りを効率よく持ち上げることは必要ありません。
何キロの重りを持ち上げるかよりも、どれだけ筋肉に大きな負荷をかけて、刺激を与えられるかが重要になります。
筋肉に大きな負荷をかけることが目的なので、動作の効率の良し悪しは問題になりません。
むしろ、動作の効率が悪い方が筋肉にかかる負荷が大きくできるので、ウエイトトレーニングのやり方としては優れていることになります。

このようにウエイトトレーニングとスポーツのパフォーマンス向上は目的がまったく逆であるといえます。
ウエイトトレーニングは筋肉を発達させる効果はとても高いのですが、それと同時に、動作の効率を落としてしまう危険性があります。

 

だからこそスポーツ選手は、パフォーマンス向上を目的として、その手段のひとつとしてウエイトトレーニングをすると考えることが重要です。
決してウエイトトレーニングをすることが目的となってはいけません。
理想のパフォーマンスがあり、それをするために筋肥大が必要となって初めてウエイトトレーニングを行おう、とならなければなりません。
トレーニングはあくまでパフォーマンス向上を目指して行うということです。
ここを間違わずにトレーニングをしてほしいと思います。