選手ファースト(武雄ボーイズ)

武雄ボーイズでは、選手ファーストのチーム作りをしています。チームの中心は選手であり、選手のためのチームを作りました。

常に、どうすることが選手のためになるのかを考えています。
その大前提にあるのが「健康、安全を最優先する」ということです。日本のアマチュア野球では、優先順位が高くないことがよくあります。しかし、選手を1番に考えたら優先順位は最も上になければならないと考えています。
健康、安全を考えた上で、選手をどう成長させるかを考えています。

指導者の方針として、「選手あっての指導者である」ということを共通理解をしています。選手へのリスペクトを忘れないで、指導者も選手と一緒に考え、共に成長することを目指しています。
成長しない責任は指導者にあり、すぐに根性論やメンタル論で片付けずに、論理的に分析し、しっかりとした技術を身につけさせるようにしています。

僕が考える、技術を身につける上で最も必要なことは「夢中になる」ということです。
選手が時間を忘れて夢中になって取り組める1番簡単な方法は楽しませることです。そのためには選手が自分の意志で価値を見出し自分から行動することが大切になります。
選手がミスを恐れずに、新しいことにどんどんチャレンジできる雰囲気を作り、選手がやりやすい、夢中になって楽しめる環境になるように全員で努力しています。

そのような環境の中でどのように選手を指導していくのかというと、
指導者は選手を「知っている」の状態ではなく、「理解している」の状態にするような指導をします。頭ごなしに「ああやれ、こうやれ」と教えれば「知っている」という状態は作れると思います。しかし、本当に役に立つようにするには、理解をし、自分に合った自分なりのやり方に変えて初めて自分のスキルになると考えています。自分の頭で理解できなければ、応用することも難しくなります。また、質問されたときに、説明することもできません。
深く理解してもらいたいので、返事を「はい」だけでは終わらせないで、本当に理解しているのかを確認するようにしています。また、自分の言葉で伝えることにより、さらに理解が深められるので、選手どうしで教え合い、アドバイスし合うようにしています。

具体的には、指導者に「求めているのは選手に良い質問をすることで、技術指導は一切求めていません」と伝えています。
例えば、
「なぜ上手くいかなかった?」
「どうすれば上手くいく?」
「どんな練習をする?」
「どのくらいの期間でできる?」
「手伝うことはある?」

このように選手に考えさせるような質問を繰り返して選手を導くやり方です。
また、
「今日の目標は?」
「今日なにしたい?」
「課題は?」
といったような質問を繰り返すことにより、選手はグランドに入った時には、なにをするべきか内容が頭に入っていて、課題を認識している状態に導いていけると思っています。
それができれば、練習の質があがり、短時間での内容の濃い練習に変わっていくと思います。

選手同士、選手と指導者、指導者同士が常に、自分の考えを意見できる会話の多い環境を作るようにしています。

また、選手のデータを集めて違いに気付くように、どのくらい成長しているのかを判断できるようにしています。
そのデータや指導内容を指導者同士で共有するように心がけています。

実際に行っている具体的な普段の練習内容は、
選手が自ら考え行動するために、アップは各自で行い、ラダーやミニハードルなどを使ったドリルは「こういうメニューがあるよ」というのを教えてそれを踏まえて自分たちでメニューを選ぶようにしています。
練習の中に自主練習を積極的に入れていき、選手がコーチに「ノックを打ってください」「バッティングしたいので投げてください」のように選手が自ら考え大人がその練習に協力するという環境を作っています。
まだチームができて間もないので、決してレベルの高い練習ができている訳ではありませんが、選手の自主性は育ってきていると実感しています。

僕が考える選手の評価は

  1. 自主性が身についてなく、どのような練習をするべきか指示を出してくれる人がいないと練習できないレベル。
  2. 自主性が身についていて、やる気、向上心もあるが、練習のやり方や練習メニューを理解できないレベル。
  3. 自主性が身についていて、練習のやり方や練習メニューを理解しているので指示があればしっかり練習できるレベル。
  4. 自主性が身についていて、選手が自分の練習メニューを、作成、実行、評価、再構築できるレベル。

卒業の時には「4」のレベルに持っていきたいと思っています。そこまでいけば、自分から成長できる選手なので、同じ思考方法で、野球に限らず、本人が目標に定めた分野で活躍が期待できる人になると思っています。
逆に「1」のレベルの選手は、社会に出るとなんのために働いているのかわからない、指示がないと何もできない、というような人になると想像できます。

選手ファーストのチーム作りはこれからの時代を生きていく力を身につけるのに適したやり方だと思います。
野球を通じて、優れた人格を身につける。生涯学習できる人を育てる。という指導理念には、欠かすことのできないやり方だと思っています。