2023年、2024年とJFE東日本野球部のピッチングコーチを務めさせていたできました。
今年で辞めることになりましたが、そこでの取り組みを紹介したいと思います。
【JFE東日本のマネジメント術(前編)】 投手陣が次々と最高球速更新。元ロッテのクローザー・荻野忠寛コーチの「頭を使わせる」育成法 – スポーツナビ
【JFE東日本のマネジメント術(中編)】 どうすれば投手全員を活躍させられるか。故障を防ぐ「ゲームアプローチ」&データに基づく起用法 – スポーツナビ
【JFE東日本のマネジメント術(後編)】 チーム全員を成長&成功に導く、最強の「チームワーク」構築法 – スポーツナビ
ピッチャー陣の取り組みがスポーツナビで取り上げられたのでリンクを貼っておきます。
個々の幸せを追求した組織づくり
「人権と尊厳」をベースに選手全員が自分を大切にし、お互いに大切にし合い、幸せを追求するという取り組みをしてきました。
自分の幸せだけでなく、他の選手の幸せまで考え、時にはライバルとして競争し、時にはチームメイトとしてアドバイスを送り合い、切磋琢磨することができたと思っています。
肩肘の故障をなくす取り組み
結果的に肩肘の故障を0にすることはできませんでしたが故障を防ぐという意識はチームに浸透したと思っています。
自分自身が現役時代に怪我・故障に苦しみプレイできない辛さを体験し、同じようにプレイできなくなるということをなくしたいと徹底してきました。
僕の考える肩肘の故障を減らすために必要なことは大きくは2つです。
「肩肘に負担の少ないフォームを身につけること」と「身体を鍛えること(強くすること)」です。
先ずは、肩肘に負担の少ないフォームを追求することに時間と体力をつぎ込んでほしいということを伝え続けてきました。
結果的にそれが身体を強くすることにもつながってくると考えているからです。
特に、肩や肘を故障したことがある選手はその意図をくみ取り、多くの時間と持っている体力をそこに使ってきました。選手の中には今までにない感覚を身につけ、肩肘の故障のリスクを激減できたと実感している選手もいるのではないかと思います。
選手には「肩肘に負担の少ないフォームを身につけること」と「身体を鍛えること」を求めてきましたが、コーチとしての僕の仕事は選手のコンディションを見極め、負荷と投球数を徹底的に管理することで故障を防ごうとしました。
肩肘の故障は大きく減らすことができたとは思いますが0にできなかったことは今後の課題として、また勉強していきたいと思います。
データを重視したアプローチ
球速、ストライク率、被打率、被出塁率、K/BB、被OPSなどあらゆる数字を細かく出しそれを練習や試合に活かしてきました。
「選手の納得」は僕の中では、かなり重要なことであると考えていたからです。納得できないことが続けば選手のモチベーションは低下し、不満が多くなればチームワークにも関わってくるからです。
数字として出すことで選手が納得できる材料になると考えました。
それだけでなく伸ばしたい数字が明確なら練習でやるべきことはより明確になってくるので、より練習の質は高まっていきます。
どの数字を重視するかを決めることは非常に難しいことですがそれがより的確になればなるほど選手の成績につながってくると思います。コーチとしてどの数字を重要視するかを見極める努力は、し続けなければならないと実感しました。
選手の自律・主体性を育てる
選手を伸ばすために必要なことのひとつに選手の主体性があると考えています。
言われたことをやるのではなく自分が必要だと思うからやる。上手くなるためのヒントはグランドの中だけでなく、ありとあらゆるところにあります。それを見逃さずにキャッチするためには自分でアンテナを張り、自分で掴んでいくことが必要です。
そのために必要なことが主体的かつ自律していることだと思っています。自分の成長のために誘惑に負けない。自分から上手くなりたいという気持ちを強く持ち、普段の生活から自分の成長のために時間を使っていくことができる選手になってほしいという考えから選手の自律・主体性を育てることに注力してきました。
結果的に2年間で全選手がより主体的に行動できるようになったと思います。練習を自分で考え、毎日自分と向き合って過ごすことでパフォーマンスを向上させることに繋がっていったと思います。
その成功体験を得ることでより主体性が高まり自分を律していくという良い流れを作ることができたのではないかと思います。
2年間の成果
2年間の成果として1番に挙げたいことは入れ替わりの激しい社会人野球において毎年、チームを離れる選手は出てくるのですが、チームを離れた選手含め、全選手が来年も野球に関わるという決断をしているということです。
野球の奥深さを感じてもらうだけでなく、野球の愉しさを感じてもらえたからだと思っています。多くを選手に任せることで選手自身に責任感が生まれ、自由に選択することの厳しさと自分で決めて結果につながった時に大きな喜びとなることを体験してもらえたのではないかと思います。
数字的な成果で言うと、投手全体の防御率、奪三振率、与四球率、ストライク率、WHIP、K/BB、被本塁打、被打率、P/IPの数字を2022年→2023年→2024年とすべてを改善してきたということです。
これは本当に素晴らしいことで選手の努力に敬意を表したいと思います。
2年間での課題
2年間での課題はチームの勝利という結果に繋がらなかったということに尽きると思います。
地方大会で優勝できたということはありましたが社会人野球の2大大会である都市対抗野球、日本選手権で勝ち上がることができませんでした。素晴らしい投手はそろっていましたがその選手たちの力を十分に発揮させられなかったことは投手コーチとしての能力のなさだったと感じています。
チームに対し申し訳ないという気持ちと、指導者としてさらに勉強しなければならないという2年間となりました。
感謝
まず初めに、落合監督には貴重な機会をいただいたことと、ピッチャーを任せてもらい好きにやらせていただいたことに感謝しています。つながりのあるわけでもないJFE東日本野球部に迎え入れていただき僕自身もとても勉強になり成長することができました。
次に、投手陣には毎日が充実し、愉しく過ごすことができたことに感謝しています。至らぬ点は多々あったと思いますが選手がそこをカバーしてくれたことで投手陣を上手く回すことができたと思います。
そしてチームの関係者、応援していただいた方々、僕にアドバイスしていただいた方々、チームをサポートしていただいた方々、その他にも僕に関わっていただいた方々、チームに関わっていただいた方々に感謝いたします。
引き続きJFE東日本野球部をよろしくお願いいたします。