少ない練習で上手くなるには。

前回の投稿で練習をすればするほど上手くなるわけではないという話をしました。
でも、勘違いしてほしくないのは、だからといって、練習をしなくても上手くなれると言っているわけではないということです。
上手くなりたければ上手くなるための行動をしなければなりません。

今回はそのやり方についての話です。

 

今のやり方のままで、練習量だけ減らせばいいかというとそうではありません。
上手くなるためにはそれでは難しいと思います。
質を上げなければなりません。
そのために大切なことが、夢中になって練習することと、効率的に練習するために、考える習慣をつけることです。
夢中になって練習するというのは、自分から楽しいと思って取り組めばできることです。
例えば、テレビゲームに夢中になるのは楽しいと思って自分からやるからです。
それと同じ状況を作って練習に取り組むということです。

考える習慣をつけるのは、環境が重要になります。
創造力があれば、考えるレベルはさらに高くなります。
大人が答えを教えすぎずに、自分で考えることで育まれていきます。
ミスをしても、できなくても怒られないという安心感があれば、いろいろなことにチャレンジすることができます。

創造力を働かせ、探究心をもち、チャレンジして練習する。さらにそれを夢中になってできれば、成長が見込めるのではないかと思います。

 

しかし、エグゼクティブなアスリートを目指すなら、さらに身につけなければならないことがあると思います。

それは、普段の生活と競技をつなげるということです。

グランドで練習している以外の時間をどう使うのかが重要です。
それは、「その競技が好きで楽しい、もっとやりたい、上手くなりたい」と強く思わなければできません。
そう思えれば、遊びや生活がトレーニングになってきます。

僕が見てきた、一流のプロ野球選手は全員これができています。
生活自体がトレーニングであり、競技が趣味や遊びのようでもあり、そこの境界線が曖昧です。
身体を動かすだけが上達の手段ではありません。
食べることも寝ることも質を上げれば自分にプラスになり、競技力の向上にもなります。
食事が競技のためであり、歩いているだけでも姿勢に気をつけたりと、私生活の中でも、どう競技にプラスになるのかを常に考えて行動します。
競技が義務ではなく、生きがいであり、プレーすることに喜びを感じ、成長する意欲に溢れているので、どこかに成長のヒントがないかと、常にアンテナを張って過ごしています。
知らなかったことを知るということは大切なことで、何かを調べて自分の知識になれば、それも成長であると考えます。

 

僕自身の子供の頃を思い出してみると、山を走り回ったり、木に登ったり、崖をよじ登ったりといった環境や遊びの中で五感を磨き、競技の土台を作ってきました。
僕の小中学生の頃の練習は土日だけでしたが、壁当てをしたり遊びで野球をすることが日課でした。
チームの練習は、トータルしても週に10時間もありませんでしたが、生活の中心が野球であり、野球に触れることが好きで何よりの喜びでした。
サッカーなど他の競技も好きでよくやっていましたが、すべてが野球につながっていました。

ドミニカ共和国の子供たちの話を聞いても、練習時間は短いですが、いたるところで野球をして遊ぶ姿があると聞きました。
硬式球ではなく、何かを上手く丸めて、それをボール代わりにして遊んだりするそうです。
練習の中だけでなく、遊びの中で競技力が磨かれていくということです。

競技が楽しくてやりたいと思うことが成長につながるということです。

 

指導者の中には厳しさを教えることも必要だと考えている人も多くいるように感じます。
厳しさを教えないと将来のためにならないと思うかもしれません。

厳しさを教えたいのであれば、能力を上げてあげることです。
上のレベルに行けば行くほど厳しさを知ることができるからです。
プロ野球まで行けば、本当に厳しい世界なので精神的にも強くなります。
プロ野球選手になれなくても、目標が高くなればなるほど、厳しさが増していきます。
わざわざ指導者が厳しさを教えなくても、立場が人を育てるので、より上の立場になることができるスキルを身につけさせてあげることのほうが必要だと思います。

 

部活動のガイドラインが発表され、少ない時間で効率よく活動することが求められています。
これは、短時間に集中して、質の高い練習をするということだけでなく、部活動以外の時間を有効に使って自分自身を成長させましょうということです。
今までのやらされて長時間やる練習から、主体性を持って、自ら学ぶという方向に変わってきたということです。
時間を有効に使うことを身につければ、今まで以上にいろいろなことにチャレンジできるようになるので、成長が期待できます。
様々な経験をたくさんし、それを競技や人生に活かしていってほしいと思います。

練習すればするほど上手くなる?

よく「練習をすればするほど上手くなる。」「上手くなるには誰よりも練習しなければいけない」といったような話を聞きます。
それを信じて、休みなく練習したり、長時間練習するチームが多くあります。
本当に正しいのでしょうか?

そんな話を書いてみます。

 

もし、練習をすればするほど上手くなるのであれば、メジャーリーガーが日本人ばかりになるはずです。
日本人の練習量は世界的に見ても上位です。(トップと言いたいところですが世界のすべてを知っているわけではないので)
しかし、そうはなっていません。

僕は、小学2年から野球を始めましたが、高校に入るまでは、土日、祝日しかチームでの活動がありませんでした。
土曜日は学校があったのでチームの練習は14時から17時くらいまで。日曜日は朝から夕方まででした。
高校に入学するまでの練習時間は週に10時間以下くらいだったと思います。

メジャーリーガーを多く輩出しているドミニカでは1日やっても3時間。
アメリカの環境を聞いたときも同じような話を聞きました。

練習を多くやったからといって上手くなるわけではないということです。
海外の選手が証明してくれています。

アメリカや中南米、欧州では、投げ込みや走り込みのような「○○込み」というようなことをやりません。
それをやらなくても上手くなれるし身体は鍛えられるということです。

 

プロ野球のキャンプが4勤1休や5勤1休が中心で3勤1休の場合もあります。
時間も14時くらいには終わります。
アメリカメジャーリーグのキャンプは11時にはチームの練習が終わると聞きました。

身体もできていて、体力もある選手が集まるトップのチームがこのくらいです。
身体も体力も未熟な子供たちは当然それ以下で練習を行うべきだと思います。

身体に大きな負荷をかけてやる練習は、少なくとも身体の成長が止まって大人の身体になってからだと思います。

本来、指導者はブレーキ役になるべきです。年齢が下がれば下がるほどその役割は重要になります。
成長期の子供たちにとって重要なことは、適度な運動と食事と睡眠です。
学生は特に、食事と睡眠が重要だと思っています。

食事は、生きるための栄養に加え、身体の成長に必要な栄養も摂取する必要があるのでとても重要になります。

睡眠は、成長ホルモンが寝ている間に最も多く分泌され、十分な睡眠時間を確保できなければ、疲労も回復せず、心身ともに成長の妨げになるということは言うまでもないと思います。
朝練や夜遅くまで練習があるために、睡眠時間を削るということは、当然故障のリスクも上がり、集中力も高い状態にならないので、練習してもなかなか身になりません。
練習だけでなく、授業中などの学校生活にも支障をきたすことにもなります。

適度な運動という部分では、成長度合いにもよりますが、可動域や柔軟性、瞬発力や俊敏性のような脳や神経や筋肉の連動を高めるためのトレーニングを適度にすることは重要ですが、骨がまだ成長している子供に対して、筋肉の量を増加させることが目的のトレーニングは必要ないと思っています。
身体をでかくして、筋力をつければ、試合での勝利は近づくかもしれませんが、成長期の子供たちにとって、もっと重要なことは、身体の成長を促し、将来を見据えることです。
筋トレや過度な食事トレーニングで早く身体を作るのではなく、少しでも身長を伸ばす努力をすることです。

過剰なトレーニングを肯定する意見はアマチュアの指導者から良く聞きますが、トレーニングの専門家や医療関係者から聞いたことはありませんし、科学的なデータも見たことがありません。

中身が濃く、質の高いトレーニングをすれば、それだけで選手たちは相当に疲労します。
その疲れた筋肉や関節をさらに酷使することで、故障につながったり、動きの質を低下させます。
動きの質が低下した動きを身体が覚えれば、パフォーマンスの低下になります。

成長のスピードは人により異なります。
なかなか伸びない時期もあります。
その時は、練習が足りないと、過度の練習をやらせることは逆効果になってしまうことがよくあります。
そういう時こそ、好きなことをして、好きなだけ食べて、ゆっくりと休むことを勧めるべきです。
自分から「上手くなりたい」「練習したい」と思わせることが指導者の役割です。
練習が義務になってしまっては、いい練習はできません。

 

「練習量と実力は比例しない」ということを認識する必要があると思います。
選手と指導者が一緒になり、少ない時間で効率的に上手くなるにはどうしたらいいのかを考え続けることで、創造力が育ち、チャレンジ精神が身につき、自分自身で成長できる選手に育っていくと思います。

創造性を育てる。

前回の投稿で、「創造性(創造力)」について書きました。

では、創造力をつけるには、どのようにしたらよいのでしょうか。
今回は、それを考えていきたいと思います。

 

創造力の豊かな人というのは、単純に、創造力を頻繁に使って育つ環境にいたということです。
創造力に乏しい人はその逆で、創造力を使ってこなかったので育っていないということです。

創造力を使う環境を作ってあげることで創造力が身についてきます。
創造力がない人というのは、どうしても失敗を恐れて、今までの方法や、決まりきったことをすることを選択しがちになります。
しかし、このような保守的な姿勢では、創造力は伸ばすことができないだけでなく、せっかく持っている創造力が失われていきます。
失敗を恐れることなく果敢にチャレンジする癖をつけることが大切です。

周りもチャレンジしやすい環境を作ることをしなくてはなりません。

創造力が豊かであればあるほど、チャレンジする機会は増えます。
当然、試行錯誤といったものが多くなり最初から成功するとは限りません。
早く結果を求めたいのなら、すぐに答えを与えるほうがいいのかもしれませんが、それでは考える力は身につきません。
子供が間違えた選択をしたり、ミスをしそうなとき、つい大人が介入したくなるかもしれませんが、そうしてしまうと子供は何も学ぶことができません。
例えミスをしてしまっても、チャレンジしたその姿勢を評価することは、次のチャレンジのハードルを下げることができます。

毎回とは言いませんが、子供を背後から見守り、そのまま子供に間違えさせておくことも必要です。
こういった経験から子供が学ぶことは、非常に多くあります。
また、子供の創造力を伸ばす助けにもなります。

いつも人から課題を出されてばかりいると、与えられることに慣れてしまいます。
そのことによって自分の意思、判断で行動する主体性は育たず、消極姿勢が育っていきます。
常に受け身でいれば、新しいことを発想するという意欲も育ちません。

様々な経験や知識によって、ひらめきが生まれ、創造力が身につきます。
受け身の姿勢にせずに、新しいことを経験させること、工夫させること、よく考えさせること、何かにチャレンジする意欲を育むことが、創造性を育てることになります。

良かれと思って手取り足取り教えたり、教えすぎることが、逆に可能性を狭めてしまうこともあります。

 

それ以外にも、創造力を高めたいのであれば、日々の常識をまず疑ってみることもトレーニングになります。

いつも行うような決められた練習でも、本当にそれがベストか?なぜ、その練習をするのか?と、疑って、自分の頭でもう一回白紙に戻して検証して考えてみることもトレーニングになります。
こういった思考のトレーニングは普段の生活のさまざまな場面でもすることができます。
このような考えを習慣にすることは、創造性を身につけるのにとても役に立ちます。

特別なトレーニングをしなくても、普段の生活や遊びの中での自由な発想から考える力が育まれていきます。

 

創造力が高まると、仕事と遊びをつなげて考えることができたり、普段の生活からスポーツの技術の向上につなげたりといったことができるようになります。
仕事も勉強もスポーツも人生も別々のものではなく、つなげて考えることができるようになります。

プロ野球選手を見ていても、食事が息抜きや気分転換でもありトレーニングでもあります。
ゴルフが、遊びであり、トレーニングにもなります。
野球自体が仕事であり、好きなことでもあります。
様々なことをつながって考えることができます。

 

創造力が高まると意欲が高まる。意欲が高まると、創造力が高まる。といったようないい流れを生むことができます。
創造力を磨くことは、「生きる力」をつけることでもあり、これからの時代を「生き抜く力」「社会で活躍できる力」を身につけることになります。

視点や観点を変えて考えることにより、発想の余地を感じ、そこから創造性が増していきます。
普段からどうすることがよいのかを考える習慣が身につけば、創造力はどんどん育まれていくと思います。

創造性(創造力)

プロ野球選手になる人となれない人の違いに創造力があります。
これは、野球教室や子供たちを指導しているときにとても感じます。
大半の選手にプロ野球選手が持っているような創造力がありません。

どうしたら自分が成長できるのかと考えるよりも、これは今までにやったことがないからできない。上手くいかなかったらどうしよう。というような考えが先行してしまい、自分の枠から出ることを恐れているように感じます。

指導者は、投げるや打つなどの技術を教えたがりますが、僕は創造力のほうがはるかに重要なスキルだと思っています。
そして、伸ばそうと思えば伸ばせる能力なので優先的に向上させたい能力だと思います。
創造力は、環境によって育っていく反面、環境により失われてもいきます。
創造力が育つ環境に選手を置くことが重要だと思います。

そんな創造力の話をしていきます。

 

創造力とは、自分の考えや技術で、新しいものをつくりだす力。ものを生みだす能力。などのことを言います。
つまり、スポーツでは、新しいスキルを身につけたり、今までできなかったことをできるようにするのに使う能力です。
喜びや楽しみを生み出す能力でもあります。

高い創造力を持っていると、身につけたい技術をひとつのやり方だけでなく、違った方法で習得したり、問題に対して他の人とは違う捉え方をすることができたりします。
他の人が怖くてできないようなリスクを取ったり、大勢に立ち向かい、自分の信念を守るだけの勇気があったりもします。
他の人が屈してしまった障害や課題を乗り越える方法を探し、チャレンジすることもできます。
創造力によって、どう自分自身を成長させようかを考えることができます。
普段やっている練習に対しても、「この練習は、本当に意味があるのか」「どうしたらもっとよくなるのか」といったような考えなので、どんどん練習がカスタマイズされていきます。

創造力のない選手は、思考の停止を意味するので、同じことを永久に繰り返したり、誰かと同じ行動をし続けたり、言われたことしかできない、といった行動になります。
自分から楽しみを生み出すことができないので、モチベーションも上下してしまいます。
これでは、なかなか上手くなることもできません。

創造力は、練習の意欲を上げるのにも、とても重要です。
「次は、こう練習したらこんなことができるようになるのではないか」
そう考えるだけでワクワクしてきます。
そうなると、さらに創造力が増し、もっと意欲が増します。
「早く、練習で試してみたい」というような感覚になっていきます。
進んで練習に取り組むこともでき、練習の質も量も上げることができます。

練習は大切ですが、根性勝負で、ただ辛い練習をしたり、長い時間を費やすだけでは効率的ではありません。
創造性を欠いた、機械的な反復練習よりも、探究心にあふれた練習こそ、意欲的に練習に取り組むことができるので、効率的な練習だと思います。

このように、創造性と意欲には、深い関係があります。
それは、創造性は、人間が持っている本能だからです。
特定の人だけに備わった才能ではなく、人間なら誰でも生まれ持っている能力だということです。
本能だけで動く子供が創造力に溢れていることからもわかると思います。

創造力が、やらされる練習ではなく、自分からチャレンジし、自ら練習をする原動力になります。
あるとないでは、成長に大きく関わってきます。

創造力の大きさは可能性の大きさでもあります。
創造力が働かなければ、それだけ可能性も狭まってしまいます。

これからの時代を生き抜いていくには、創造力はこれまで以上に重要になるのではないかと思います。
創造力は、まさに「生きる力」「生き抜く力」「社会で活躍できる力」であると言えます。

 

どのような場面で創造力が発揮されるのかを考えてみると、今のままでは不安だという、現状に対する不満が創造性を促したりします。
また、こんなやり方を思いついたという、ふと思い浮かぶこともあります。
行動を起こしていく過程で、新しい発想が生みだされることもあります。

スポーツは、本来、創造力を育むのに適しています。
スポーツとは、強制されて行うのではなく、自らの判断で、自由にプレーを想像して行うのがスポーツだからです。

創造力は、いろいろな場面で発揮されますが、創造力には、個人差があり、トレーニングによって育てることが可能だと思っています。
せっかく人間みんなに備わっている能力なので、それをさらに育てていく努力をするべきだと思います。

ACLやMCLの損傷を予防する。

前回、膝のACLと肘のMCLについて書きました。→ACLとMCL(前十字靭帯と内側側副靭帯)
その続きとして今回は、どのように予防したらよいのか、どのようなメニューを選手に提供するべきなのかを考えてみました。

テクノロジーの発展により、膝のACLと肘のMCLだけでなく、様々な怪我の研究が進んできています。
怪我の発生メカニズムがわかってきています。
トレーニングも日々発展してきています。

では、なぜこんなにトレーニングが発展し様々な研究が進み、科学的にも、怪我の発生メカニズムがわかってきているのに、多くの選手が怪我をしてしまうのかを選手目線から考えてみました。

 

それは、選手の目的は怪我や故障をしないためではないからです。
選手は、パフォーマンスを向上させるためや、試合での勝利を目指して、一生懸命になります。
そこを無視して、故障をしないためだけに、一生懸命に努力している選手を見たことがありません。

例えば、肘が万全で、バンバン試合で投げている野球選手に、「肘の故障の予防のために、このトレーニングをするように」と言っても、このトレーニングを続けられる選手はなかなかいないと思います。
膝でも同じで、今まで膝になんの障害もなかった選手に「膝の故障の予防に、このトレーニングを続けるように」と言っても、このトレーニングを続けられる選手はなかなかいないと思います。
そんな時間があるなら、パフォーマンスが上がるようなトレーニングや練習をやる方がいいと考えてしまいます。
こんなに、膝や肘を傷める選手が多くても、自分は大丈夫だと思っている選手が大半だと思います。
僕もそんな選手のひとりでした。
肘を傷める選手を見ても、自分は大丈夫だと思っていました。

選手は、自分のパフォーマンスを向上させることができると思ったら、傷めるリスクを考えずに、何百球も投げ込むということをします。
これをやれば試合に勝てるようになると思えば、何時間も走り込むこともします。

多くの選手は、「上手くなる」「強くなる」「試合に勝てる」などと思えば、自分の身体にマイナスだということは頭の中から消えてしまいます。

30年前は、当たり前で、今は、笑い話に使われ、みんながあり得ないと思う、練習中や試合中に「水を飲むな」というのも、その方が上手くなれる、強くなれる、試合に勝てる、と思われていたからそうしていました。

選手も指導者も、身体を守るという意識よりも、「上手くなりたい」「強くなりたい」「試合に勝ちたい」といった意識の方がはるかに強いということです。

30年後に笑い話になる、現代版の「水を飲むな」が、今やっていることの中に、存在しているということを頭の中に入れておかなければなりません。

 

では、どのようにアプローチするのが良いのかというと、選手が「上手くなる」や「強くなる」や「試合に勝てる」と思うような練習やトレーニングで、ACLやMCL損傷の予防にもなるメニューを提供するということです。

僕は、ACLやMCLを傷めないようにすることと、パフォーマンスを向上させることは同じだと思っています。

前回の投稿で書いたこと(ACLとMCL)は、パフォーマンス向上につながります。

ACLを守るために重要な、ハムストリングスと股関節の使い方を向上させることは、ストップ動作や切り返し、ジャンプの着地などを安定させるので、そのような動作を行うスポーツでは、その競技自体のパフォーマンスの向上につながります。

野球では、投球の際に肘のMCLを守るために重要な、投球フォームや屈筋・回内筋群の収縮を向上させることは、球速、コントロール、スタミナ、など投げる動作の様々なパフォーマンスを向上させることにつながります。

ACLやMCLを守るためだけのメニューではなく、パフォーマンスを向上させるメニューでなければ傷めていない選手や傷めたことのない選手は、なかなかやりません。

現状、多くの指導者が選手の身体を守ることよりも、試合に勝てるようにすることを優先するので、その環境で育った選手が自分の身体を犠牲にしてでも勝ちに行くのは当然のことだと思います。

だからこそ、僕が心掛けるのは、パフォーマンスが上がり、勝ちに近づけるようになることと、怪我や故障の予防が両立できるメニューを提供するということです。

それと同時に、選手の知識を増やしてあげることも重要なことです。
フォームや動きの改善、トレーニングの研究、疲労に応じて必要になる休息時間の把握、動きの違いによる靭帯への負担の違いの理解、等、選手自身で取り組めるようになることで、パフォーマンスの向上にも、怪我や故障の予防にもなります。

手術の技術が上がり、靭帯を断裂しても、復帰できるようにはなってきました。
しかし、1番大事なことは、受傷しないことです。
そのためには予防をすることです。
予防をすることによって、膝のACLや肘のMCLを損傷したり断裂する選手がいなくなることを願っています。

ACLとMCL(前十字靭帯と内側側副靭帯)

先日、膝の前十字靭帯(ACL)再建手術の経過の確認で診察に行ってきました。
術後5年経ち、お陰様で全く問題なく、完治したと言えるくらい回復しました。(ドクターのお墨付きもいただきました)
肘も肩も手術したことがありますが、これも完治したと言っていいと思います。

野球選手でACLの手術を受ける選手はほとんどいませんが、サッカーやラグビー、バスケットボール選手などには多くいます。
特に女子サッカーや女子バスケの選手には、かなり多くの選手がACLの手術をしています。(高校生で3度手術している選手を見たことがあります)

野球選手は、トミー・ジョン手術と言われる、肘の内側側副靭帯(MCL)再建手術を受ける選手が多くいます。
最近では、大谷選手が手術をしました。
トミー・ジョン手術は内側側副靱帯を損傷した選手に対して、プロ選手のみならず若いアマチュア選手の間でも手術されるようになっています。

その膝のACLと肘のMCLの損傷や断裂について考えてみます。

 

ACLやMCLの損傷は、スポーツの問題のひとつだと思います。

ACLやMCLは、断裂してしまえば、自然に修復することはできないので、他の靭帯を移植する手術が必要になります。

あまりにも多くの選手が膝のACLや肘のMCL再建の手術をし、競技人生を短くしたり、引退に追い込まれたりしています。
そして、同じ選手が何度も同じ手術をしているという現状もあります。

しかし、ACLもMCLも、どちらも知識があり、予防の意識を持つことで、かなり防げるのではないかと思っています。(個人的には接触での怪我以外は限りなくゼロに近づくと思う。)

僕自身、ACLは断裂、肘のMCLは損傷していますが、予防という意識がなかった結果、そうなったと思っています。

今なら、知識が付き、どう予防すればいいのか、わかっているので、自信を持って傷めないと言えます。

ACLは、接触プレーでは、防げない場合もあると思います。
しかし、接触以外で傷めることは防ぐことができると思っています。僕が傷めたのもそうですが、多くが、止まる動作や切り返しや着地の時に傷めてしまいます。

野球選手の肘のMCLは、接触プレーで傷めるわけではなく、投げることによって傷めるのでこれは防ぐことができると思っています。

ACLを守るには、大腿四頭筋(前もも)とハムストリングスが重要になります。
大腿四頭筋が単独で収縮するとACLには、伸ばされるストレスがかかります。
これに対して、ハムストリングスを収縮させることで、ACLを助けることができます。
実際のスポーツ場面では、ストップ動作や切り返し動作で大腿四頭筋のみではなくハムストリングスも収縮させることで、膝関節は安定し、ACLにかかるストレスは減らすことができます。
特に、女子選手を見ていると、筋力が低い上に、ストップ動作の際にハムストリングスがうまく働かず、大腿四頭筋優位でストップする傾向にあるように思えます。
(野球の投手で、投球の際に、ステップした脚の膝が割れたり、グラつく選手も同じで、着地の時に、ハムが収縮していないから膝が安定しない。)
そのためには、大腿四頭筋とハムストリングスに注意を向けるだけではなく、そこが上手く機能するように、股関節のアライメントや動きに注意を払わなければなりません。

また、ACLが断裂したままプレーすると、半月板損傷も起きてしまうので、そのままプレーすることは、かなりのリスクがあるといえます。
競技レベルにもよりますが、半月板や軟骨損傷などの傷害につながるので、そうなる前に再建手術を受けることが大切だと思います。

 

野球選手が肘を守るためには、投球フォームと回内・屈筋群の収縮が重要になります。
この筋肉の収縮が重要とはいえ、小さな筋肉なので、あくまで投球は、腕や手に頼るのではなく、体重移動と身体の回転運動優位で投げることです。
極端にいえば、肘を使わないで投げたら肘を壊すわけがありません。
これは肩にも言えることです。
肘関節や肩関節の負担をどう減らしていくかを考えることが大切です。

とは言うものの、投球数が増えたり、それに応じた休息期間や、球速による負担の考慮、などがなければ、疲労の蓄積により、傷めるリスクは上がります。
疲労が蓄積されれば、柔軟性が落ち、可動域が十分に確保できず、フォームに問題が出ることが考えられます。
筋肉が働かなければ、関節に負担がかかります。

受動喫煙も血流を悪くするので、故障の発症要因になると言われています。

 

様々な方向からリスクを減らす努力をすることで、スポーツ選手の怪我を予防できると思います。
僕自身が、ACLやMCLについて、経験し、自分自身の身体を使って検証し、学んできた中で思うことは、もっと予防できるということです。
サッカーやバスケットボールの指導者なら膝のACLの知識。
野球の指導者なら肘のMCLの知識を持つことは選手のために重要なことです。
多少の知識があるだけでも、今よりも格段に選手の身体は守られるようになると思います。

 

ACLやMCLの損傷や断裂の予防についての話は、また、次回しようと思います。

成長するのに大切な思考。

優れたスポーツセンシングを持った人とは、思考技術に優れた人のことです。

技術なので、投げるや打つといったような技術と同じで、無意識に落とし込んで、自動化された技術になるようにしなければなりません。
つまり、行動を決めるときに考えて決めるのではなく、自動化された脳が自然と行動を決めるようにすることが大切です。

優れたスポーツセンシングを持った人とそうでない人の違いのひとつである行動を決める思考について考えてみます。

 

スポーツセンシングのある人と、ない人の思考の違いのひとつに、「成長したい」「学びたい」という思考が先にくるか、「恥をかきたくない」や「自分をよく見せたい」という思考が先にくるかの違いがあります。

「成長したい」「学びたい」という思考のほうが強ければ、挑戦を喜んで受け止め、努力は成長へつながると考え、逆境に立っても批判を受けても成長につながると考えるので耐えることができます。
他の人の成功から学んだり、真似たりすることもできます。
根本にあるのが「成長したい」「学びたい」という考えのため、全てをどんどん吸収し、高いレベルへと成長していきます。

それとは反対に「恥をかきたくない」や「自分をよく見せたい」という思考のほうが強いと、失敗する可能性がある挑戦を避けたり、努力は実を結ばないと思ったり、諦めが早かったりします。
批判やネガティブな意見に対し、自分で考えずに同意してしまったり、他人の成功に焦りを感じます。
自分の評価を、「よく見られているか」「賢く見られているか」「成功しているのか」「バカに見られていないか」と考えてしまいます。

そうではなく、自分の評価は「まだこれから」と思い、努力によって変えられると考えることで、情熱を持ち練習やトレーニングを続けることができます。

行動の基準が「上手く見せること」ではなく「上手くなること」ということです。
上手く見せようと練習すると、「ミスをしない」ということを考えてしまうので、チャレンジすることをしません。
上手くなろうと練習すると、どうしたら成長できるかを考えるので、どんどんチャレンジできます。

例えば、プロ野球選手が行う、野球教室で、たくさんの選手がいるところで「誰か出てきて見本で投げてみて。それを教えるから」と言ったとします。
多くの選手は手を上げませんが、成長する選手は、上手い下手関係なしに手を上げます。
それは、「恥ずかしい」や「上手くできなかったらどうしよう」と思う以上に「上手くなれる」「直接教えてもらえる」といったような思考を持っています。

それは、学校の授業でも同じです。
例えば、数学の授業で、「誰かこの問題を前に出てきて解いてください」と言われたときに、わからない時こそ手を上げて前に出て、解くべきです。
そうすれば、自分のわからないところを、先生に教えてもらえるので、成長につながります。

 

このスポーツセンシングのある人と、ない人の思考の差はとても大きいと思います。

センスは、持って生まれた能力ではなく、家庭や環境などから、後天的に身につけた能力というのが僕の考えです。
この「成長したい」や「学びたい」と「恥をかきたくない」や「自分をよく見せたい」という2つの考え方も環境によって変わってくると思っています。

小さい頃から、いいプレーをしたときに「才能があってすごい」と褒め続けるのと「よく練習してすごい」と褒め続けるのでは違います。
才能や能力を褒め続けられると、その選手は、いいプレーができなかった時に「能力がない」「才能がない」というように感じてしまう傾向にあります。
そうすると、上手くいかないプレーが続くとチャレンジしなくなり、簡単にできることばかりやる傾向になります。
上手くいかないと楽しむこともできなくなり、どんどんやる気をなくしていきます。

それに対し、努力を褒められ続けると、上手くいかないときに、もっと努力をしようと考えます。
努力することに意義を感じるので、難しいことへもチャレンジし楽しむことができます。
チャレンジを楽しめるので、練習も続けられ、成長につながります。

このようにして環境によってセンスが磨かれていきます。

この2つの考え方は、評価に対する考え方も違います。
成長する人は、今までの自分と比較して成長していることを評価します。

それに対し、周りの人と比較して自分の評価を決めます。
これは大人になれば必要ですが、子供のうちは成長スピードにも個人差があり、たまたま良いライバルがいれば良いかもしれませんが、自分が成長しなくても周りよりも優れているから良いと考えてしまっては成長が止まってしまいます。

 

「相手がどう」と考える前に「自分がどうなのか」を考えることが大切で、自分の能力は自分自身の努力で変えていけると考えることが重要です。
もちろん、努力をしたからといって、イチロー選手や大谷翔平選手のようになれるかはわかりません。
しかし、自分の能力は、まだわからないと考えることで、練習やトレーニングを高い意識を持って、続けることができると思います。

ウォーミングアップとトレーニング。

競技をするにあたり、ウォーミングアップは大切です。
これは多くの人が認識していると思いますが、本当に最適なウォーミングアップができているのかと考えると疑問が残ります。
それは、僕自身が、現役のころにしてきたウォーミングアップを思い出すと、もっといいアップができたのではないかと、強く思うからです。

今まで、やってきた中や、見てきた中で特に思うことは、
「ウォーミングアップとトレーニングを明確にするべき」
ということです。

そんな考えを書いてみました。

 

野球では、ウォーミングアップがトレーニングを兼ねていることがよくあります。
指導者やトレーナーはそう思ってやらせていますが、やっている選手は、アップだと思ってやっていることがほとんどです。

では、なぜアップをするのかというと、「怪我の予防」と「ベストパフォーマンスをするため」だと思っています。
そのために必要なことは、まず、体温を上げることです。
体温が上昇することで体内の血液の循環が良くなり、酸素の供給がスムーズになります。
それにより、筋肉の温度も上がり、筋肉の柔軟性が高まります。
そこで、筋肉や関節を伸ばすことで、可動域を広げることができます。
筋肉の動きと神経のつながりを高め、反応を良くすることにもなります。
血流がよくなることで、脳も活性化します。

自律神経を整えることで、心理面でも試合や練習の準備をします。
集中力を高めるだけでなく、緊張感が過度にある場合はストレッチなどで緊張をほぐすこともできます。

一度、心拍数を上げておくことで、心肺機能を激しい運動に順応させることもアップでやらなければならないことです。

また、その日の体調を含めた、自分の身体をチェックすることもアップの重要な要素です。

ウォーミングアップが不足すると「怪我の予防」と「ベストパフォーマンスをするため」という、アップの目的を果たせません。
逆に、やりすぎて、疲れてもベストパフォーマンスは出しにくいので、やりすぎも良くないということです。

瞬発的な運動前には体温が低すぎたらパワーが発揮できないので体温を上げる必要があります。
逆に、体温が高すぎたら、早期に疲労してしまうので、持久的な運動前には体温を上げ過ぎないようにします。

それに対してトレーニングは、「競技力を高めるため」に行います。
スポーツをする上で必要な基礎的な体力に加えて、野球選手として必要な体力を強化することや技術を身につけることがトレーニングです。
ポジションにもよりますが、瞬発力や素早い動きができるよう、筋力や瞬発力を高めたり、呼吸、循環器系の働きを高める持久力のトレーニングも競技力を高めるためには大切です。

 

このように考えると、やっている選手が、どこまでがウォーミングアップで、どこからがトレーニングかを理解していないと、アップが十分だと感じている選手は体力の温存をしようとします。
そうなるとトレーニングの効果が十分に得られるか、わからなくなります。
選手それぞれが、そのメニューを何のためにやっているのか、理解することが重要です。

例えば、アップで行うアジリティのメニュー。
加速、減速、スピード、方向転換、身体操作などを高めるために行います。
そのため、いかに素早く身体を動かせるかという神経系の伝達を高めるためのメニューです。
高速で身体を正確に自由に動かせるようになるためのものですが、よく見るのが、アップの中に入っているので、ウォーミングアップの延長になっていることです。
効果的なメニューにするには、全力で動くことで、ゆっくりやってしまうと求めている効果が期待できないということです。

そうならないためには、ウォーミングアップとトレーニングを明確にするべきだというのが僕の考えです。
何のために何をしているのかを明確にするということです。

 

アップで、自分の身体と向き合わず、何も考えずにアップしていては、いつまでたっても自分の身体を把握できません。
大きな声を出させることを求め、身体を動かさせ、とりあえず走らせて温まっている状態にするというのでは、アップの目的を果たせるとは思えません。

大きな声を出さなくても心理面の準備を進め、自分自身で、練習や試合に対して準備できる選手に育てていくことが重要だと思います。

ひとりで、自分の身体と向き合いながら「怪我の予防」と「ベストパフォーマンスをするため」の準備ができるように導いていくことは、指導者が選手にしてあげなければならないことのひとつではないかと思います。

捕手に必要なスキル。

今回は投手ではなく捕手について考えてみます。
考え方は、投手だろうと捕手だろうと同じです。
何のために練習をして、それによって何ができるようになるのかです。

そのためには、捕手が試合で要求されるプレーは、どのようなプレーがあるのかを知っておく必要があります。

そんなことを考えてみました。

 

捕手に必要なスキル。

・構え
・キャッチング(フレーミング)
・ブロッキング
・スチール阻止
・バント処理、打球処理
・送球捕球、タッチ
・中継プレー(判断、声)
・サインプレー
・バックアップ
・挟殺プレー
・WP、PBからの送球

 

ひとつずつ説明していきます。

・構え
構えが悪いと、キャッチングやブロッキング、スローイングも上手くいきません。
サインを出す時の構えも考える必要があります。膝やミットを上手く使い、ランナーやランナーコーチャーからサインを見られないようにすることも重要です。

・キャッチング
投球をしっかり捕ることはもちろんですが、フレーミングといわれる、ストライクゾーンにきたボールを確実にストライクを取ってもらい、どちらとも取れるようなギリギリ際どいコースのボールをストライクに見せる技術です。
データ上では、このフレーミングの技術が捕手の能力の中で、最も試合の勝敗に影響を与えるといわれています。
盗塁を阻止することが目立ちますが、それよりもフレーミング技術の方が、はるかに使う機会が多いのでしっかり磨くことが重要です。

・ブロッキング
ワンバウンドの投球を止める技術です。
ロッテ時代、里崎さんは試合前に欠かさずに、スローイングと合わせて、練習していたことを思い出します。

・スチール阻止
盗塁には、2盗、3盗、ディレードスチール、1塁3塁ダブルスチール、1塁2塁ダブルスチールがあります。
盗塁に素早く反応し、早く正確に投げる技術です。
試合の流れを変えることができるプレーでもあります。

・バント処理、打球処理
打球への反応を含めた、ボールを捕球するまでの速さ、捕球から送球をまでの速さ、送球を含めた正確性などが重要です。
キャッチャーフライに対する、対応も大切なスキルです。

・送球捕球、タッチ
送球を捕る技術と、そこからタッチにいく技術です。
状況に応じて、捕り方を判断する必要があります。余裕があれば、ハーフバウンドを下がって捕ったり、前に出て捕ったりできますが、間一髪ならそのままベース上で勝負しなければなりません。
満塁では、フォースプレーになるので、触塁の技術も必要になります。

・中継プレー(判断、声)
カットマンを使うのか、ダイレクトに送球させるのかを、瞬時に判断し、それを野手に伝えることです。
どこに送球させるのかを判断し、伝えることも重要です。

・サインプレー
けん制球、バントシフト、ピックオフなどがあります。
投手や野手とタイミングを合わせることが重要です。

・バックアップ
主に1塁への送球が暴投になったときに備え、カバーに走ることです。

・挟殺プレー
ランナーを塁間に挟んだ時のプレーです。
判断力と走りながら投げたりするスキルが必要です。
チームによって決まり事が違うので、それを理解した上でプレーを選択します。

・WP、PBからの送球
ワイルドピッチやパスボールの後のスローイングです。

 

上記のスキルから、相手を観察し、データと組み合わせ、配球を考えることも重要なことです。
また、打者を打ち取るための考え方や、試合で勝つための考え方も持っておく必要があります。

捕手に限ったことではありませんが、特に捕手は目の使い方が重要になります。
周辺視野を含めた視覚や聴覚を使った判断力もスキルになります。
目の使い方が悪いと、ピンチになるとキャッチングやブロッキングが変わってしまったり、大舞台になればなるほど、パフォーマンスが落ちたりしてしまいます。
ピンチやチャンス、プレッシャーに強い選手は、目の使い方が優れています。
それだけでなく、相手を観察できるので、配球を考えることができたり、相手の作戦に気がついたりできます。
また、相手だけでなく、チームメートの観察もできるので、試合を優位に進めるのにも役に立ちます。

 

捕手はやることがとにかく多いので、プランを立てて時間を有効に使うことが大切です。
試合になれば、相手チームの情報を頭に入れなければいけません。
自チームの投手の能力や性格も把握しなければなりません。
でも1番やらなければならないことは、自分の成長を考え、行動することです。
そのためには、自分を客観的に見る能力を養い、どこをどう成長させるべきかを考えることができる選手になることです。
この投稿に、そのヒントになることが少しでもあればと思います。

投手に必要なスキル。

前回「投球に必要なスキル。」を説明しましたが、投手は投球以外にも試合に勝つためには、身につけておきたいスキルがあります。

投球技術を身につけるのと同様、この能力を身につけるために、今これをしていると思って練習に取り組むことが大切です。

今回は、前回の投稿で書いた投球以外で投手に必要なスキルを説明します。

 

投手が試合で関わるであろうプレーは以下です。

・ベースカバー
・打球処理
・バント処理
・バントシフト
・けん制球
・スチール阻止
・挟殺プレー
・カバーリング

今回も1つずつ説明していきます。

・ベースカバー
1塁ゴロの時の1塁のベースカバーです。
バッターランナーよりも早く、送球を捕りながらベースを踏むという技術です。
一塁手からだけでなく、1、2塁間の打球に対して、二塁手からの送球を捕ることもあります。
また、1塁ゴロのダブルプレーでは、遊撃手からの送球を捕ることもあります。
プロ野球では、1塁ゴロがいきそうな打者が打席に立つたびに、捕手や一塁手から「カバー遅れるな」と必ず声を掛けられます。

・打球処理
ゴロやライナーの打球に対する守備です。
捕るだけでなく、ダブルプレーを狙うときなどは捕ったら素早く、正確に投げることも要求されます。
優先は投球なので守備を重視するあまり、投球の質が落ちるのは本末転倒です。まずは自分のベストの投球をして、その中で守備をします。
1塁のベースカバーの声掛けもそうですが、ダブルプレーのときの確認もプロ野球は徹底しています。2塁に誰が入るのか、どこに投げるのか等の確認は、アマチュア野球よりもはるかに徹底しています。
プロ野球選手とは、アマチュア選手ができないようなプレーをすると思われがちですが、もちろんそれもありますが、それ以上に、単純な慣れてしまうようなプレーに対して、全力で準備できることでもあります。

・バント処理
バントに対する対応です。
読み。ボールを捕球するまでの速さ。捕球から送球をまでの速さ。送球を含めた正確性などからなります。
視覚と聴覚を使った判断力もスキルになります。

・バントシフト
野手との連携プレーなので、自分のタイミングだけでは投げられません。
野手とのタイミングを合わせ、自分の持っている投球をできなければなりません。
相手がどう動くのかを感じ、それに対応します。

・けん制球
タイミング、ターンの速さ、球の速さ、正確性、等が重要です。
2塁や3塁へのけん制球では、野手とタイミングを合わせることをしなければなりません。

・スチール阻止
間、タイミング、クイックモーション、けん制、等の組み合わせによりランナーにスタートを切らせないようにします。
けん制球を投げる雰囲気(気配)や打者に投球する雰囲気を出さないということも重要です。
ランナー1塁3塁のダブルスチール時のサインプレーもあります。

・挟殺プレー
ランナーを塁間に挟んだ時のプレーです。
判断力と走りながら投げたりするスキルが必要です。
チームによって決まり事が違うので、それを理解した上でプレーを選択します。

・カバーリング
ホームや3塁(時には1塁)への送球の暴投に備えてバックアップするということです。
特に試合では、打たれたショックからスタートが遅れがちになりますが、そこを如何に早くカバーにいけるかで、傷口を広げずに済みます。

 

これらは、自分自身を助けるプレーであり、チームを助けるプレーです。

ただ、間違えてほしくないのは、投手のスキルの優先順位は、前回の投稿で書いた、投球に必要なスキルです。
どちらも大切ですが、まずは投球のスキルがなければ試合にも出られないし、上のレベルにもいけません。
勝利に最も近づくのも投球のスキルを上げることです。
年俸約30億円の大リーグ屈指のピッチャーであるジョン・レスター投手は先発ピッチャーでありながら、フィールディングやけん制球ができません。
けん制球に関しては年間で1度も投げなかったこともあります。
それでも年俸約30億円の選手です。
このことからも、優先順位は投球技術であるということがわかると思います。

 

前回の投球のスキルや今回のスキルを身につけるために、日々の練習があります。
ただ闇雲に練習するのではなく、何ができるようになるためにやっているのかが重要です。
練習やトレーニングをやることが大切なのではなく、試合で役に立つスキルを身につけることが大切ということです。

投球に必要なスキル。

僕は、何の練習をするにも、練習は手段でなく目的そのものという考え方を持っています。
練習のための練習ではなく成長するためであり、試合で結果を出すために行います。

その練習をすると、どうなるのかを考えて練習に取り組むことが重要です。
投手では、どのようなスキルを向上させたいのかを明確にすることです。
練習ありきではなく、向上させたいスキルを考え、そのための練習を考えます。

投球に必要なスキルを考えると以下になります。
僕の考えなので人によって多少変わるかもしれませんが、参考になればと思います。

 

投球に必要なスキル
・スピード
・球筋
・球威(打者が感じる球の力)
・コントロール
・変化球
・セットポジション
・スタミナ
・リカバリー

これを基に、このスキルをどう使うのかが重要で、配球などの打者を打ち取るための考え方と、試合で勝つための考え方が合わさって投球の能力になります。
僕が思いつくのはこんな感じですが、まだまだあるかもしれません。
この中のどれをターゲットに練習するかを考えることが重要です。

1つずつ説明していきます。

・スピード
スピードガンに表れるスピードです。
あるに越したことはありません。
ドラフト会議を見てもスピードがある選手が高い評価を受けています。
僕が指導をするときに、子供たちには言いませんが、大人には、とにかくスピードを上げるにはどうしたらいいかということを考えさせます。
子供の頃にやることはスピードを上げることではなく、その土台を作ることの方が重要だと思っています。

・球筋
球の質のことを言っています。投げたボールの角度、回転軸、回転数などの違いにより球筋が変わります。
定量化されたデータを基に判断できます。

・球威
打者が感じる球の力を言っています。
スピードガン以上に速く感じる投手や、球が重いといったようにバッターに感じさせるような球の力です。
数値化されない球の力を言います。
力の方向がズレていると球威を感じさせることが難しくなります。
バッターによって感じ方が変わることもあります。
僕は、球威は、ピッチングの中でかなり重要だと思っています。

・コントロール
野球はストライクを投げなければ始まりません。
ストライクを投げられることがピッチャーの最低条件になると思います。
あるに越したことはありませんが、スピードの方が重要だと思っています。
最近のメジャーリーグのフォアボールが少なく、コントロールが良いと言われている投手を見ると、細かいコントロールを持っているというよりも、甘いコースに強い球をどんどん投げこんでいるように見えます。
逆に、スピードや球威がなければコースを突く必要があるのでボール球が増えてしまいます。
このようなことから最低限のコントロールがあれば、あとは、スピードや球威の方が武器になると思います。

・変化球
ストレートを基準にボールの軌道を変化させたボールのことです。
大切なことはバッターに変化球であることを早く気づかれないことです。
極端な言い方をすれば、最後までバッターに変化したことに気づかれなければ、数センチ変化するだけで打ち取ることができます。
近年では「ピッチトンネル」という、違う球種をどれだけ同じ出だしで投げることができているかを数値化したデータもあります。
出だしを、違う球種でも同じにすることで、打者が球種の違いを認識しづらくなるということです。
または、バッターの予測を裏切ることです。
このくらい曲がるだろうというバッターの予測以上に曲がれば空振りがとれます。
逆に、このくらい曲がるだろうと思っているバッターの予測以上に曲がらなくても空振りします。
抜けた変化球やフォークボールが落ちなくて空振りするケースがそれにあたります。
なかなか狙って投げることは難しいですが、できたら有効なボールになります。

・セットポジション
セットポジションの中にクイックモーションも含まれます。
ランナーがいてもいなくても自分のバランスで投げられることが大切です。
ランナーが出ると自分のリズムで投げることが難しくなりますが、それでもリズムを崩されないのは大切な能力のひとつ。

・スタミナ
多くの球数を投げたり長いイニングを投げたりしてもパフォーマンスが落ちない能力です。
心肺機能が重要視されることが多いですが、必要なことは、身体操作の部分です。
非効率な動きは身体の一部分に負担が集中したり、代償運動により余計なエネルギーを使うことになってしまうからです。
投手のスタミナとは、技術であるとも言えます。

・リカバリー
イニング間で筋肉を回復させる力や試合での疲労を回復させる力です。
毛細血管の数を増やすことでリカバリー能力が向上します。
登板後のリカバリーとして重要なことは、栄養と睡眠です。
行動によって回復させるだけでなく、回復力もスキルということを忘れずに向上させることが大切です。

 

以上が投球に必要な能力です。
自分がどの能力を身につけたいのか。
今やっている練習で、どこを伸ばそうとしているのか。

何をするかではなく、何ができるようになるか、という考えを持って練習をすれば、成長につながると思います。

罰走の効果。

僕も試合で負けたら罰走。点を取られたら罰走。フォアボールを出したら罰走というやり方で育ってきました。
一昔前は当たり前で、ほとんどの選手が経験してきたことだと思います。
はたしてそのやり方がよかったのか。
僕なりの考えをまとめてみました。

 

結論からいうと、今の時代にはそぐわないということです。
それだけでなく選手の成長の妨げにもなる可能性があるということです。

練習や試合では、全力を出すことが成長につながります。
しかし、試合でどんなに頑張っても「負けたら走らなきゃいけない」「フォアボールを出したら走らなきゃいけない」とわかっている選手が試合で力を出し切ることは至難の技だと思います。
毎回そうなら試合後に備えて、無意識に走るための体力を温存するようになることは想像できます。
罰走があるから力を温存したり、試合や練習前に不必要に厳しい走り込みやアップをしたためにすでに疲れてしまい、力を出し切れなければ、正確に課題や問題点を見つけるのが難しく、技術の向上につながりにくくなります。

罰走は選手が成長するためと思ってやらせるなら、罰ではなく試合の結果がどうなろうと走らせるべきだし、ただの罰なら誰一人としてやらせるべきではありません。

メンタルを鍛えるためと言う人もいますが、鍛えられるか鍛えられないかもわからないことをするよりも、そこを専門にトレーニングする、メンタルトレーニングをした方が効率的です。
また、そこを専門に勉強している優秀なメンタルコーチも存在します。そういう専門家に頼むべきです。

 

僕の考えは、論理的思考力や探究心、創造性の先に忍耐力のような耐える力があると思っています。

「継続は力なり」は、おそらくプロ野球選手はみんな持っている考えだと思います。
しかし、論理的思考力や探究心、創造性がない選手が、「継続は力なり」を信じすぎると、積み重ね以外の発想は出てきません。
指導者も同じで、論理的思考力や探究心、創造性がない指導者は、選手にもひたすら継続するよう迫ってしまいます。
上手くいかなければ「もっとやれ」「もっと続けろ」は危険な可能性もあります。
大きく成長したり、殻を破るのは、論理的思考力や探究心、創造性を持ち、何かの思い込みをやめることが必要です。

思考を停止させて、耐えることを選択する前に、問題や課題を解決することを一番に考え、その考えが、耐えることによって解決に向かうと思えて、初めて耐えることを選択するべきだと思います。

練習は上手くなるためにやるのであって、罰を逃れるためにやるわけではありません。
それが染み付いてしまうと、選手が自分から上手くなるための練習を選択できなかったり、自分からハードな練習に取り組むことができなくなります。

そういう意味では、野球界のランニングは、改善しなければいけない部分のひとつではないかと思います。
すべてのチームがとは言いませんが、多くのチームが、ランニングは野球が上手くなるための手段でなければならないのに、選手からしてみれば、ただ走らさられるだけなので、走ることが目的になっていることがあります。
ランニングの意図も説明されず、負荷も強度も曖昧です。
最低でもランニングの意図を理解し、心拍数を測り、インターバルを個別に決めることぐらいはしなければならないと思います。
みんなで同じ距離、同じ量を走るのでは、人によって負荷が違います。
走力がある人にとっては低負荷ですが、走力がない選手にとっては高負荷になります。
僕は、中距離~長距離を走るのが得意であったためにランニングメニューはいつも楽でした。
これは、ランニングメニューで体力を奪われて、自分のやりたい練習ができなくなることが嫌で走れるように練習していたからです。
今思えばかなり無駄なことをしていましたが、そういう時代だから仕方のないことだったのかなと振り返ったりもします。
ランニングメニューがなければ、体力も時間も奪われずにもっと必要な練習に費やすことができたのではないかと思います。

 

今、社会の変化に対応した人を育むために、文部科学省が新学習指導要領を導入し自ら学ぶ力を身につけさせようとしています。
そんな中で、「失敗して罰せられたくないから頑張る」という考え方は真逆の考え方だと言えます。
野球に当てはめると、今までは、与えられた練習をしていましたが、これからは、その練習によって、何ができるようになるのか、まで考えられる選手に育てることです。
つまり、与えた練習ではなく、上手くなるために何をするべきかを、自ら考えられる選手に育てることが求められています。
スポーツ庁からは「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」が出され、自ら考えられる選手には、今まで以上の成長が期待できるのではないかと思います。
これが定着したら日本からもメジャーリーガーが、もっと出てくるのではないかと思います。

やる気を引き出す。

前回の投稿で、「やる気。」の話をしました。
その続きとして、どうやる気を引き出すのかを、さらに考えてみたいと思います。

 

前回のおさらいになりますが、自らの行動と、そこから得られる快感の結びつきでやる気がでます。

自ら決めた目標を達成することで、快感を得ることができます。

「練習しても能力が上がらない」「練習しても目標が達成できない」ということは、やる気の出ない理由のひとつです。
それが続くと「練習しても能力が上がらない」「もうできない」と思ってしまい、練習を続ける意欲がなくなって、ますます能力が上がらないという悪循環に陥ってしまいます。
成功体験を積むことができないだけでなく、「努力しても無駄」ということを学習してしまいます。
そうなると、練習をやろうとしても、ワクワクすることもなくなってしまいます。

この悪循環に陥らない方法として考えられるのは、チャレンジする目標を、自分の実力よりも、少し上に設定することです。
「少し難しそうだけど、頑張れば何とかなる」と思えるくらいのレベルです。
挑戦レベルとスキルレベルのバランスを保つことが重要になります。

悪循環を断ち切るもうひとつの方法は「成長や結果を待つことができる選手になる」ということです。

僕の見てきた一流選手は、みんな、成績が上がらなくても、結果や成長を待つことができる選手です。
「一生懸命練習したけどできなかった」
そこで、やる気を失うのではなく「次は大丈夫。次はできる」と自分を励まし、またチャレンジします。

未来を予測し、上手くいくイメージを持てるので結果を待つことができます。

的確な目標を立てて、意欲的に練習に取り組む。
上手くいかなかったり、ミスをしても、それを通じてリフレクションを繰り返しながら、次のステップに向上していく。
自らの思考で、こうしたサイクルができるようになると、やる気を保てるので、結果的に成長が期待できます。

まわりの人ができるアプローチとしては、上手くいかないことがあったとしても、成長しようと取り組んでいる姿勢を褒めるということです。
成長を目指し、努力を重ね、成長していく過程自体が快感になると、厳しい練習にも取り組めるようになっていきます。
特に子供は、褒められることがモチベーションになりやすいので、効果的だと思います。

 

やめられなくなるという状態を作るのに大切なことは、「練習すると、ホッとして、落ち着く」というようになることです。
そのための方法として、心地よく思える練習場所を作るということです。
プロ野球選手でいうと、ピッチャーならトレーニングルームであったり、野手なら室内のバッティングゲージといったところです。
そこに行くと、落ち着いて、自分自身と向き合って練習に取り組むことができます。

ジムでトレーニングを続けている人や、ゴルフの打ちっぱなし練習場に通い続けている人、決まったカフェや図書館などで勉強すると、はかどる、というのも同じだと思います。

 

なにかにハマたり、やる気をコントロールするのは脳です。
脳の活性化はやる気を生み出します。

そのためには、姿勢をよくする。

食事をしっかり食べ、栄養のバランスに気をつける。
よく噛んで食べる。

睡眠リズムを整え、適度な睡眠時間を確保する。
睡眠不足は、疲労を蓄積させ、脳活動を低下させます。やる気の低下や集中力がなくなったりします。
練習は、動きを覚えることではなく、動きを理解し、定着させることが重要です。
記憶は、睡眠中に定着すると言われていることからも、頭の中に課題を抱えながらしっかり寝る、ということが練習の効率を高めます。

 

脳を活性化させ、集中力を高めるのに、眼球を上手く動かすことも、テクニックのひとつです。
人は、集中するとき、目線をある1点に固定します。
目線は固定し、眼球をいかに動かすかが、集中するときの目の使い方です。
目線は固定しますが、眼球の固定ではなく、集中してどこか1点を見つめる場合、頭の僅かな動きをキャンセルするように、眼球を動かす必要があります。
スポーツで動いているときは、なおさらです。
カメラの手ぶれ防止機能のようなイメージです。

この目の使い方が、子供がゲームにハマっているときにしている目の使い方です。
これが、練習や勉強のときでも同じようにできなければ、なかなか夢中になって、やらずにはいられないという状況にはならないと思います。

このように、脳を上手く使い、活性化させるには、脳によい習慣を、多く身につけることが必要です。

 

指導者が選手を見るときに、比べる対象を、指導者の中の理想ではなく、それまでの選手のやり方にすることで、選手の成長を促すことができます。
野球が上手くなりたければ、頑張って練習するのではなく「野球が好きで、毎日練習せずにはいられない」という状態を作り出すことです。
学校の成績を上げたければ、頑張って勉強をするのではなく「勉強が楽しい」「勉強したい」という状態にすることです。

子供は、大人が導いてあげる必要があると思いますが、最終的には、自分の脳をコントロールして、自分の力で、この「やらずにはいられない」ということを作り出せることが重要だと思います。

やる気。

プロ野球選手とアマチュア選手の差のひとつに、やる気を生み出す能力の差があると感じます。
この能力を身につけている選手でなければ、上のレベルまで上がっていけないのが、現状だと思います。
そう考えると、投げるや打つという技術と同様に、身につける努力をする必要があるのではないでしょうか。
これは、本人が努力をするというよりも、親や指導者やまわりの大人が、どう身につけさせるかを考え、導いていくことが大切だと思います。

 

練習を、子供がゲームをやめられなくなるようなのと、同じ状態にすることが重要です。
大人で言えば、ギャンブルやたばこ、お酒、などをやめられなくなっている状態です。
それと同じように、仕事がやめられないという人も何人も見てきました。
周りから「やめた方がいいよ」「やりすぎない方がいいよ」と言われても、やめられない。
プロ野球選手も「そんなに練習をしないほうがいい」と止められている選手を多く見てきました。

「気がついたらまたやっていた」「いつの間に繰り返していた」というような、ハマっている状態に、どのようにするのかを考えてみました。

 

まず、覚えておかなければいけないことは「練習しろ」と言うことは、逆効果になるということです。
「練習しなさい」と言われれば、言われるほど、やりたくなくなるのは、人間の脳の仕組みです。
それが、厳しく言われたり、怒られたりとなれば、なおさらです。
「なんでやる気を出さない」「やらないお前が悪い」と怒るのは、恐怖により脳が委縮したり、反抗的な態度を引き起こすことになり、「やる気」を阻害してしまうことにつながります。

では、どのようにすることがよいのかと言うと、「練習すればこんないいことがある」ということを思わせるということです。
練習することにより、成長できたり、試合に勝利するといったような成功体験を感じさせるということです。

例えば、勉強をさせたいときに、親が「勉強をしなさい」と言い続けるよりも、親が「勉強してよかった」「勉強は楽しい」「たくさん勉強できるのが羨ましい」と伝えるほうが効果的です。
親が勉強している姿を見せることも重要です。
子供は、親の言うことは聞かなくても、人間の脳には、親の行動は無意識に真似してしまうという仕組みがあります。
姿勢や歩き方、しぐさが親と似てしまうのはこのためです。

仕事も「この仕事は楽しくて、意味もある」「世のため、人のためになる」と本気で思って働く方がやる気がでます。

「もっと練習をしておけばよかった」よりも「もっと練習を楽しめばよかった」と思わせるように導く方が、選手は伸びると思います。
楽しく練習できなければ、なかなかスキルも身につきません。
苦痛に耐えて練習するようでは、競技自体を長く続けるのも難しくなります。

いくら「練習をしろ」と言ったところで、選手に課題を抱えている自覚がなく、改善や向上しようという意思がなければ、どんなに選手のためを思い、言ったところで、選手には響きません。
選手が、自ら「ここを改善したい」「ここを伸ばしたい」と思わなければ練習の質は上がりません。
選手がどうなりたいのか、どんな課題を感じているのかを把握し、それに沿った練習を提供することで、選手は、やる気になります。

上手くなって褒められたり、いいプレーができたり、勝負に勝つ、という快感や、ワクワク、ドキドキした快感が、やる気につながります。

夢中で練習した。→いいプレーができた。
これを繰り返すことで練習にハマる状態を作り出せます。

練習をやらずにはいられない選手は、次の練習をやろうと決めると、こう練習したら上手くなるんじゃないかと、ワクワクしてきます。
そうなると、次の練習までの、私生活のレベルも上がります。
そして、グランドに入り練習すると、ホッとして、落ち着きます。
その状態を作り出せると、ハードな練習も、きつく思わずに、いつまでも練習できます。
練習が終わってホッとするのではなく、練習を始めると落ち着くのが、プロ野球の一流選手です。
夢中で練習した。→いいプレーができた。
を作り出せるので、それがいいスパイラルになり、練習がやめられなくなります。

 

やる気とは、自らの行動と、そこから得られる快感の結びつきによって出てきます。

練習をすすんで、繰り返し行える選手にするには「褒めて練習するのを待つ」ということが必要ではないかと思います。
大人が選手のためを思って「練習しろ」と言ったところで、選手のためにはならないということです。
まずは楽しいことだけをやらせる。
そこから少しずつ、成長する楽しみや、勝負に勝つ楽しみを教えていく。
さらに上を目指す選手には、大舞台になればなるほど、もっとワクワク、ドキドキするということを伝えていく。

これは、スポーツに限らず、勉強や他のことでも、人が成長するには大切なことであり、なるべく早い段階で、スポーツや勉強、習い事を通じて身につけたい能力だと思います。

人間のやめられなくなる仕組みを理解することで、お酒やたばこ、ギャンブル、薬物などにハマるのではなく、趣味や仕事、スポーツなどに夢中になれるように自分をコントロールできるようにすることは人生を充実させることにつながるのではないかと思います。

「上手い選手」「下手な選手」

「上手い選手」「下手な選手」とよく聞きますが、どんな選手が上手い選手で、どんな選手が下手な選手なのか、基準がないのではないでしょうか。

上手い選手が必ずしも強い選手とは限らず、上手くなったという基準も曖昧です。
そんな「上手い」「下手」について考えてみました。

 

僕の考える上手い選手とは、「最適な動作を無意識でできる選手」のことです。
つまり、「運動が自動化された選手」のことです。(優れたスポーツセンシングを持った選手)

選手が行う、上手くなるための練習やトレーニングは、プレーの動作が、歩くことや日常生活と同じように、競技の「無意識な動作」を獲得するために行います。

人の動きは、さまざまな筋肉を協調して動かして、初めて、そのやろうとしている動作が成り立ちます。
歩く動作を見てみると、足だけを動かして歩くわけではなく、頭の位置を移動して重心を変えたり、腕を振ってバランスを取ったり、全身のさまざまな筋肉の連動で歩きます。
人が行う動作は、身体全体の筋肉を協調させ、制御しながら、行っています。
このときに、いちいち「足をこう動かして、手はこう動かす」のようなことは考えずに、無意識な動作で歩いています。

それは、競技中の動きにも言えます。
例えば、投げる動作では、頭で考えながら動いているのではなく、脳が投げるという指令を出したら、無意識に、今までに覚えた身体の制御を、頭の中にある、引き出しから出して投げます。
(完全に無意識に、自動化されて投げることができる選手が、投げる動作の途中に、思考が入るのがイップスと言われる、運動障害です。かなり簡単に説明しましたが…)

最適な制御を行うためには、その動作を繰り返し行い、脳がその動作を「学習」する必要があります。
その学習するための手段として、トレーニングや練習が必要です。

このトレーニングや練習で行った、脳の学習によって得られるものが「無意識の動作」であり「運動の自動化」です。
僕は、これを勝手に「スポーツセンシング」と言っています。(僕が作った言葉です)

トレーニングや練習では、よりレベルの高い、運動の自動化(スポーツセンシング)を手に入れるために、脳と神経と筋肉の学習を行っています。

繰り返し動作を行うことにより、最適の動作を脳が覚えていきます。
より最適化されている動作を、身につけている選手ほど、上手い選手と言えるのではないでしょうか。

しかし、上手い、下手といったようなスポーツセンシングやスキルを数値化することがなかなかできません。
それは、今の技術では、運動中の脳の活動を、正確に測定できないので、スポーツセンシングのような、脳と筋肉の連携を数値化することができません。

そのため、筋力やパワーといったような測定でき、数値化できることに、トレーニングや練習の比重が偏りがちになっています。
野球やサッカーのような球技や、スキルが重視されるスポーツの一流選手は、優れたスポーツセンシングをベースに、戦術、思考、筋力、またそれを伴う、持久力、パワーなどを身につけて、パフォーマンスにつなげています。
どんなに優れた、筋力やパワー、持久力を身につけても、優れたスポーツセンシングがなければ、パフォーマンスにつなげることは、なかなかできません。

 

優れたスポーツセンシングを持った選手になることが、上のレベルに行くためには、とても重要だと思っています。
そして、歩き方や自転車の乗り方を忘れることがないように、1度身につけた、自動化された動作を忘れることはありません。
だからといって、練習やトレーニングが必要なくなるわけではありません。
スキルレベルと身体機能レベルの最適な組み合わせがパフォーマンスを向上させます。
疲労や体調、年齢、環境などにより、常に変化している身体機能に対応した、動作の最適化を微調整するために、練習やトレーニングはいつまでも必要不可欠であると言えます。

上手い選手になるために「どうやって、動作を身体に覚えさせるか」ということを考えなくてはなりません。