ブルペンでの肩の作り方。

僕がプロ入りしたときの監督がボビー・バレンタイン監督でした。
ボビーの下で野球ができたことが、僕の財産になっています。
その中で、ブルペンでの準備の仕方は、それまで経験したことがない、効率的なやり方でした。

日本のやり方とボビーのやり方、両方を経験して、個人的な意見ですが、日本のやり方は、変えるべきだと思っています。

日本のやり方と比較して紹介したいと思います。

 

まず、日本のやり方を紹介します。
日本のプロ野球でも、主流になっているやり方で、アマチュア野球では、ほとんどのチームが行っているやり方だと思います。

試合に投げる投げないは関係なく、必ず1回投球練習をして肩を作ります。
試合の日は、ブルペンで投げない日はないということです。

早めに1回、肩を作り、休んで出番を待つので最低でも2回、肩を作ってから試合に登板します。
3回、4回、肩を作って試合に出場することもよくあることです。
1度作った肩を、冷やさないようにするので、キャッチボールや投球練習を何度も行います。

それに対して、ボビー・バレンタイン監督が導入していたやり方です。
実は、ボビーのやり方というより、日本以外のやり方といったほうがいいのかもしれません。
僕の知る限り、日本以外の国は、このやり方をしています。(世界中の野球を知っているわけではありませんが…)

そのやり方は、まず、ベンチの指示がない限りキャッチボールすらできません。

ベンチからどうなったら投げるというのが明確に伝えられ、準備をしてくれとなります。
例えば「3番バッターで」や「何番で左バッターがきたら」のようにどうなったら登板するというのが、明確に伝えられます。

キャッチボールを含めて、バッター3人くらいの間で、肩を作らなくてはなりません。
肩ができたらブルペンからベンチに、準備ができたことを伝えます。
もし、間に合わない時には、ブルペンからベンチに連絡し、タイムを使うなどして時間を作ってくれます。

抑えを任されていて、最終回に投げる時は、8回の相手の攻撃が終わった瞬間にブルペンの電話がなり、そこから準備をしていました。
味方の攻撃が3者凡退だと10球も投げられないことになります。

3回肩を作って登板がなければ、もうその試合には出ません。(2008年のシーズン中にブルペンで30球以上投げたことは1度だけ)

ブルペンでの肩を作る回数が増えたり、投球数が増えると、監督に謝られることもありました。
そんな経験は、それまでなかったので、正直驚きました。
そのくらい、ピッチャーの身体を大切にして、どうすることが、ベストに近い形で試合に入れるか考え、協力してくれます。

これが、日本のブルペンのやり方と海外のブルペンのやり方です。

日本のアマチュア野球で、上手くブルペンが機能しているチームは、少ないと思います。
ほぼ全てのチームに、呼び方は様々ですが、ピッチャーの怪我に備えて「保険」や「並行」や「アクシデント要因」と言われる、初回から誰かがブルペンで投げるシステムがあります。

これは、選手のためにならないシステムであると言えます。
なぜなら、ピッチャーライナーが当たるなど、ピッチャーが怪我をして投げられなくなるようなアクシデントがあった時は、アマチュア野球でも、時間を作ってもらえます。
そもそも、そのアクシデントが数年に1回くらいしかありません。

日本には、球数を管理するという発想が、ほとんどないので、少ない球数で肩を作るという発想もありません。
また、監督やコーチが選手に協力的ではないので、どうやったら選手の身体を守れ、ベストパフォーマンスを出せるのかと、考えていないことが原因にあるのではないかと思います。

早く肩を作るということは、慣れたらすぐできるようになります。
実際に、プロ入り後の、3月のオープン戦の1ヶ月でできるようになりました。

肩を早く作るには、投球フォームも関係すると思います。
ここでは、細かい説明はしませんが、立甲やゼロポジションと言われる、肩甲骨と上腕骨が直線に入り、一致した状態を保って投げられる身体操作ができれば、早く肩を作れるだけでなく、好不調の波が少なくできます。
これができないと、肩を作るのや、感覚をつかむのにも時間がかかります。
肩や肘にも負担がかかります。
そういうところから、肩を作るのに時間がかかる選手は、肘を故障する選手が多い傾向にあるように感じます。

 

話をまとめると、海外のブルペンのやり方が日本のブルペンのやり方よりも良いと思うところは、

・投球数が抑えられる。

・1回で肩を作って試合に出場するので、良いパフォーマンスが出しやすい。

・短時間で肩を作ろうとすることで心拍数を上げられる。

・ピッチャーの肩や肘を守れる。

・ゼロポジションを保ったフォームを身につけやすい。

などがあげられます。

このやり方をすると、今までよりも、監督やコーチが大変になります。

試合前から、様々な試合展開をシュミレーションし、試合展開を予測することをしなくてはなりません。

選手の能力をより把握する必要もあります。

監督の決断力も試されるようになります。

 

監督、コーチの苦労によって、選手の身体が守られ、より良いパフォーマンスが出せる確率はあがるので、選手のためにも、試してもらいたいと思います。